初戦闘
前方に見える街めがけて真っ直ぐと歩いていく。子供の足であの街まで行くのは骨が折れる。それに重くない思っていた剣がとても重く感じる。でもそれはできそうにない。
ここが異世界だと証明する生物がいた。日本では絶対に居ない緑色の二足歩行をする生物。身長は俺と同じくらいでその顔は醜悪でとても人とは言えない。俺達の世界でいうゴブリンだ。小鬼ともいうのだろうか。
前方のゴブリンの数は4匹。まだ子供の体に慣れてない俺があいつらに追いかけられたら逃げ切れるか怪しい。というか無理だと思う。
そして何よりゴブリン達はみな凶器を手にしている。ひどく錆び付いた銅剣や木の棍棒、切りつけられたり殴られもすれば子供の体じゃひとたまりもない。
俺はバレないように身を屈めて慎重に迂回する。4匹に気を配り過ぎたせいだろうか。別のゴブリンの接近に気が付かなかった。
「ぐギャギャ」
気色の悪い奇声を上げ、棍棒を振り上げ襲いかかってきた。しかし幸いなことにゴブリンは1匹。ほかのゴブリン達に気づかれない内にこいつを殺すと決意する。
腰からショートブレードを抜き放ち、両手で正面に構える。剣を使うなんて高校の体育の剣道で少ししかやった記憶しかない。つまりど素人ってことだ。
めちゃくちゃ怖い。けどここで数多のファンタジー世界で最弱と呼ばれたゴブリンには負けるわけにはいかない。それこそ異世界生活が詰んでしまって、努力なんてできやしない。
ってなんかゴブリン遅くないか?あれ俺の体も思ったように動かないぞ?思考だけが速くなっている?
なんだこれ?全部遅く感じる。ついでに俺の動くスピードも風で草花が揺れることも。ゴブリンは振り上げた棍棒を馬鹿正直に真っ直ぐと振り下ろすことがこの素人の俺にも簡単に予想が出来た。
俺はその簡単に避けられる攻撃を避けてその無防備な横っ腹に目掛けて思いきり突き刺す。素人の俺に体重をかけて敵を切り裂くなんてことは出来ない。それなら誰でもできて致命傷を与えられる突き技に限る。致命傷に入る一撃。青い血が刺し傷から溢れる。
肉を抉る感触が俺の手にしっかりと伝わってくる。それは命を奪っている感触だ。多分俺はこの感触を忘れないと思う。始めてこのサイズの生き物を殺した感触を。
痛みを堪えているゴブリンは苦し紛れにも棍棒を振り上げが剣を思いっきり引き抜くとゴブリンは完全に動かなくなった。
「はあはあ…」
息が乱れる。いくら醜い顔をしていても人型の化け物を殺すと生温い環境で育った日本人にはきついものがある。ましてやこれを自分で考えるだけで…。
「「「「ぐぎゃぁ」」」」
はっとする。あいつらまさか匂いで?いや殺し方は何の問題もなかった。思いっきり走り出す。ここでまた四匹のゴブリンと戦うとなるときついものがある。さっきの息切れも精神的なものもあるが戦いの疲れも含まれている。そういえばスローモーションタイムは終わっている。多分あれは俺のユニークスキルの魔眼の能力だと思う。いやほかにスキルも無いしそれしかないだろう。
ゴブリンがあんな無敵スキルを打ってくるとも思わないしそれで俺に殺されるとかアホすぎるだろ。
しかし、あの能力便利だが俺まで遅くなるんだよな。思考は異常に早くなるし。それに遅くなるまでラグもある欠陥ばかりだ。あとで運用方法を考えなくては…
しばらく全力疾走しているとゴブリンの泣き声も聞こえなくなり、町の壁も大分近くなった。ほんとに何から守るためにあんな馬鹿でかい壁を建てたのだろう。
突然眩暈を起こしてその場に蹲る。急になんだ?貧血か?新しいからだ不便だな。病弱キャラとかハードすぎるでしょ。少し休んでも体のだるさは収まらない。くそ。ここは無理してでも町の中に入った方がいいか?俺はゆっくり歩きだした。
改めて近くでみた城壁は圧巻の一言だった。ヨーロッパの世界遺産にでもなりそうな仕上がりである。他の人たちを見習って後ろに並ぶ。
正直体調がよろしくない。早く休まないと本当にぶっ倒れる。
「身分証明書は持ってますか?」
子供相手にも丁寧に話してくれてる、やさしそうな男性だ。でも本格的にやばい。
「…いえ、持っていません」
「顔色が悪いな。大丈夫か?
ちょっと待ってろ」
そうすると兵隊さんが近づいて、門番の男性が何かを話すとこちらに近づいてきた。
「うむ。確かに顔が真っ青だな。
このまま先に入れよう。」
「すみません」
そして俺はそのまま宿に連れていかれた。子どもだから優しくしてくれたのかもしれない。それにしてもこの体調不良は何なんだ。俺変な病気や毒に侵されたのか?まさかゴブリンの血になにか?
異世界一日目は固いベットの上で死ぬように眠った。ほんとに死ぬくらい体がだるい。
読んでいただきありがとうございます
戦闘はこの後なかなか起きないと思います(o_ _)o))