いざ、鬼《き》ノ城《じょう》
私の名前は、タケル。
この間、雉を仲間にしたのだが、
驚いた事にこの雉、
人間の言葉を話すだけじゃなく
猿の言っている事が、分かるらしい。
「ウキウキッ、アキャキャ」
「ソレ 凄イデスネー
デモ、バナナ100本 食ベスギネ」
一体何の話をしているんだろう。
バナナって食べ物の様だが、100本も食べるほど
美味しいのだろうか。
そこへ桃太郎が
「モン吉、バナナ100本も食べたのかっ。
よくお腹壊さないなぁ。」
「モン吉 チガウ。
オサル ナマエ サルタヒコ」
猿って、サルタヒコって名前だったのか。
よし、私も雉に名前を教えて、
桃太郎に言って貰おう。
「おい。雉よ。私の名前も
桃太郎に教えてやってくれ。
私の名前は、タケルだ。」
「···チョット、何言ッテルカ。分カラナイネ。」
おーい。何でだよー。猿の言ってる事分かって
何で私の言う事は、分からないんだっ。
そうか、もしかして、しゃべり方か。
よしよし
「ワタシ 名前 タケル」
「···桃太郎サン イヌ キビダンゴ 食ベタイ」
「もう、ポチは本当食いしん坊だなぁ。
さっきもあげたじゃないか。お預け···な。」
違ーうよーっ。
自分の名前言ってるだけだよーっ。
どうして。何で。
私だけ、言っている事が誰にも分かってもらえない。
実は猿が言ってる事も適当なんじゃないか。
この雉、適当に言ってるんじゃないか。
私がヤキモキしているところへ、村人が近付いて来た。
青鬼から助けた村人だ。
「桃太郎さん、さっきは助かっただよー。
ありがとごぜぇましたー。」
「いやいや、それよりお怪我はありませんか。」
「へい。お陰様で怪我一つ無く、無事だぁ。
でも、畑の方がボロボロに・・・あれ。」
「ん・・・どうしました。」
村人の見ている畑に目をやると
綺麗に耕されていた。
どういう事だろう。青鬼は村人を襲っていたのではないのか。
そういえば、この間の鬼も食べ物をたいくさん盗まず、少しだけで
しかも銭を落として行った。
銭を落としたのはわざと、なのか。
今回も村人を襲っていた訳じゃなく、畑を耕していたのか。
鬼は悪いヤツじゃないのだろうか。
んー、でも最初に会った鬼はお姫様を攫っていたしな。
やっつける前に、一度話を聞いてみた方が良いのかもしれないな。
私がそう思い、悩み旅を続けと
猿がどこかを指差し、叫んだ。
目的地に着いたようだ。前に見える山の木々の間から見える砦
あれが鬼の住処、鬼ノ城か。
ついに本当の鬼との戦いが始まるぞ。
私は、強い者との戦いを前に、気を引き締めるのだった。
「トメタマ オシッコ シタイ」
「あ、俺様もー。よし。それじゃあ、トイレ休憩ー。」
「キッキー」
えー・・・。なんて気の抜けるヤツらだ。
あああああ、桃太郎さん。桃太郎さんよ。
雉がお前の肩の上で、もうオシッコ漏らし始めてるよー。
羽織がビチャビチャになってるよ。
本当にこの子分たちは大丈夫なんだろうか。