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プロローグ 人の息吹と龍の寝息

はじめての軍記ファンタジーです。主人公ガンバレ~な物語に挑戦します。


なにぶん、イラストがないものですから(-_-;)

プロローグからわくわくな想像を膨らませていただきたいです(>_<)


読者のみなさんのそのご想像でこの作品を面白くして下さい(^_^)/~


 プロローグ 人の息吹と龍の寝息


 雲の森に加護を受ける森林ならぬ――神林が生い茂る緑の天守閣。

 そこに住まえるのは人間ではない。

 そこには人間に築かれた人工物も秩序も理不尽な法律も上下関係もない。

 単純明快な弱肉強食。原始より始まった生命の起源がはじめた世界。


「師匠、心地の良さそうにいびきをかいていらっしゃいましたね」


 この地域でごくわずかな人語を操る者は自分の身体を目一杯動かし、師匠の背中を拭き取る。

 そこは強者に培われた天高くそびえる山のごとし。雲の広がるその上の最上である。

 空気も薄く気温は地表よりかなり低い。そんな場所に本来、樹木が栄えるはずもないのだが…………、“師匠”のもたらす恩恵がそれを可能としている場所。

 森林と山と雲海――――大自然、すべての絶景を堪能できる、静かで神聖な場所だ。


「この場所ももうわしとお前だけか」


 人間の世界に比喩をするとここは一つの国のような場所であった。

 “第二十三次世界大戦”が決するまで終戦することはなかった。

 その長い歴史を僕は知らない。この僕、人間はその聖戦を知るよしもなかった。

 雲の上で広げられた上位種族のその攻防に人間は参加資格さえ持てなかった“らしい”。

 だって、僕はその頃まだこの世界に生も受けていなかったのだから。

 だから僕は優しい師匠しか知らない。師匠は僕の物心ついたときにはすでに馴染んでいて、そしてずっと“老いていた”。


「これで“竜”はこの世界からいなくなるな」


 僕はそれを受け入れるしかなかった。師匠の背に乗って鱗を一枚ずつ丁寧に拭いて回った。ただ微笑んで僕は師匠を磨き続ける。


「そうも黙り込むな、アマトよ」


 師匠は人間など丸呑みにしてしまうほど大きな顎を器用に動かす。師匠は僕を育てるためだけに人語を覚えてくれたのだ。


「師匠、かゆいところはないですか?」


 僕はそのご恩にひたすら奉公する。師匠は気高く世界に名をはせた最強の竜。僕はただの人間。親が誰かも分からず捨てられたかもしれない竜に拾われた青年。


「あぁ、気持ちが良いぞ。大満足だ。お前を喰わなくて良かったよ」


「最強の竜が餌とされた捨て子を育てるとは人間の知恵では及ばないでしょう。さすがお師匠さま」


「冗談だとわからんか。お前は私の唯一の溺愛した弟子だ」


 身体を磨かない程度で竜を殺せる病など存在しない。ただのお気持ち思いやりで背中を磨ききった。一時間はかかったのかもしれない。それほど竜は偉大だ。


「師匠、おなかは拭かなくてよろしかったですか?」


「お前は癒やすのがとても上手いからな。本当はやってもらいたいのだがどうやら眠くて動く気にならん」


「そうですか」


 そういって僕は師匠の頬に背中を預けた。竜がその気になれば簡単に喰われてしまうような位置で安らぐように目を閉じた。自然の声を感じると退屈しない。そういって僕と師匠は生命の循環を大事にしてきた。食料としていただく命、他種族からかりる生活の知恵。


 それは常に僕らを豊かにした。


 師匠の呼吸がだんだんと静かにそして深くゆっくりとなってきた。ここ二年師匠はうつ伏せになったまま動けていない。眠気と言いながら自らのそれを感じているのだ。


「まさか、最強と言われてきた竜の最期が“寿命”だとは世界は平和になったものだ」


「今は人間がこの世界を飽きず戦乱へと導いていますよ」


「それでもこの山を降りねば、アマトは凍え死んでしまうであろう」


 ――竜の加護がついにこの山から消えて竜の存在が伝説となる。


「師匠、いままでありがとうございました。本当なら師匠の墓を掘るべきは僕であるはずなのに」


「バカをいえ。人間の文化に“竜”を縛り付けるでない」


「それでも見届けたかったです」


「ふぅう。ありがとうアマト。あぁ、あぁあ……………………」


 ――これが涙というモノか


 僕はそれからまっすぐと山を降りた。雲という白の玄関をくぐりただただ人界へと降りていく。そこにいるのは同種族――――人間。


 はたして、仲間か? ――――――敵か?


 人間のこともすべて師匠が教えてくれた。

 だけど師匠はもう居ない。


「――すべてを丸呑みにしてはいけない。毒が混じっては苦しむのは己だからな」


 まったく“師匠らしい”助言だ。

 山には中央人王都市帝国からの文通が落ちていた。

 行く当てのない僕はとりあえずそこへと向かってみる。


 ――――竜の鱗のように堅い信念だけを携えて。









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