急がなくちゃ
研究室でコボルトの臭いがする香水を作る。
材料は言いたくない。
トトさんは淡々と材料を刻んで鍋に入れ、ぐるぐるかき混ぜる。
何で平気そうなんだろう。
それにしても、なんてこと言っちゃったんだろう。
やっぱり感覚が麻痺してたんだ。
普段の僕なら絶対行くなんて言わないよ。
はぁ~。
「できましたよ。どうぞ。」
香水を受け取り、少し手につけてみる。
確かに獣っぽい臭いがする。
変身魔法はトトさんが使えるようなので、お城を出た後にかけてもらうことになった。
出発はお城の守りがいつまでもつかわからないからと、すぐに発つことになった。
心の準備もできないよ。
国の外まで隠し通路を使うらしい。
隠し通路は王様が逃げるために使うものらしく、謁見の間にその入口があった。
「では頼みましたぞ。」
アルス様に見送られて出発する。
松明を片手に暗い通路を進む。
ジメジメしてて、クモの巣がいたるところにある。
この道が安全なんだから文句を言っちゃいけないよね。
長い長い通路を出た先は草原だった。
振り返るとお城が見える。
「ウサミさん、変身魔法をかけますよ。」
トトさんが僕に魔法をかけた。
手を見ると獣の手になっていた。
顔とかは鏡がないからわかんないな。
続いてトトさんは自分にも魔法をかけ、コボルトの姿になった。
香水を吹きかけると完璧にコボルトだった。
これでバレないよね。
準備ができたところでバリアルに向けて出発した。
バリアルまでは戦場を避けて少し遠回りするから、普通に歩いて二日かかるらしい。
二日の間にお城の守りがやられちゃったりしないよね。
急がないと。
そこでトトさんは身体強化の魔法を使い、スピードを上げた。
そのスピードは普段の三倍くらいだ。
これなら一日もかからないかも。
夜道は月明かりが照らし、わりと明るかった。
そう言えばトトさん眠くないのかな?
横を向くと疲れの見える顔をしていた。
「トトさん、大丈夫?」
「大丈夫です。早く行かないとスティリアはやられてしまうんです。急がないと。」
そうだよね、疲れたとか言っていられる状況じゃないよね。
僕も弱音を吐かずに頑張らなくちゃ。
とは言ったものの、二時間くらい進んだ所でやっぱり足が疲れてくる。
はぁ、はぁ、はぁ、もうちょっと体力つけてた方がよかったな。
足がだるくなっても我慢して歩みを続ける。
草原地帯が終わり、岩がごろごろしてる岩石地帯になってきた。
ここはどのくらいのところなんだろ?
聞くと、バリアルまで三分の一くらいきたところらしい。
この先この岩石地帯を越えて、また草原地帯を進むとバリアルに着くらしい。
あと三分の二か、思ったより進んでたんだな。
あれ、スピードが落ちてきた。
魔法の効果が切れたらしい。
魔法をもう一度かけてもらおうと思ったけど、トトさんも疲れてて上手く魔力を練れないらしい。
「ちょっと休憩にしようよトトさん。」
「そうですね、少しだけ休んで魔法が使えるようにしますので、そうしたらまた進みましょう。」
僕達は近くの岩にもたれかかって座り込んだ。
ふぅ~。
リュックの中から水筒を出す。
中身は回復薬だ。
少しだけ飲んでみると、疲労感が抜けていくのがわかる。
おお、すごいや。
トトさんはというと瞑想をしている。
邪魔しないようにしないとね。
カラカラ。
石が転がる音がした。
なっ何?
振り向くと人影が二人分見えた。




