わわわわわわわ
兵士さんから剣を借りた。
剣って初めて持ってみたけど、思っていたより重いかな。
でも軽いと脆そうだし重い方がいいよね。
お城の中にどんどん人が集まってくる。
女性や子供、老人達が避難してきたようだ。
僕はというと、トトさんとお城の入口で守りに付いた。
トトさんの前でかっこつけたけどやっぱり怖い。
魔物さんも引き返してくれないかな。
「敵襲、敵襲!」
剣をぎゅっと握る。
地響きが聞こえる。
どんどん近づいてるよ。
「うおおー!」
兵士さん達が敵に向かっていく。
ぼ、僕も戦わなくちゃ。
足がすくんで前に進めない。
そうこうしていると犬顔の敵一人が兵士さん達の間をすり抜けて来た。
トトさんが火の玉を出す魔法で迎撃する。
効いてるみたいだけど、まだ倒れていない。
逆にトトさんに狙いを定めて向かっている。
トトさん!トトさんを守るんだ、動け、僕の足。
僕はつまづいて、トトさんの近くに倒れ込んだ。
すると敵が僕につまづいて、勢いそのまま転がって行く。
痛たた。
敵を見ると起き上がってこっちに向かってきていた。
「わわわわわ、来るな、来るな。」
僕は必死に剣を振り回した。
振り回した剣がたまたま敵をかすめた。
「この野郎!」
「わあああ!」
「ファイヤーボール!」
トトさんの魔法が敵の背中を捉えた。
敵はそのまま僕の方へ倒れてくる。
ズボッ。
気づいたときには敵の心臓を貫いていた。
もう犬顔の敵は動かなくなった。
はあ、はあ、はあ、はあ。
「ありがとうございます、ウサミさん。大丈夫ですか?」
「うん、なんとか。」
手には嫌な感触が残っている。
僕がこの人を殺しちゃったんだ・・・。
「ウサミさん、次来ます!」
まだ気持ちの整理はつかないけど、敵は待ってはくれない。
次の敵もトトさんが基本魔法で迎撃して僕はただ剣を振り回すだけ。
でもなぜか一人目のときより落ち着いて動けた。
戦争中という常軌を逸した状況に僕の心も麻痺してきたんだと思う。
襲撃が落ち着いたとき僕は三人も殺していた。
落ち着いてから自分のしたことに苦悩する。
僕はなんてことをしてしまったんだ。
うう・・・。
「ウサミさん、お疲れさまでした。」
「トトさん・・・僕・・僕は・・・。」
トトさんはそっと僕を抱き締めてくれた。
「大丈夫です、大丈夫ですよ。ウサミさんは私達の国を守ったんです。それに相手を殺してしまわなければ、こちらが殺されていたんです。大丈夫、大丈夫です。」
僕はトトさんの肩に顔を乗せ、大泣きした。
トトさんはポンポンと僕の背中を叩く。
「うっうっ、トトさんありがとう。も、もう大丈夫だから。」
トトさんは僕と年が近そうなのに強いなぁ。
僕も強くならないと。