怖すぎるよ
「トトさん、王様ってどんな人?怖い?」
「怖い人じゃないですよ。少し気が弱くて、優しい方です。」
よかった、優しい人なら上手く話せば戦争に出向かなくてもよくなるかも。
トトさんに導かれて大きな扉の前にたどり着いた。
扉の横には鎧を着けた騎士が立っている。
どうやらここが王様のいる謁見の間のらしい。
「ロッカさん、お疲れ様です。この方と謁見の間に入りたいのですが、大丈夫ですか?」
「ああ、多分大丈夫だ。トト少し待ってな。」
ロッカという騎士の人は謁見の間の中に入っていった。
どうやら確認してくれているみたいだ。
しばらくして出てきたロッカさんは、どうぞって扉を開けてくれた。
そう言えば、王様になんて挨拶したらいいのかな?
この世界の礼儀作法なんて知らないよ。
トトさんに慌てて聞くと、この世界も元いた世界と同じ感じだった。
優しい人ってトトさんが言ってたし、大丈夫だよね。
謁見の間に入るとびっくりした。
玉座に座ってる王様と思われる人がめちゃくちゃ怖い顔をしていたからだ。
それに体も筋肉質でかなりゴツい。
どこが少し気が弱くて、優しい方だよ。
もう身体中の震えが止まらないよ。
トトさんが玉座の前でひざまづいた。
僕も慌ててひざまづく。
「トト、どうしましたか?」
王様は声も低く、さらにビクンとなる。
でも語りかけ方は優しい感じだ。
怖いのは見た目だけかな?
「はいアルス様、私勇者の召喚に成功しました。こちらのウサミさんが勇者です。」
トトさんはそう言って僕に手を向ける。
「本当ですか、トト!それはよくやってくれました。ウサミ殿と言いましたかな、我が国をどうぞよろしくお願いします。」
「あの~、アルス様、言いにくいんですけど、僕戦争には行きたくないんですけど、ダメですかね?」
「なんと!」
アルス様とトトさんが顔を合わせた。
「ウサミ殿、どうかお願いできませんか、私達の頼りはもうないのです。」
「そんなこと言われても・・・。」
僕だって死にたくない。
勇者だってもてはやされても行きたくないものは行きたくない。
「仕方ないですな、無理に戦って頂くわけにもいきますまい。トト、ウサミ殿のことは任せてもよいですか?」
「はい、アルス様。では行きましょうウサミさん。アルス様、失礼します。」
立ち上がり、謁見の間を出た。
何だか心苦しいな、僕が戦わずになんとかできないかな。