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お祭り少年メグの紀行  作者: 奇妙な海老
星降り祭り
4/4

新しい村にて



「うーわ綺麗〜!!」

『やめなさい』


祭りの準備の最中なのか(流石にそれは期待しすぎか)、村には活気があり装飾があちこちに施されている。そしてこれはこの村の特産品だろうか。どういう原理かは分からないが、宙に浮いた球体が大量に乱立していた。


「凄いですねこれ。どうなってるんですか?」

「おや嬢ちゃん、良いところに目を付けたな!この中にはなぁ、ヘーリンと言う特殊な術のかかった空気が入ってるんだ!その術にかかった物はたちまち軽くなって宙に浮きだすんだぜ!」

「凄〜い!」

『馬鹿者……』


肌が若干浅黒い、筋肉質な店主のおじちゃんが分かりやすく教えてくれた。

しかし、それは魔法か何かだろうか。もしかしたら、クリューソス様があの時使ってきたものと同じものかもしれない。

それにしても不思議だ。この球体を浮かせている気体に術をかけるだなんて、どうやってやるんだろう。気体を集めて、それにかける?そしたら集めるために使った容器が浮きだすのではないだろうか。それ以前に、軽くなったからといって突然浮きだすのだろうか。

いや、気体にかけるとそうなるのかも……


というか、僕は嬢ちゃんじゃない。


「違うわよ。ヘーリンは気体。術なんかじゃないわ」

「あ、おいおい。頼むぜアリアちゃん。他所の人に広めようと思ってたのに」

「ふん。そんなガセネタ広めてどうすんのよ。この村の気品を下げないでくれるかしら」

「うーい」


ふん、とそっぽを向いてしまう赤髪の女性。

突然現れたこの女性……アリアさんは、おじちゃんの話をちょん切って放り投げてしまった。


『気丈なお嬢さんですねぇ。良い奥さんになりそう』

「確かに…」


そんな彼女を話の種に、クリューソス様とくだらない話をしていると、彼女が鋭い瞳のまま、僕の方に目を向けてきた。


「貴方、ここの者じゃないわね。まさか魔人じゃないでしょうね」

「そ、そんな!滅相もない!」

『過剰に反応しすぎじゃないかい?』

「……やめてくださいよぉ」


アリアさんの鋭い瞳で睨まれ、僕の身体は簡単に硬直する。

頭の角が怪しまれないか、それだけが心配である。

だってこれは、誰が見ても人外の特徴だと思うだろうから……


「……まぁ良いわ。で、何?『たいきせん祭り』の準備で大切なこの時期に来客だなんて、それが目当てかしら?」

「え!そんなものが!?最低祭りが始まるまでここにいようと思ってたのに、助かった!」

「…服装からして、あなた旅人よね。どんな目的で旅をしてるの?」

「世界中のお祭りを見て回りたくて!」

「考えなしなのね」


内心確かにと思う僕。


「まぁ良いわ。宿はあるの?」

「えっ?いや、ないですけど…」

「……じゃ、じゃあ私の家に来なさいよ。宿くらいなら貸してあげるわ」

『一体何が起こっているのでしょうかねぇ』


この時、僕は彼女が何を言っているのかさっぱり分からなかった。

皆まで言わずともわかるだろう。普通、見ず知らずの人に対して宿を貸すだなんて言う筈がない。

少なくとも、自分から言うことはないと思う。


「……いえ、遠慮しま…」

「そう、家はここから少し向こうにあるわ。着いて来なさい」

「すね、ってえぇ!?」

「あぁ…アリアちゃんの悪い癖が出たなぁ」

『どんな癖か実に気になるところですね。予想はつきますが』


そう言ってスタスタと去っていくアリアさん。

後頭部で纏めた赤い髪が日光を反射して淡く輝く。その姿はとても美しかったが、その前に起こった出来事がその光景にフィルターをかけてしまった。


「どんな癖なんですか…」

「いや、アリアちゃんは『たいきせん』を作っているんだがなぁ。技術者気質だからかなんなのか、顔見知りに自分の腕を見せたがる節があるんだよ。だからアリアちゃんのに関しては、こんな事も稀な話じゃないだよね」

「なら大丈夫そうですね!お世話になりましょう!」

『たいきせんに反応しすぎですよ』


ずっと気になっていたのだ。

『たいきせん』とは何か。あまりに聞き覚えのない言葉だったから、漠然としか光景が浮かばない。

祭りの準備でここまで活気だっているのなら、この村の特産の風船と何か関係があることは確かだろう。それなら『たいき』が『大気』であることはなんとなく想像のつくことだ。

しかし、曲者なのは『せん』だ。

正直、『せん』が一体何なのか、全く想像がつかない。

戦か、選か、泉か。

思いつく限り近そうなものを上げてみたが、どれもあまりピンとこない。


相手が良いって言っているんだから、お世話になるべきだろう!


「たいきせんってなんなんでしょうね」

『……まぁ見れば分かるんじゃないですか?』

「あ、そうですね!確かに!」


言外にアリアさんの家にお邪魔することを認められた僕は、僕から遠く離れて行ってしまったアリアさんに急いで近づく。


これから何を見ることができるのか。

この時僕は、知らない人への恐怖心を、好奇心だけで打ち払った。


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