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もう!!許せない!!
その日、私は朝から怒り心頭だった。
「すみません!!打撲に効く張り薬をください」
「ん?ユキちゃん。怪我でもしたのかい?」
「私じゃなくて、ネネばあが」
「ああ、それはいけないね。お医者様には見せたのかい?」
「転んだだけだから、大丈夫の一点張りでさ」
「ああ、ネネばあは頑固だからね」
店の主人が苦笑しながら薬を出してくれた。1枚はサービスしとく、と余分に入れたくれた。
「ありがとう」
「早くよくなるといいね」
ホントだよ!!全く、あいつ、次会ったらただじゃおかないからね!!
そのまま駆け足で自宅に戻る。
事の発端は早朝のことだった・・・・・・。
「ぎゃあ」
「!!!なに!!」
「うみゃお」
階下から聞こえた悲鳴に、私は飛び起きた。突然お腹から落とされた猫のチビの悲鳴を無視して、私は寝巻のまま慌てて階下に降りた。
「ネネばあ!!」
「ああ、ユキかい」
「どうしたの!!」
1階のリビングに姿はなく、玄関まで出てようやく見つけた。
この家の家主であるネネばあ。子どもたちがみんな巣立ってしまったため、その空いた部屋を貸してくれているのだ。そのネネばあが、玄関に倒れている。
「花に水をやろうと思ってね、そしたらそんなものがあるから・・・」
「!!!」
ネネばあが指差した先にあったのは、野良猫の死骸。
それにびっくりした拍子に、ちょっとした段差につまづいてしまったらしい。とりあえず、肩を貸して椅子に座らせる。捻挫、だろうか。足首が少し腫れてきていた。
これ、絶対あいつの仕業だ!!
私は直感していた。
だって、あの猫はチョコレート色をしていたから。
これ以上関わるなってこと?
冗談じゃない!!
自分の欲望を他人に押し付けるだけじゃなく、命を踏みにじるなんて!!
ふつふつと怒りが湧いてきた。
生きることが、どれほど大変で、どれほど尊いものなのか。
知らないから出来るんだ、こんなこと!!
怒り心頭のまま、私は家を飛び出した。寝巻を着替えるくらいの理性だけは残っていたけど・・・・。
で、冒頭に戻るわけである。
「ごめんね、ユキにも危ない目にあわせて」
「いいよ、マリアが悪いわけじゃないもん」
そして、同僚に忠告。
「でも、ちょっとエスカレートしてきたよね。今まで以上に気をつけなきゃ」
「うん、今夜はユキのうちに泊まるわ」
「うん、その方がいいと思う」
その日も、やっぱりあいつはお店に来たのだった。