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風の吹くまま  作者: 鈴和
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猫の手鏡 伍

わけあって少し短めです

二人はもう、しばらく先にいっていて、俺は走ってあとを追う。走っても息切れしないのは多少体力がついたのか、先生が何かしているのか。そのどっちもなのか。

気づいたら俺達の居場所は街からは大分外れていて、どこへ向かうか分からない道だけ。左右は広い草原で、空を見やれば見慣れぬ鳥か妖かが飛んでいるようだ。黒い羽で風を切り、夕焼けに向かうのは鳥なのか妖なのか。火の粉を散らしながら進むのは鳥なのか、妖怪なのか。人の姿をしてなくても結局判別などできないらしい。そう思ったとたん視界に写っていたものが急に後ろへと流れる。それと、ほぼ同時に膝に衝撃。とっさに手をのばした先には地面があって、俺は転んだのか、とようやく気付いた。急いで立ち上がって土を払う。ぐるりを見やると、森の中だ。道の真上だけは木に覆われていない。だから気づかなかったのか。こんなに分かりやすいってのに。

二人に追い付かないと、でも、どこへいった? また大分離れていたみたいだ。二人の姿は見つからない。山の中で一人なんてあのときと同じじゃないか。勝手に拾っといて見捨てるなんて冗談じゃない。

木が、草が揺れる向こうから微かにする鈴の音。それが先生の歩みに合わせて規則的に響くのまで聞き逃さないように。



不意に前を歩いていた先生が振り返る。

「嫌われたかもしれないねえ、これは」

表情はいつもと変わらないはずなのに、なぜだか楽しそうだなあと思う。それだけ先生があの子を気に入っているのか。その感覚は夢にはいまいち理解できない。

「そうみたいやけど、それがどうかしたん?」

「いや、別に」

中身のない会話を紡ぎながらも夢は意識を少し離れたところに向けてみる。紅葉と名乗った少年はこちらに走ってきているらしい。

「やっぱなれんなあ……」

こういうのは元々先生たちのような狐の一族や狸、天狗たちの得意分野。夢も何度か試してみたことはあるが、目眩に意識を呼び戻されるのはあまりいい気分ではない。鏡があればこんな面倒はいらんのに、なんて心の中で愚痴を溢せば

「そろそろですよ」

気分を切り替えさせようとするかのように先生が微笑む。

「もう一度言うとくね。鏡を取り戻して」

先生はわかってますと頷く。そして、つーっと手を持ち上げて指し示した先には岩があった。岩といっても普通のものではなく、意図的に積み上げられて一枚の板のようになっている。よくみれば鮮やかな赤色でなにか模様のようなものが描かれていた。夢がその赤色にそっと手を伸ばした時、背後からガサガサという音が聞こえた。

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