表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月刊うろNOW! まとめ  作者: アッキ@瓶の蓋。
輝き閃光先生作
8/41

【創刊号】【夜空の高き一番星 1st.Flight 夜空のテイク・オフ】

【夜空の高き一番星 作;輝き閃光】

【1st.Flight 夜空のテイク・オフ】

 夜の空は危険と隣り合わせの厳しい現場である。視界も悪く、どこが道でどこが海かも分からないほどの危険な場所を飛ぶだなんて、どこが楽しいか聞いてみたいくらいである。だけれども、そこには確かにあるのだ。

 空に輝くどこよりも明るい満天の星空と言う物が。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ふ、ふぁー」



 目を覚ましたボクの目の前に入って来たのは、【7時45分】を指す目覚まし時計だった。



「や、やばい! 遅刻だ!」



 ボクは慌てて飛び起きて、制服へと、飛行機乗り達の服に着替え始める。



 国立空飛(そらとび)学園。この学院は空を飛ぶ者、そう飛行機乗り達にとって聖地とでも呼ぶべき学園だ。ボクの名前は葵空あおいそら。飛行機乗りの父から名付けられたこの名の通り、ボクは空が大好きだ。

 青い空、白い雲。日によって全く違う姿を見せるこの空と言う物は、どんだけの時間を費やしたとしても語りつくせないだろう。そんなボクはこの春、この国立空飛学園へと入学したのは良いのだが……。



「この成績は何ですか、葵君」



 国立空飛学園、職員室。

 見事なまでに今日もまた遅刻してきたボクは目の前に居る担任、陽射曇ひざしくもり先生に怒られていた。可愛らしくて愛くるしい童顔と、小柄な背丈で愛されている陽射先生だが、それと同時にこの学園にて最も怒らせてはいけない先生(ひと)である事をボクは知っている。そう、今も。



「毎日の遅刻は夜遅くまでのシミュレーション訓練に没頭している姿から、まぁ、目を瞑ってあげましょう。しかし!」



 と、陽射先生は先程返却されて来たばかりのテストを、【地理学】のテスト用紙を机の上に叩きつける。



「いくら、【操縦士】と言っても、【地理学】のテストが0点では話にならないんですよ!」



 ―――――――ここ、国立空飛学園には2つの学科が存在する。主に飛行機などの乗り物を操縦する学生を育てる【操縦科】と、同じ飛行機に搭乗して飛行機の安全なフライトを助ける【進路科】の2つに分けられている。普通、【操縦科】の生徒と【進路科】の生徒が2人1組となって、フライトする。

 そして【地理学】のテストはどちらの科でも大切となる。安全な航路の確認、地図の読み方など【地理学】のテストは飛行機に関わる者にとっては、大切な事の1つだ。しかし……。



「面倒なんですよ、ボクは。飛行機なんて、飛ばして後は目的地さえ決めて置けば、なんとかなる乗り物でしょ?」



 そう、ボクにとって飛行機とはそれだけでしかない。風を感じ、空を感じる。そんな中でいちいち地上の確認などする必要が無いとボクは思うのだ。だからボクは【地理学】のテストに真剣に取り組めず、結果毎度毎度赤点なのだ。



「……確かに、葵君の操縦技術は完璧だし、雪風(ゆきかぜ)さんの【地理学】の成績は学年一だから何も問題は無いけれども、それは学園の中だけの話。いつか雪風さんが居なくなった時、あなたは―――――――きっと後悔する。だから……!」



「今のうちに、地図の読み方なども勉強して置けって? 冗談じゃないですよ」


 そう言いつつ、ボクは「話は終わりですか?」と言って席を立ち、職員室を出る。



「けど、あなたのお父さんは―――――――――」



 その言葉を聞く前にボクは職員室の扉を閉めていた。



「父さんの話は……関係無いだろ」



「じゃあ、君の話をしようか。葵」



 と、そんなボクの後ろからいつもの毒のある言い方が聞こえて来る。振り返ったそこには、いつもの”あいつ”が居た。



「……雪風」



 白井雪風。ボクのパートナーの【進路科】の生徒、つまりボクの行き先をナビゲートしてくれる同級生。白い銀髪を腰まで伸ばし、鋭い眼光をこちらに向ける長身の美少女同級生は、ボクの顔を見るなり、「君のせいで大変な事になった」と言って来た。



「【操縦科】の生徒が、しかも【地理学】の成績が学年トップのこの私のパートナーが【地理学】のテストで毎回赤点取っているってだけでも腹立たしいのに、今回は0点ですか。どこに飛行機に乗ろうとしているのに、飛行場の場所を書けない飛行機乗りが居るんだか」



「うぐっ……。け、けど、お前だって飛行機の操縦技術はボクよりも低いだろうが!」



「【進路科】に何を求めているの? 葵?」



 それを言われると反論のし甲斐が無い。白井雪風は学業優秀、スポーツ万能、おまけに美しさも兼ね備えた正直、ボクなんかとはレベルが違う生徒だ。唯一、ボクが勝っているのは飛行機の操縦技術だけだが、そもそも【進路科】の生徒に求められる飛行機技術と、【操縦科】に求められる飛行機技術が同じな訳が無かった。



「まぁ、あんたが地理なんて要らないさと思っている態度を取っているせいで、大変な事になっちゃったわよ」



「……大変な事?」



 そう聞くボクに彼女はこう言った。



「先生から聞かされていない? あなたと私、今夜、【夜間民間人飛行】をするそうよ?」

――――――――――――

 国立空飛学園では政府の協力の元、編隊飛行訓練や民間人を載せての飛行など、課題をやらせられる時がある。【夜間民間人飛行】。これはその中でも最も難しい課題である。

 夜9時から深夜4時の間の、夜遅くの時間帯に飛び、なおかつ民間人を載せて安全にフライトさせないといけない、この学園の中で最も難しい項目である。



 ただでさえ暗く、飛行も難しい夜の空を、民間人を載せたまま、安全にフライトする。それが飛行機乗りにとってどれだけ難しいか。

 夜10時20分、星しか見えない飛び立ちの丘にて、ボクと雪風はその今日載せる予定の民間人さんを待っていた。



「全く……。地理なんて要らないなんて言う態度を取り続けているから、こんな事になるのよ」



「確かに……。地理なんて見えない夜の空だぜ……」



 まだ春だから良い物も、油断は出来ない。これは訓練を受けていない民間人を載せる、とっても危険なミッションなのだから。



「やぁ、お待たせしましたな」



 と、そんな事を考えていると本日、飛行機に乗る民間人がボクの前にやって来た。

 丸坊主な頭と腰を曲げた格好が特徴のご老人、星空星見ほしぞらせいけん教授。星空を観測する天文大学にて講義を取っている名誉教授であり、今回のフライトを希望している民間人である。



「本日はよろしくお願いしますな」



「えぇ、勿論です。教授。ほら、雪風も」



「分かっているわ、教授。早速、本日のフライトプランを見せて貰えませんか?」



 と、雪風が手を出す。【進路科】とは相手側から提出されたフライトプランを見て、最も良い飛行順路を見つけ出す役割を持っている。だからこそ、これは自然な行為であると言える。しかし……。



「はて? フライトプラン? そんなの、ありましたかな? まぁ、気楽にここまで戻って来てくだされば結構ですぞ」



 「ホホホ!」と言って、教授は飛行機に乗り込んだ。困ったのはボク達だ。フライトプランもなく、ただただこの真っ黒な空を飛ぶだなんて、自殺行為に等しい行為である。



「ど、どうするんだよ、雪風!」



「……知らないわ。とりあえず、民間人のお客様を待たせているみたいだし、乗り込みましょう」



 そう言って颯爽と飛行機に乗り込む彼女を追って、ボクも飛行機へと乗り込んだ。

 エンジンを回し、そのまま操縦桿を握りしめ、ボクは夜空へと進路を取る。



「計器、燃料及び他オール・クリア。視界、夜空にて安定。進路、オール・クリア」



「フライトを開始する」



 そう言って、ボクはエンジンを回し、空へと飛び立った。

 そして、そこに広がっていたのは―――――――――まぎれもない星空。街の光も届かないこの山奥だからこそ見える星空に、ボクは魅了されていた。

 真っ黒な夜空に映る満天の星。何もない夜空に光る沢山の満天の星が、ボク達の目に映っていた。



「白鳥座、小熊座、そして大熊座。有名なのはその辺りじゃろうが、その他にも蛇使い座、コップ座などの星もある。やはり夜空は最高じゃな」



 かく言うボクも、またその星空に魅了されてしまっていた。

 何も防ぐ物が無いこの星空の下では、全てを光り照らしてくれる。素晴らしい星空である。まぁ、雪風は何も関係無さそうに計器の確認をしている。



 と、そんな事を考えていたら、いきなり風が吹き、飛行機が強風に(あお)られていく。そして何かが強風によって飛んで来て、飛行機にぶつかる。その後、計器を見ていた雪風がいきなり目を光らせる。



「……大変ですね」



「どうした、雪風?」



「先程、飛んで来た何かのせいで飛行機の計器が故障しました。元居た場所は南東の方角ですが、計器が壊れて、方角がわからなくなりました」



「な、何だって!」



 大変だ。南東の方角だなんて、この地面も何も分からない場所で計器が無いと南東じゃないと分からないのだけれども。ど、どうすれば良いんだろうか……。ボクと雪風の2人が悩んでいると、星空星見教授が「ホホホ……」と声を出す。



「計器が無いと、確かに困るかもの。しかし、夜空を飛ぶのは、何も飛行機だけではあるまい。夜空を飛ぶ鳥などもあるしの。そんな鳥達が頼りにするのは、星空じゃ。星を見て、方角を見るのじゃ」



「星を……?」



「そうですか……。北極星が北を示すように、星座が南東を示すと言う事ですか。

 さしずめ、夜空の計器ですね。ちなみに南東の星座は?」



「天秤座や蠍座じゃよ。あそこの辺りじゃな」



「葵君、あっちよ」



「あぁ、分かったよ」



 と、ボクは雪風の指示に従い、星空の中を飛んで行く。星空が目印になるとは……。凄いなぁー。

 こうして、ボク達はなんとか丘に帰る事に出来たのであった。

【次回へと続く】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ