【1月号】【DoMA 1体目 死は全ての始まり、なのです!】
【DoMA 作;黒口穂波】
【1体目 死は全ての始まり、なのです!】
例え死が訪れようとも。
君と結んだ契約の証は。
決して消えたりはしない。
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人間、関係の構築と言うのはだいたい1週間程度だと俺、土田琢磨は考える。クラス替えやら入学とかの後、人間と言うのはだいたい1週間のうちに自分と合いそうな奴らを見つけて、その奴らと組む。だから、人間関係においてその1週間とはとても大事な物なのである。
何を言いたいかって? それはだな……。
(事故で2週間の間、学校を休んでいた俺はボッチ生活まっしぐらだと言う事だ)
高校入学式の前日。俺は事故に遭った。
猫を助けようとしてトラックにはねられた。掛け値もない事故だ。勿論、その猫の持ち主が美少女でそこからめくるめく青春ラブコメが始まるかと思ったりもしたが、2週間の間の入院生活もその辺は全くなく、2週間で学校の授業内容もあまり進んでいないし、そもそも『ちょっと遅めに来た転校生』みたいな感じで誰も心配なんかしていなかった。
その結果、今のような誰とも知り合いの居ないボッチの生活が始まってしまったのである。
「はぁ……」
こんなはずじゃなかった。
断っておくが、俺は中学の頃はボッチじゃなかった。むしろクラス中の人気者だった。クラスの中心には俺ともう1人、女子なのだが。そいつが居て、俺と2人でクラスを盛り上げていた。
高校と共に学校が別れてしまったが、今でも親友と呼べる大事な奴だ。俺も高校での華やかな生活を望んでいたさ。しかし、ふたを開けてみれば今のこの現状。
最も、何故か友達を今から作ろうと言う気はないんだが。
(やっぱり事故のショックかな? 事故前は友達を作ろうと張り切ってたのに)
さっぱり分からん。しかし、俺は放って置く事にした。
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「じゃあ、美化委員会の土田琢磨君♡ 整理、お願いね♡」
「わ、分かりました……」
と、何故か常にハートマークを連発するうちの担任、大林ミッチー先生(今年42歳のニューハーフ。本名の大五郎と呼ぶと怒る)に促されるように、俺は大量の荷物を倉庫へと運んでいた。
この高校、文釣高校は多くの部活があるマンモス校だ。
野球部は勿論の事、テニス部、卓球部、美術部、ごら○部、りん○ん部など様々な個性的な部活動があり、それを管理する委員会もまた多岐に渡る。俺は休んでいる内に美化委員会に決まっていたが、第1図書委員会、第2図書委員会、第3図書委員会などと図書委員会が何故か3つもある可笑しな高校だ。
まぁ、そんな部活やら委員会やらが多い、この高校だからこそ、後から踏み込めない独自の繋がりが強くて困っているのだが。
「ふー……。まぁ、これだけ運んでおけば大丈夫だろう」
と、俺はそう言って、運んできた物(大量の書類、今日提出と書いてあるが大丈夫なのか?)を見つつ、一息吐く。
そして外を見る。
外では野球部がソフトボール部と合同で野球と塁球を合わせた野塁球なる物で遊んでおり、またテニス部と美術部が美しさで競い合っている。謎な光景だが、これもまた青春。この高校で唯一のボッチと呼ぶべき俺に比べたら、まだマシな光景だろう。
「はぁ……。友達、欲しいなー……」
ガタン!
そんな事を思っていると、いきなり後ろからそんな音が聞こえて来た。
「へぇ……。琢磨君はそんな風に考えてたんだ」
あれ? 誰だ、こいつ? 俺は突然の侵入者にそう考えながら、見る。黒いローブを深々と被り、男性か女性かも分からない感じのそいつは、手にキラリと光るナイフを持っていた。
「望みさえ分かれば後は召喚しやすい。と言う訳で、君の身柄は私達【第2黒魔術部】が貰ったわ!」
そうそいつは訳の分からぬ言葉で、まくし立てるとそのまま俺の身体に
ザクリ!
と、ナイフを突き立てた。ナイフが刺さって、俺の身体から血が流れて行く。
「な、何……これ……」
あまりに現実離れした光景に俺は戸惑いを隠せない。「これで【第1魔術部】の鼻があかせるわ!」なんて言うそいつの声に反応できないまま、俺の視界が閉じて行く。
あぁ……俺、死ぬのかな?
【死なせてたまるか―――――――――!】
ガツン!
いきなり身体の中からそんな大声が聞こえたと思ったら、俺の視界がいきなり戻って来た。俺の目の前には血の付いたナイフを持って高喜びしているそいつの姿があった。そして、そいつはいきなり起き上がった俺の姿を見て、驚く。
「な、なんで! もう死んだはずなのに!」
【殺させてたまるか――――――――!】
そんな声と共に、俺の身体から剣が投げられる。そしてその剣は真っ直ぐに高喜びしているそいつの額に向かって行き、そいつの身体の中に入って行った。
「なっ……!」
【命令! 帰還せよ!】
俺が驚いていると、俺の身体の中からそんな声が聞こえて、それに対して、黒ローブのそいつは「……はい」と力なく頷いて部屋を立ち去った。
「一体……なんだったんだ……」
【ふー……。危なかったなぁ、お前】
そんな声が聞こえたと思ったら、いきなり俺の腕から小さな何かが生えて来た。そいつは猫のような髭を生やしたワンピース姿の少女であり、そいつは俺の腕から生えていた。
「う、うわぁ……! お、お前、誰だ!」
俺は腕から現れたその意味不明な小人の猫少女に質問する。そいつは俺に向かってこう答えた。
【吾輩はお前のDoMA、アリスだ】
【次回へと続く】




