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月刊うろNOW! まとめ  作者: アッキ@瓶の蓋。
CS4.8先生作

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20/41

【創刊号】【死亡予定少女 第1話 死ヲ告ゲル天使】

【死亡予定少女 作;CS4.8】

【第1話 死ヲ告ゲル天使】

 『天使』と聞くと、恋愛を成就させるキューピットやら生を司る物としてかなり好意的な目で見られがちだが、天使には死を告げると言う意味も持つ。そう、手に蝋燭を持った天使にはそう言う意味があるため、天使と言うのは良いイメージだけではないのである。

―――――――――――――――――――――――――――

 天使社製情報発信アプリ、通称『A.I.S.A.(アイサ)』。 最近、噂のこのアプリは、所有者が見たニュースの傾向に応じて、天使と呼ばれる白い羽を生やしたお姉さんがニュースを届けてくると言うアプリであり、野球チームの優勝やロケットの打ち上げ成功などの良いニュースの時は杖を持って登場し、某作家の死亡や汚職事件の発覚などと言った悪いニュースの時は蝋燭を持って登場する。

 4月24日午前8時。中学2年生のこの僕、城武人じょうたけひともこのアプリを使っている。と言うか、クラスの誰かがこのアプリを使おうと言い出し、それが広い範囲でクラスへと広まっていって、クラス全員が使うという状況に至ったのだ。僕もその流れに便乗するように、このアプリを使い始めた。



 成績、中の下。スポーツ、中の上。顔の良さ、中の下か中の中くらいと、見事なまでに何もない僕にとってこのアプリは唯一の癒しだ。もう少し何かが優れていたり、何かが劣っていたりすれば、何かしらの変化があったのかもしれないが、それもない僕は、こうやって『アイサ』を使って楽しんでいた。

 僕は雑食で、色々なニュースを手当たり次第に見ていて、まぁ、傾向も付けにくいかなと思ったのだが、天使が運んでくるニュースはどれも僕にとって魅力的に見えた。ただ、お姉さんの格好に悩殺されているだけなのかも知れないけれども。彼女は中学2年生の僕達にとっては性欲を掻き立てられるそんな存在であり、っと……そんな風に思っていると、『アイサ』からメールが来た。

 蝋燭を持った天使の姿だったので、悪いニュースの方か。



『アイサから、あなたに向けてのニュースだよ! ニュースだよ!』



「えっと、どれどれ……」



 と僕がメールを開くと、そこには良く分からない内容が並び立てられていた。



桐ケ谷夢葉(きりがやゆみは)、4月24日午前11時24分、駅前交差点にて居眠り運転のタクシーの事故死』



 それはニュースと呼ぶにはあまりにも稚拙な、ただの文字の羅列のような文章だった。



(何だろう、これ? 新手の悪戯か?)



 死亡のニュースと言うのは基本的に過去の出来事なのに、それは今からまだ3時間以上の後の事であり、ニュースとして出るはずのない情報だった。だからこの時の僕はただの迷惑な悪戯だと思い、特に問題視をせずに、学校へと向かった。

―――――――――――

 教室に入ると、既に何人かの生徒が教室の中に居て、何人かの仲の良い生徒同士で喋りつつ、時間を潰しているようだった。僕は教室に入ると共に、目の前にいきなり顔が出て来て、



「おはよぅー! 武人!」



「う、うわっ!」



 いきなりのその大きな声での挨拶に僕は、しりもちをついてしまった。それを見て、大声で挨拶してきたそいつは「ごめん、ごめん」と言いつつ、手を差し伸べてくれる。僕はその手を取り、立ち上がる。



「いやー、ごめん。ごめん」



 と言いつつ、笑う彼女。弾けるような笑顔に、少し日焼けしたような健康的な肌。身長が低いのにも関わらず、胸や尻ばかりはなぜか大人並みに育っている少女、上幌向(かみほろむい)あずさ。先に説明していた『アイサ』をこのクラスに広めた張本人であり、クラスの中心人物だ。その証拠に僕のようなどこにでも居る普通な男にもきちんと声をかけてくれる。



「武人は鈍いなー、ニブチンだな。こうして毎日挨拶してやっているのに、いつも驚くだなんて」



「仕方ないだろう。驚くものは驚くのだから」



 あずさは毎日、こうして大声でクラス全員に挨拶するのだが、それがとにかく大きい。それ故、僕のように驚いてしりもちをついてしまうクラスメイトも多いのだ。慣れないんだよな、毎日やられても。渋々あずさから離れて、席に着くまでにクラスメイト達にからかわれていたその時、



「おはよー! しのぶー!」



「きゃああああああああああああああ!」



 と言うか弱い女性の悲鳴が聞こえたので、僕は慌ててその現場へと向かう。そこには涙目で震えつつ、座り込んでしまっている美少女が居た。さらさらの黒髪に、リスを思わせる大きな瞳。出る所は出つつ、引っ込む所は引っ込んでいるナイスバディを制服を着ていても見る事が出来る美少女、うちのクラスのマドンナである四条大宮忍しじょうおおみやしのぶである。『四条大宮』と言う苗字が珍しいのと、弱弱しい性格が何とも女らしい、うちのクラスの天使である。さらに成績優秀、スポーツ万能と言うのだから凄い。

 そんな彼女は、どうにもあずさの大声が苦手らしくて、いつも悲鳴を出して座り込んでいるのがこのクラスの朝の名物になっていた。



「いやー、今日もダメだったか。ごめんね、忍」



「い、いえ……。ま、毎朝、お手を煩わして、すいません……」



 あずさの手を静々と取り、立ち上がる忍。そして心配して様子を見ていた僕と視線が合い、



「え、えっと……おはようございます」



「あっ……うん。えっと、おはよう」



 短い会話だった。彼女はそのまま自分の席に座り、そのまま何も言えなくなってしまう。何かを言おうとするも、彼女の友人達にまるでガードされるかのように防がれてしまい、結局僕はそのまま朝のHRを迎えた。

――――――――――――――――――

 そしてお昼、購買で買ったメロンパンを頬張りながら、『アリサ』を起動してニュースを探していた僕は驚いた。



『午前11時42分。駅前の交差点にて桐ケ谷夢葉ちゃん(5)がタクシーに跳ねられて死亡するという事件が発生。居眠り運転だったらしく、起きたら桐ケ谷夢葉ちゃんの命は奪われていました。警察は夢葉ちゃんの命を奪ったタクシードライバー……』



「これって、あの時の……」



 それは朝、8時に見たニュースの内容に似ていた。発生時刻、事故が起きた場所、そして車の車種や事故の原因まで同じだった。これは果たして偶然なのか? いや、偶然にしては出来すぎている……。



「まさか、あれって未来の……」



 そんな事を思っている僕の携帯の元に、またもやあの蝋燭を持った天使が現れる。



『アイサから、あなたに向けてのニュースだよ! ニュースだよ!』



 怖がりつつも僕はそのニュースを開き、そこに書いてある内容に驚く。そこにはこう書かれていた。



『四条大宮忍、4月26日午後10時27分、三丁目にある白川ビル屋上から転落自殺』

【次回へと続く】

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