【6月号】【その7 大和撫子】
【ここは魔物町 作;二人羽織】
【ここは魔物町 その7 大和撫子】
ここは魔物が住まうのもま町。多くの魔物が住まうこの町で、今日も今日とて平和で、どこか可笑しい毎日が繰り返されている。
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この晴れ渡る空の下の今日、僕、明星ジャックは旅館にてスーツに身を包んで相手を待っていた。僕はジャック・オ・ランタンと言う妖怪で、かぼちゃのような顔と黒いマントを羽織った西洋の妖怪である。そんな僕はのもま町にある旅館、『雪女旅館』で見合いを行う予定となっている。お相手はどう言う人かは分からないけれども、ろくろ首の妖怪に連なるお嬢様と聞いている。
「ろくろ首、かぁ……。どんな感じなんでしょう?」
と、僕は頭の中で彼女がどう言った感じなのかを考える。ろくろ首とは色白の肌と清楚な容姿に性格を持った本当に大和撫子と言う言葉が相応しい、長い首が特徴の妖怪なんだと言う。そしてお見合い相手の方に関しても、僕の家族が見た感想ではとっても美しい美人さんとの事だそうである。そんな方とお見合いが出来るなんて光栄である。
「けれども、どうしてお見合いの写真を見せてくれないんだろう?」
そんな優良物件ならば、その美しい顔を見せればもっと良い見合いが来ると思うのだけれども。まぁ、受けてくれるのもありがたい。僕からしてみれば嬉しい事この上ない。さぁ、来るのを待とう。
――――――10分後。
ま、まぁ、あちらさんも準備があるのだろう。もう少し待とうじゃないか。
――――――20分後。
よ、よーし。ちょっと準備運動でもして時間を潰そうじゃないか。別に話が込んでいると言う訳では無いんだし。
――――――さらに30分後。
「…………」
――――――それから10分後。
「って、流石に遅くないか!」
僕はいつまでも来ないお見合い相手に少々苛立ち始めていた。いくらお見合い相手が美人だとしても、ここまで待たれてしまいますと印象も悪くなる。
「まだ来てないのかよ! くそっ!」
僕はそう思いながら、もう帰ろうかと思って座敷の扉を開ける。するとそこには、まさしく美人と言う言葉が似合う女性がそこに居た。派手なオレンジ色の薄い水着のような服を着た、胸も腰も尻もボンッ、キュッ、ボンッと言う言葉が似合う美女であった。しかし、そんな彼女には一番大切な物が欠けていた。彼女には大切な部分である顔が欠如していた。
「へっ……?」
と、僕は首のない彼女を見て驚きを隠せなかった。
「や、やだ////// あ、あんまり私の身体をそんな目で見つめないでください//////」
「へっ?」
そして上から響く声に気付いて、ゆっくりと頭を上にあげる僕。そしてそこに居たのだ。
「こ、こんにちは////// は、恥ずかしくてちょっと出るのが遅れまして……//////
私、ろくろ首の美弥と申します。どうぞ、よろしくお願いします//////」
そこには顔を真っ赤にしてこちらを見る可愛らしくて、美しい女性の頭があった。
ろくろ首は、首が長いタイプから、首が自由自在に飛んでいるタイプがある事を僕が知るのは、気絶した後だった。
【次回へ続く】




