【1月号】【ここは魔物町 その1 結婚】
【ここは魔物町 作;二人羽織】
【その1 結婚】
ここは魔物が住まうのもま町。多くの魔物が住まうこの町で、今日も今日とて平和で、どこか可笑しい毎日が繰り返されている。
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ある古い一軒家。
1人の騎士が正座をして座っている。その騎士が着ている甲冑はボロボロながらも気品を感じさせる甲冑であったが、その甲冑は首が無かった。そしてその目の前の座布団にある物、それは刀だった。どこからどう見ても、ただの古びた刀だった。
「この度はいきなりの訪問、お詫び申し上げる」
と、騎士が頭を下げる。刀に向かってだ。
「ふん……! お前のような若造に言われんでも、用件は分かっとる。早く本題に入れ」
と、刀がそのような声をあげる。それに対して、騎士は「そうですな」と答える。
「単刀直入に言います。日本刀、長刀を僕にください!」
「断る! 誰が西洋かぶれなんかに渡せるか!」
この騎士、実はデュラハンと言う名の首が無い騎士の魔物であり、その前にあるこの日本刀は血を求める日本刀である。デュラハンは今日、日本刀の娘を貰いに来たのであった。
「お嬢さんとはそりゃあもう長い事、お付き合いをさせていただいております。武器屋で見つけた時、これだ! って思ったんですよ!」
デュラハンが語る2人の出会い話。
2人の出会いはとある武器屋だった。店先に売られていた長刀、それがお嬢さん。その長刀を手にしたデュラハンは、ビビビと来た。長年探し求めていた人はこの人だった。そのような感覚だった。
「彼女はとても良い! 切れ味もさる事ながら、長いと言う事も素晴らしいです!」
「ふん……! お前は娘の外見しか見取らん。そんな奴に、大事な娘を渡せるか!」
そう言う日本刀の父。そもそも父としては娘が、武器屋で売られる事だって本当ならば反対したかった。
けれども、「もうお父さん! 私、もう子供じゃないんだよ。立派に人も斬れるんだよ!」とそう言って、武器屋に売られてしまう道を選んでしまったのだ。
「父としては武器屋に仕事に行くのは止めさせたかった。あんなどこの馬の骨とも分からん奴らが、大切な娘を! 娘の身体に触るかと思うと、気が気じゃなかった!」
「ですが! それがきっかけで、僕は娘さんと出会えました! 僕はその事に感謝しています! お義父さん、これが嘘を吐く人の眼に見えますか!」
と、そう言う首なし騎士。目どころか顔もないのに、どこを見て信じろと言うのか。
「ふっ……。根性だけは座っているようだな」
だが、しかし。この日本刀の父は信じたようだ。何かを感じ取ったようだ。
「だが、しかしお前は、娘をちゃんと幸せにすると誓えるか? 毎日、身体を労わってやると約束出来るか!?」
「は、はい! 毎日、自分で刃先を研いで、清潔な身体にさせます!」
と、力強く宣言するデュラハン。
「よ、よし……良いだろう。特別に娘との交際を許してやる」
「お義父さん!」
「ただし。娘を危険な場所に連れて行くんじゃないぞ。分かってるな」
「はい、それは勿論!」
と力強く宣言するデュラハン。それに対して、「よし、じゃあ行って来い!」と応援するように言う日本刀の父。
デュラハンと日本刀の父、これはデュラハンが長刀の娘を連れて危険なダンジョンに挑む2日前の話である。
【次回へ続く】




