プロローグ.三
「皆死んじゃったか」
ゼシュアは、死体だらけとなったグレン高原を散策していた。あの大規模な爆発の割には死体が結構残っており、その中には勇者と魔王の姿もあった。
「この世界の悪と正義が仲良く死んじゃって」
そんな横たわる二人の側に腰を下ろす。驚くことに、ゼシュアの着ている真っ白なマントは反り血一つ浴びてなかった。
「禁魔も全て研究し終わり、この世界の強者も皆死んだか……ってか弱かったな……。代表二人は埋葬してやるか」
ゼシュアは創造の魔法で棺桶を二つ作り、その中に魔王と勇者を入れた。
「さてと、これからどうする…。隠居か?いやいや俺まだ二十歳にもなってないし」
そんな事を考えていると、突然、空から一筋の光がゼシュアの目の前に降り注いだ。
ゼシュアは慌てることなく冷静にその光を見つめる。すると、その光が形を変え一人の老人が出てきた。
「おぉ、見たことないな。何者だ?」
棺桶に腰を掛け老人を観察する。見た感じ普通の老人だが、只者では無いだろう。
「わしはこの世界の神だ」
―――――――――――。
数分間の沈黙が訪れ、先に口を開いたのはゼシュアだった。
「それで神様が何のようっすか?」
「神が目の前にいるのにその反応か。もう少し驚いてくれると思ったぞ」
何故落ち込んでいるのか、ゼシュアにはさっぱり分からなかった。
「まぁ、さすがだな“災悪の魔法使い”よ」
「災悪か。そう言えばそう呼ばれてたっけな」
いつの間にか世界中でそう呼ばれてたが、別に気に掛ける事でもないので無視していた。
「この今起こった戦争も全て見ておったぞ?まさかここまで圧倒的なものとなるとはな」
神様はなんだか渋い顔をして、そこら辺の死体を眺める。そしてゼシュアが座っている棺桶に目が止まった。
「勇者と魔王も死んでしまうとはな…」
「なんか申し訳ない。それで俺に天罰でも与えに来たんですか?」
笑顔で聞いてくるゼシュアに神様は少し距離を取った。
「お前怖い!何故笑顔なんだよ。残念ながら天罰を与えに来たんじゃない。というかわしもお前には勝てんわ」
その言葉にゼシュアは今まで生きてきた中で一番驚いた。
「神様が何で俺に勝てないんだよ!」
「お前はもはや現実離れしすぎておる。何自分で勝手に魔法作っちゃってるの!?さっきの神・闇魔法だっけ?いやいや、神様あんな技使えないよ!神様越えちゃってるよ君!」
なんか興奮すぎて口調が変わってるような気がしたが、それよりも神様をいつの間にか越えていたことに驚いた。
「なるほどな。じゃあ神様は何しに来たの?」
神様は深呼吸し興奮を収てさ真剣な眼差しになった。
「お前の荒れ果てた心を改心させようと思ってな。提案なんだか……少し眠らんか?」
「…………、どういうこと?」
「どうせお前やることなくて困っていただろ?だからわしが深い眠りにつける。そしたら寝ている間にこの世界も少しは変わってるだろう」
「……、深いって少しじゃないじゃん。でも、たしかにやることなくて困っていたところだったし」
それを聞いて神様は急に笑顔になった。
「よし!なら早速始めよう!!」
「ちょい待て!俺はこの場所で眠るの?」
死体だらけのグレン高原を見渡す。寝心地はあまり良さそうに思えない。
「それなら任せておけ。お前は地中に埋めておくから」
「……………、それならいっか」
「いいの!?……、まぁ本人が良いって言うからそうしよう」
「地中に眠るのも悪くないし、あ!それなら…」
ゼシュアは創造の魔法で真っ白の棺桶を作りだした。そして自ら棺桶の中に入る。
「よし、いいぞ」
「別に死ぬわけじゃないのだが、まぁいい。それじゃいくぞ」
神様が何かを唱える。そして意識が段々遠くなる。
―――――――――。
こうして“災悪の魔法使い“は深い眠りについた。
短くなってしまいました(-_-;)次からは話変わるので少し長めになると思います。