◆危険視◆
だいぶ遅くなりました(・・;)
「しかしいきなり居なくなるとは」
「一体どうしたんですかね?」
正気を失っていた兵士達は糸が切れたように倒れ、目玉は煙のように消えてなくなった。
「それにさっきのおぞましい力の気配……」
「まさかあの少年が?」
レイは呪剣を包帯で包み込む。
「お父様ーーー!!」
急にイザベラの声がして辺りを探すがいない。
周りには傷だらけの兵士達だけだ。
それにこんな場所にイザベラがいるはずが……。
「お父様ーー!!」
「上か!?」
気付いたときには遅かった。
真上から降ってきたイザベラを王自らの体で受け止める。
「いててて……お父様!、……大丈夫?」
「娘の為ならこの程度……」
イザベラは慌ててレイの上から立ち上がり、レイに手を差し伸べる。
「ありがとう」
「私が踏んじゃったんだもん、ごめんなさい」
「気にするな、それより何でこんな場所にいるんだ避難したはずじゃなかったのか?」
「ごめんなさい、友達を放っておけなくて」
「……そうか、まあ無事だったから良しにしよう。それで何故上から……」
「俺が落とした」
不意に後から声をかけられ、レイはイザベラを抱えると素早くその声の主と距離を取った。
「お前、……やはり無事だったのか」
「引き付けといて殺られるはずがないだろ?」
「その娘は誰だ?」
少年の横にはピッタリと、先程まではいなかった少女がくっついている。
「お前はとっとと離れろ」
「えー、分かりました……」
「私の親友よ……、ってか貴方よくも私を落としたわね!」
イザベラがゼシュアに掴みかかろうとするが、レイが慌てて止める。
「イザベラ、この少年と知り合いなのか?」
「まぁちょっとね、この国の命の恩人でもあるし」
「なら、やはり……」
「私とミーシャが証言者です」
「シュア様がハルファスを見事撃退しました」
「シュアというのかこの少年は……」
今もマントを深々と被っているが顔立ちは整っていそうだな。
「レイ様、この少年にあまり近付かないほうがいいんじゃないですか?」
ドレークはシュアという少年を危険視しているようだが、この国を救ってくれた事に代わりわない。それなら王である私が疑うなどやってはらないことだ。
「是非私の城で歓迎したいのだが……」
「それは断る」
「……どうしてだ?私としてはこの国を救ってくれたお礼がしたいのだが」
「俺は少しゆっくりしたい、お前には少し話があるから俺の方から会いに来る」
そういってゼシュアは四人の前から姿を消した。
「行っちゃった……」
「マーシャル王国のどこかにいるわよ、後で探してみましょ」
「それなら兵士達にも協力させよう」
「ありがとうお父様」
「二人は先に戻っていなさい、私は兵士達を城まで運ばなければならない」
「分かりました」
ミーシャとイザベラは城に向かって歩き出した。
「いいのですか?あのような危険な奴を」
「今私たちがこうしてここにいるのは、シュアという少年のおかげだ。もし彼が来てくれなかったら我々はハルファスに滅ぼされていただろう」
「……しかし」
「お前は私の部下ではないので別に命令はしないさ」
「それもそうでしたね。俺は少し奴の正体を調べてみますよ」
ドレークも武器を担ぎ城に戻っていった。
「……っ」
包帯で巻いている腕が痛む。
呪剣が腕から離れるのはもう一日はかかるだろう。
しかしシュアという少年、この呪剣の事も知っていたようだが……。
まぁ会いに来ると言っていたので、その時に聞くとするか。
レイは負傷した兵士達の元に向かった。