◆ハルファス完◆
短いです!
しかしミーシャに言われて気が付くとは……。
嵐の中、ゼシュアは自分の失敗を悔やんでいた。
「やはり風を逃がすしかないな、………」
ゼシュアは結界の中央に行き魔法を唱える。
「―――異空間魔法―――」
するとゼシュアの真上の空間が歪み、異空間への入り口が出来た。
「俺の作った空間なら問題無いだろ」
風は一気に異空間に流れ込んで行く。
ハルファスは風に巻き込まれまいと、結界の近くで何とか踏ん張っている。一方、黒い球体の方は歯の無い真っ黒な口を開けたり閉めたりしていた。
それから数分してやっと嵐が収まり、異空間を消すと二つの結界も解除した。
「シュア様ーー!!」
二人がゼシュアの元に駆け寄ってくる。
「なんとか収まったみたいね」
「あぁ」
「あれ?あの黒ボール大きくなってない?」
ミーシャは目を擦りながら、空に浮かぶ球体を見ていた。
「たしかに、……でかくなってるような」
「…………もっとだ」
「え?」
すると球体はみるみる内に大きくなっていき、あっという間にハルファスを越え、空に大きな黒い球体が浮かぶ不思議な光景となった。
「な、なるほど、……たしかに体格差は凄いですね」
「…………もう何だか頭が痛くなってきた」
球体はゆっくり動き出し、大きな口を開けてハルファスに近付いて行く。
「なんか可愛い、……あの口が人間みたいな口じゃなくて良かった」
「…………歯があった方が良かったか?」
「いやいや、人間みたいじゃなくて良かったんです!これでいいんです!」
「でも遅すぎない?どうやってハルファスを口まで運ぶのよ」
「……、一瞬だから見逃すなよ?」
ハルファスにある程度近付いた球体は静止した。ハルファスが距離をとろうと球体から離れようとした時、球体が空気を吸い込み始めた。
「ま、まさか、……」
球体は徐々に吸い込む力を上げていく。
「シュア様!ストップです!この勢いじゃマーシャル王国まで吸い込みそうです!」
「……たしかに。おい!別のやり方にしろ」
ゼシュアは決して大きな声で言ったわけではないが、球体は声に反応に吸い込むのを止めた。
「はは、耳ってどこにあるんでしょうか……」
「それは俺も知らん」
「吸い込み以外に何か方法あるの?」
「あいつは様々な闇魔法、禁魔で造り上げた傑作だ。吸収、変身、吸い込みだけなわけないだろ」
すると球体の下の部分が光り出した。
「ま、眩しくて目がぁぁ!!……って程眩しくは無いんですね」
「………………目眩ましが目的じゃないからな、これで終わりだ」
「……ちょっと、あんたの影動いてるわよ」
「え!?」
ミーシャが慌てて自分の影を見ると、影が動き出し一本の黒い触手が出てきた。
「きゃぁ!」
その触手は人間の手の様な形になると、ゼシュアにピースをして影に消えていった。
「…………何今の」
「…………知らん。今から頑張るって意味じゃないか?」
「やっぱ可愛い……」
三人が球体を見ると、その口は何だか笑っているように見えた。
(……気のせいよね)
(……気のせいだろ)
(……可愛い)
ハルファスの影が動き始め巨大な触手が出てくると、ハルファスを持ち上げ球体の口の元にゆっくりと運んでいく。
「……さっきの言葉取り消しだ。一瞬じゃない 」
「これを見逃す方が凄いわよ」
「…………あいつ久々だからって何を遊んでいるんだ」
「シュア様、さっきから“あいつ”って呼んでますがもしかして名前無いんですか?」
「当たり前だ」
ミーシャは驚愕した顔でゼシュアを見つめた。
「名前要らないだろ、あいつ普段剣だし」
「それはダメですよ!キューちゃんが可哀想です!」
「…………キューちゃん?」
「キューちゃんです!ボールのボーちゃんにしようか迷ったんですが、球体のキューちゃんにしました!」
ミーシャの輝いている目にゼシュアは思わず後ろに引いてしてしまう。
「そ、そうか……、好きにしてくれ」
「なんかごめんなさいね」
イザベラはゼシュアに謝っておいた。
ハルファスは触手から逃れようと暴れているが、暴れれば暴れれるほど触手の中に入っていき、今では触手から頭だけがはみ出していた。
「あの天災級の魔物が…………」
そしてハルファスは頭も触手に飲み込まれていき、完全に姿が見えなくなった。
「口に行く前に消えちゃったけど」
「……あいつのあの口は正直意味が無い。やろうと思えばどっからでも食えるはずだからな。触手から食われようが口から食われようが結果的には吸収される」
「そ、そうなの……」
球体はハルファスを吸収すると徐々に小さくなっていき、蛇の姿に戻るとゼシュアの側までやって来た。
「もう元に戻れ」
ゼシュアの一言で蛇はあっという間に剣に変化し、ゼシュアはそれを消した。
「じゃあねキューちゃん!」
「……あんたね。もういい、……帰ろう」
「………………」
ゼシュアは二人を連れ瞬間移動した。
◆ハルファス完◆
シリアスに終わらせるつもりが…