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災悪の魔法使い  作者: SHIN
数万年後の世界
13/15

◆蛇◆

遅くなりました(._.)



 それから俺は鬼の子に様々な魔法を使い実験をした。


―――――しかし実験は失敗。


暴走した鬼の子は自我を忘れ完全な化け物となった。俺はその研究資料と鬼の子もろとも爆破させ消したはずだったが………。


「あの程度じゃ死ななかったってことか、……」


 ハルファスはゼシュアをジッと睨みながら攻撃するタイミングを伺っている。


「父を殺した張本人が目の前にいるからな。俺を殺したいだろ?復讐を果たす為に長い年月を生きてきたんだろ?自分を醜い化け物にし、一族を滅ぼし、……そして大好きな父を目の前で殺されたんだ。自我を忘れても俺に対する憎悪、怒りは魂に深く刻まれ俺を忘れることなく復讐を生きる糧として、……ただただ殺戮を繰り返す不死身の化け物となったとしても、お前の心に刻まれた深い傷は再生しなかったようだな……。」 

「――――――――!!!」


 ハルファスはゼシュア目掛けて光線を放つ。ゼシュアはそれをかわさず直撃し、爆発により砂煙が舞い上がった。しかし、風により砂煙が消え去ると無傷なゼシュアがその場に立っていた。

 

「……残念だがお前に俺は殺せない、しかしお前の攻撃をずっと受けているほど優しくはなっていない。何年攻撃し続けようが傷一つ付けることは出来ないだろう。さすがに俺でもお前を元に戻すことは出来ない、呪目も完全にお前と融合してるからな。お前を化け物にしたのは俺だ、……せめて不死身のお前を

父の元に送ってやる」


 ゼシュアは左手の剣に魔力を込める。


「――――邪剣解放――――」


 ハルファスは雰囲気の変化を感じとり、少し後退りをする。


「ぎ、……「悲鳴はあげるな」」

「………………ギャ」


 剣は落ち込んだ様に小声で一言言い、数万年前と同じ様に黒翼の生えた蛇の化け物に変化する。久々に出てきたのが嬉しかったのか、ゼシュアの体に巻き付き顔を舐めている。


「……暑苦しいから離れろ」


 蛇はゼシュアから離れ、目の前にいるハルファスに狙いを定めた。五十メートルを越えるハルファスと五メートル程の蛇。体格差は明らかにハルファスの方が上だが、怯えているのもハルファスの方だった。


「こいつのことも覚えてるのか?父親を食った奴だしな。今のお前なら勝てるかもよ」


 蛇は挑発するようにハルファスの目の前でぐるぐる回っている。


「――――――――!!」


 ハルファスは覚悟したかのように蛇に襲いかかった。六本の腕を使い殴りかかるが、それを簡単にかわす。殴りかかってきた一本の腕に飛び乗り指に噛み付くと、肉を抉りその場で美味しそうに食べていた。しかし、ハルファスは指をすぐに再生させると、蛇の頭と尾を掴み真っ二つに引きちぎった。


「―――――!?」


 が、ハルファスがちぎったのは蛇の脱け殻で、いつの間にか脱皮した蛇は高速で移動し、ハルファスの背中や顔など色んな部位を食いちぎっていた。ハルファスは食いちぎられた部分を再生させるが直ぐに食いちぎられ、蛇は楽しんでいるかのようにハルファスを食らい続けていた。


「……………………」


 二匹の闘いを見ながらゼシュアは後ろの方にも意識を飛ばしていた。


「…………何でいるんだ」


 ゼシュアから二十メートル程離れた所にある岩。そこに謎の蠢く影が二つ見えた。



◆◆◆◆◆◆◆


「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」

「止まってぇぇ!!」


 ミーシャに言われスコルピオンは急停止し、二人は前に振り落とされた。


「いててて、……」

「ちょっと、……もう少しゆっくり止まれないの?」


 イザベラはスコルピオンに悪態をつくが、それを無視して寝そべっているミーシャをハサミでつついている。


「ちょ、くすぐったいって…………ってか痛い!痛いよ!」


 それでもつついてくるスコルピオンから逃げようと、寝そべったまんま転がりイザベラの側に行く。


「あんた何やってんのよ」

「スコちゃんにつつかれてた……」

「はぁ、……緊張感ってものが無いよね」

「ははは、じゃあスコちゃんありがと!!」


 スコルピオンは最後に一回ミーシャをつついて地面に潜っていった。


「いてて、……何で最後に」

「いいから行くよ」


 ハルファスと少し離れた所に降ろしてもらい、なるべく気付かれないよう歩いて向かうことにした。


「急にこっち見たりしないよね」

「怖いこと言わないでよ……」


 近付いて行くとちょうど隠れやすい岩があったので、そこから様子を伺うことにする。


「あ、シュア様!」

「ちょ、静かに!…………」


 大声を出そうとするミーシャの口を慌てて塞ぐ。


「んーーー!!」

「暴れないでよ……!」

「ーーぷはぁ!……はぁ、死ぬかと思ったよ」

「あんたが騒ぐからでしょ」

「ごめんなさい、……それより今どういう状況?」


 岩から二人揃って顔を出し様子を伺う。

するとゼシュアの剣が蛇となりハルファスを挑発するようにぐるぐる回っている。


「蛇になった!?」

「あの蛇、……ハルファスが怯えてる?」

「なんだか嫌な感じがするね……」


 すると次の瞬間、ハルファスが蛇に殴りかかり闘いが始まった。


「す、すごい……」

「ハルファス相手に遊んでるみたい……」


 ゼシュアが手を出す気配は無く、ただ立って闘いを見守っていた。その姿にミーシャはホッとする。


「良かったー、シュア様がハルファスを呼んだわけじゃなかったのね」

「え?…………何言ってんの?」

「あ、…………」


 思わず口に出してしまい、岩に隠れて体育座りをし黙り込んだ。


「ねぇ、どういうこと?」

「………………」

「ねぇってば!!」

「…………お前ら何やってんだ」

「「ひゃ!!!」」


 黙り込んでいたミーシャとイザベラは、突然目の前に現れたゼシュアに驚き、二人揃って情けない声を放った。 


「し、し、シュア様!!」

「あれ!?なんで!?あそこに居たのに!」

「瞬間移動出来るの分かるだろ、それより何でお前らがこんなとこにいるんだ」

「わ、私はあなたにハルファスを倒す協力をして欲しいと頼むつもりだったの。でもさっきあなたをハルファスが追い掛けて行ったから、私は来るつもり無かったのよ!?」


 イザベラは顔を真っ赤にしながら慌ててミーシャを指さす。


「ミーシャがど、どうしてもって言うから」

「ぇぇ!!イザベラが着いてきたんでしょ!!」

「違うわよ!あんたが「もういい!」……」

「…………それで、ミーシャ。何で来たんだ?正直に言ってみろ」 

「で、でも……」


 ミーシャはイザベラをちらっと見るが、ゼシュアが構わないと言ったので話すことに決めた。


「シュア様は私に王国は襲わないって約束してくれたんだけど、……タイミングが良すぎるくらいにあのハルファスがやってきたから……。」

「……俺があいつを使ってマーシャル王国を滅ぼそうとしてるのでは……ってことか」

 

 ミーシャはゆっくり頷く。


「でもごめんなさい!!シュア様を信じていたはずなのに心のどこかでは少し疑っていて、自分の目で確かめなきゃって思ったんです」

「…………まぁ疑うのが正解だ。そんな簡単に信じるもんじゃない、お前は正しいよ」

「……ちょっと待って、王国を滅ぼすってどういうこと?」


 二人の会話を黙って聞いていたイザベラが口を開いた。


「あ、そ、それは…………」


 ミーシャが慌てて何か言おうとするがそれをゼシュアが止めた。


「…………そのまんまの意味だ」

「だからそれが意味分からないのよ」

「俺はそれほど危険な人物だっていうことさ」

「え………何か、……罪を犯したの?」

「数え切れない程のな……」

「あなた、……一体何者?」


 その時、三人の真横を蛇が物凄い速さでぶっ飛んで行った。


「ま、負けちゃった!?」

「……いや」


 ミーシャはぶっ飛んで行った方向を見ていると、何故か真上から蛇が降ってきた。


「あ、危ない!!」

「きゃぁ!!」

「…………」


 蛇は三人にぶつかる瞬間に翼を使い空中停止し、ゼシュアの真横に降り立つ。

蛇はゼシュアの目の前にいる二人を見て大きく口を開けるが、ゼシュアが思いっきりその口を閉じた。


「ちょ、本気で死を覚悟しました」

「た、食べられるかと思った……」


 二人は力が抜けたように、その場に腰をおろした。


「いつまでも遊んでいないで、さっさと食ってこい」

「ギャ!」


 了解したと言わんばかりに声をあげ、再びハルファス目掛けて飛んでいった。


「食ってこいって、……あの蛇にハルファスを食べさせる気?」

「そうだ」

「し、シュア様、……。それはいくら何でも無理があります。あの蛇もハルファス並の魔物だったとしても、体格差がありすぎますよ……」

「そうよ、……。あんなでかいのどうやって食べるの。しかも相手はあの天災級の魔物よ?」

「………………お前らは二つ勘違いしてる」

「え?」


 二人は顔を見合わせるが何を勘違いしてるのか分からなかった。


「まず、体格差ってどっちがでかいと思ってるんだ?」

「はい?、……それはもちろんハルファスで」

「まずそこが間違い、……二つ目はハルファス並の魔物だったとしてもって言ったが、それも間違い」

「え、…………ハルファスより弱いってこと……」

「ちがう、その逆だ。あの蛇にとっちゃアレはただの食い物だ」


 ミーシャとイザベラはゼシュアの言ってる意味が理解できず、目をパチパチしている。


「………見てれば分かる」


ゼシュアは二人が隠れていた岩を魔法で吹き飛ばし、見晴らしを良くした。


「はは、……一瞬で岩が消えちゃった」


 二人は立ち上がりゼシュアの側に来た。


「あれ?蛇が空に飛んでいく」


 するとゼシュアが魔法を唱え、三人の周りに透明な結界を張ると、さらに大きな結界で辺り一面を包んだ。


「なにこれ?」

「……ここから半径二キロを結界で包んだ。これで結界の外に被害は無いはずだ。死にたくなかったらこの結界から出るなよ?あの姿の悲鳴は俺でもさすがに少し耳が痛くなる」

「え?」


 空中に浮かんでいる蛇にハルファスは光線を何発も放つが、蛇に当たる前に消えてしまう。


「……蛇の周りの空間が何かおかしいんだけど」

「見てれば分かる」


 空中に浮かんでいる蛇が、自分の尾に噛み付き翼を丸めてボールの様な形になった。


「あれ?何を、……ってか翼動かさなくても飛んでる」


 すると蛇が黒く輝き出した。口と尾が完全に融合して、丸めていた翼も蛇の体に融合するよう溶けていく。そして蛇は一個のツルツルな黒い球体となった。


「黒いボール?」


 妙な威圧感の黒い球体に二人は目を奪われた。ハルファスも大きな目で球体をジッと睨んでいる。

 するとツルツルな球体に切れ目が入り、口の様に半分開いた。


「お前ら耳塞げ」

「え?」

「とっとと塞げ!」


 ゼシュアに強く言われたので二人は耳を思いっきり塞いだ。


「ギ、…………」


 ハルファスは危機感値能力が働き慌てて球体に光線を放つ、……が。


「〓〓〓〓〓〓〓」


 先程の様な獣の叫び声ではなく、ハルファスに似た、声なのかなんなのか分からない音を球体が口から放った。


「きゃあ!!」


 その音により光線は消え去り、ハルファスは声圧で吹き飛び大きな結界にぶつかった。


「こ、これって……」

「…………夢?」


 ゼシュアの結界の中にいるにもかかわらず、球体の大きな音が三人の耳の中に響いた。そして三人を包む結界の外は、岩や砂が舞い大嵐となっている。

 球体は音を止めているが、まだ外に出れる状況ではない。


「結界張らなかったらマーシャル王国も滅んでいただろうな……」

「た、たしかに……」


 しかし嵐は一向に止む気配が無い。


「シュア様、……もしかして大きな結界を張ったから風の逃げ場が無くなってるんじゃないでしょうか……」

「………………」

「図星なのね!?……どうするのよ!止まない嵐なんて嫌!」

「…………止めてくる」


 ゼシュアは瞬間移動し結界から消えた。


「シュア様!!」

「ミーシャ!危ないって!!」


 結界から出ようとするミーシャを何とか引き止める。


「こんなこと出来るんだから大丈夫でしよ」

「……そうだよね」


 二人は座ってゼシュアを待つことにした。





遅くなったのでまた何分後かに次話投稿します!

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