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災悪の魔法使い  作者: SHIN
数万年後の世界
10/15

◆接近◆



「へぇ、……こんな急によく集まるもんだな」


 ゼシュアは王都の門近くにある民家の屋根からその光景を眺めていた。

 緊急事態のサイレンが鳴り一時間もたたない内に、マーシャル王国の兵士達、そして冒険者達が続々と集まりその数は数千を越えていた。


「しかし………」


 まだ姿は見えないものの、ゼシュアはその懐かしい気配の持ち主が桁外れた魔力を持っていることを感じた。

 正直今この場に集まった戦力を上回っているだろう。たしかに数もなかなかのもので、そこそこ強そうな者もいるが、連携が出来なきゃ意味がない。殺される数が増えるだけだ。これを上手くまとめる奴がいたら話は別だが……。



「皆!よく逃げ出さず集まってくれた!」


 ざわついていた兵士達が一斉に静かになり、声のした方を振り向く。

そこには赤髪の男性と、その後ろに体格がガッチリした銀髪の男が立っていた。


「今回は王であるレイ様も応戦して下さる!!我らが王と共に戦えるのだ。今回の戦いは必ず勝利しようではないか!」



「「「「「「うおぉぉぉぉ!!」」」」」」


 兵士達が雄叫びをあげ、士気が一気に高まり始めた。それを眺めているレイとマリースの元に三人の冒険者が歩いてきた。


「気合い入ってるなー」

「おぉ!お前達も来てくれたか!」


 マリースに話し掛けた二メートル近くある斧を持った男と、緑髪の女に双剣を持った黒髪の女。この三人はマーシャル王国内でも数人しかいない、Aランクの冒険者達だった。


 冒険者は難易度の高い依頼をこなす事でギルドからE~Sランクの称号を与えられる。一番高いのがSだが、その称号を手にしたのは未だにいない。例えばEランクの依頼を十回こなして、最後にギルドマスターからの試験をクリアすることでEランクの称号を手にする事ができる。

 Sランクの依頼もたまに出るのだが、危険過ぎて今まで受けて帰って来た者はいない。 だから実質、Sランクの一個下のAランクが冒険者の中では最高の称号となっていた。



「俺達も参加するから安心しな」

「ドレーク、お前達がいたら心強い!」

「正直この戦いに勝てたら俺はギルドマスターにSランクの称号をよこせって言うつもりだ」

「はは、まぁ俺からも頼んでおくさ」

「ありがとな、じゃあまた生きて会おう」

「あぁ、命懸けで戦おう」

「おぅ!………それとレイ様、その剣術を間近で見れるのを楽しみにしております」


 ドレークはマリースの後ろにいるレイに一礼し、二人を引き連れ冒険者達の元に戻っていった。


「私の剣術か、……いいだろう。見せてやる」


 レイは薄笑いを浮かべ、ハルファスが来るのをジッと待った。



「あれが勇者の末裔か…」


 ゼシュアはレイの事を観察していた。たしかに初代勇者程では無いが、なかなかの覇気が感じられる。


「さて、見物だな」



 兵士達の士気が高まる中、周りの空気が一気に重くなるのを感じた。


「お!来たか……」 


 マリースとレイ、兵士達もそれを感じて只一点だけを見つめる。


「あ、あれが……」

「なんだよアレ……。でかすぎだろ…」


 まだ遠くにいるのはたしかだが、この場所からでもその大きさはよく分かった。

 そして徐々に近付いてくる内に、その容姿がはっきり見え始める。


「ば、化け物だ……」


 その姿をみて吐き出す兵士達も続出した。


 体長は五十メートルを軽く越えているだろう。鬼の顔をして、腕が左右に三本ずつ生えている。そして兵士達が吐いた理由――――――――。

それは胸の真ん中にキョロキョロ動く、人間の大きな目を見たからだった。


「なんだあいつは、……見たことないぞ」


 たしかに懐かしい気配はハルファスからしているが、ゼシュアには全く心当たりが無かった。それにこんな奴を一度見て忘れるはずがない。


 まだ距離は結構離れているが、その目は視点が定まらずにずっと辺りをキョロキョロしていた。

 ゼシュアがその目を見つめていると、その目がゼシュアの方を見てピタッと止まって、ハルファスは動きを止めた。


「な、なんだ?動きが止まった?」


 突然動きを止め一点を見つめるハルファスに兵士達は動揺する。


「あいつ何かこっち見てないか……?」

「狙いを定めたって事ですね……」


 先頭に立つレイとマリースは冷静にこの状況を見ていた。マリースは振り向き兵士達に号令を掛ける。


「皆、戦闘準備だ!動揺している暇は無いぞ!!第一部隊はハルファスが近付いて来たときに足下を狙って攻撃!第二部隊は遠距離魔法の準備だ!冒険者達は左右から回り込んで追撃を頼む!」


 マリースの命令通り兵士と冒険者達は動き始める。ハルファスは未だに一点を見つめ動かないでいたので、素早く行動出来た。




「あの目、……見覚えがあるような」


 ゼシュアはなんとか思いだそうとするが、なかなか出てこなかった。


 皆持ち場につき、辺りを静寂が包む。

その静寂を破ったのはハルファスだった。



「―――――――――!!!」


 声なのか何なのかよく分からない音をハルファスが発する。


「ぐ、なんだこれは……」


 あまりの気持ち悪い音に兵士達は皆耳を塞ぐ。しかし、ゼシュアは全く動じもせずにその音を聞いていた。




「……………思い出した」


 思い出したゼシュアは溜め息を一つ吐いて立ち上がった。

  

 

少し短いです( ;∀;)

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