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スクールカーストの最底辺と最上位、そんな全く異なる二つの世界が交錯する関係性に、私はいつも深く魅了されてきました。過酷な現実を生き延びるために気配を消し、透明人間になることを覚えた内気で不器用ないじめられっ子が、学校で一番明るくて人気のある女の子に見出される、そこには、言葉にできないほどの大きな感動があると思うのです。この物語を通じて私が描きたかったのは、そんな二人の繊細な絆です。天性の眩しさを持つ女の子が、教室内の暗黙のスクールカーストに囚われることなく、周囲と同じように隅っこの男の子を無視する代わりに、彼の灰色に閉ざされた世界へと手を伸ばして光の中へと連れ出す。傷つきやすい主人公が少しずつ警戒を解き、生まれて初めて本当の温もりに触れ、思いがけない友情の中に心の拠り所を見つけていく姿を見守ることは、執筆していて非常に感慨深いものがありました。読者のみなさんの心にも、この物語が深く届くことを願っています。

それは志窪しくぼ高校の、いつものありふれた一日だった。


周囲を見渡せば、誰もが笑い、騒ぎ、それぞれの青春を謳歌している。


だけど――俺にとって、それらすべては白々しく、退屈で、ひたすら苦痛な時間でしかなかった。


理由は簡単だ。


俺はこの教室における、“いじめられっ子”だから。


「ああ~、なんて素晴らしい志窪高校ライフなんだろうな~」


誰かがわざとらしく、おどけた声を上げる。


クラスのあちこちから、くすくすと忍び笑いが漏れた。


俺は冷たい視線から逃れるように俯き、机の木目へ視線を落とす。


そうでもしなければ、突き刺さる悪意に心が押し潰されそうだった。


「なんであいつ、まだ学校来てんの?」


「とっくに辞めればいいのにな」


小声なのに、わざと聞こえるように言っているのが分かる。


俺は膝の上で拳を強く握り締めた。


言い返す勇気もない。


抵抗する力もない。


ただ黙って、自分の存在を否定され続けるだけ。


俺の名前は、おおとり こう


両親はいない。


家は底辺レベルの貧乏だ。


今は亡くなった兄の知り合いに世話をされながら、古びた小さな家で一人暮らしをしている。


どこにでもいる、惨めないじめられっ子だ。


* * *


「はい、みんな席について。今日は転校生を紹介します。入ってきてください」


担任の声が鼓膜を叩いたのと同時に、廊下にバタバタと騒がしい足音が響き渡った。


私が何気なく顔を上げると、ガタゴトと音を立てて教室のドアが開く。


――その瞬間、私は息をのんだ。


入ってきたのは、現実のものとは思えないほど綺麗な女の子だった。


教室の蛍光灯を浴びて、まるで水面のようにきらめく鮮やかな青いショートヘア。


ほんの一瞬、彼女の視線がまっすぐに私を捉えた。


吸い込まれそうなほど深い、どこまでも青い瞳。


時間にして、わずか一秒足らず。


それなのに、私の脳内ではそれがまるで永遠の時間のように引き延ばされていた。


「自己紹介をお願いします」


先生に促され、彼女はすっと耳元の髪を整えて、満面の笑みを浮かべた。


「みなさん、はじめまして!ひとりあおいです。今日からよろしくお願いします。みんなとたくさん仲良くなれたら嬉しいです!」


一瞬、教室がしんと静まり返る。


次の瞬間、わっと温かい笑い声と歓迎の拍手が教室を満たした。


クラスの反応に安心したのか、葵さんはほっとしたように微笑む。


その視線が、再びまっすぐ私へと向けられた。


私は慌てて目をそらし、うつむいた。


一瞬でクラスの中心になった彼女の眩しさに、胸の奥がチクリと痛む。


圧倒的な格差に、思わず気後れしてしまったのだ。


小さく「くすっ」と、彼女の楽しそうな笑い声が聞こえた。


私は心臓のうるさい鼓動を隠すように、机の木目をじっと見つめた。


ただひたすら、気配を消そうと必死だった。


「一さん、あの空いている席に座ってください。おおとりくんの隣です」


先生にそう告げられた瞬間、文字通り全身に鳥肌が立った。


心臓が肋骨を激しく叩く。


だけど私は、彼女の足音が近づいてくる間も、頑なに机に頭をくっつけたまま動かなかった。


葵さんは私の隣の席に腰を下ろしたが、特に話しかけてくる様子もない。


それはまさに私が望んでいたことだった。


目立たずに気配を消すること――それが、この地獄のような学校における、唯一の生存戦略なのだから。


「みんな、数学の教科書を出して」


先生の事務的な声が響く。


いつも通りの惨めさと、じわじわとした焦燥感が胸にこみ上げてきた。


家が貧乏すぎる私には、教科書を買うお金なんてない。


葵さんと視線が合うのを避けるためだけに、私は黒板に書かれた数式を熱心に見つめ、いかにも授業に集中しているフリをした。


その時。


ポン、と私の手の甲に、柔らかいものが軽く触れた。


「――っ!?」


私はびくっと体を震わせる。


隣を見ると、葵さんがいたずらっぽい笑みを浮かめて私を覗き込んでいた。


「ねえ、数学の教科書持ってないの?」


彼女が身を乗り出し、私の耳元で小さく囁く。


「言ってくれればよかったのに……」


「……驚かせてごめん。ただ、君の迷惑になりたくなかったんだ」


体を寄せて囁き返した。


葵さんは瞬きをパチパチとさせ、私の顔をじっと見つめる。


彼女は私の顔に浮かぶ深い絶望の色に気づいて驚いたのだろうが、すぐにそれを笑い飛ばすように、私の肩をぽんと小突いた。


「全然大丈夫だよ!ねえ……じゃあ、一緒に見よっか?」


「……俺に関わらない方がいい」


私は周囲に聞こえないよう、必死の思いで制した。


「どうして?」


彼女は本当に不思議そうに、綺麗な眉をひそめる。


喉の奥に苦いものが引っかかり、上手く説明できずにどもってしまう。


いじめられっ子だなんて、自分から言えるわけがない。


私の困惑した様子を見て、彼女は「ふふっ」と小さく笑い、温かい眼差しを向けた。


「んー……気にしないで、私は全然平気だから!それより、名前なんていうの?」


「……おおとり こう


「じゃあ、友達になろう!」


彼女はひまわりのように眩しい笑顔を浮かべた。


私は完全に言葉を失った。


長い沈黙の後、ようやく小さな声で「うん……」とだけ返した。


彼女が二人の席の境界線に教科書を滑り込ませたとき、私の冷え切った胸はにわかに温かい喜びで満たされた。


だけど、それを周囲の奴らに悟られないように、私は必死にいつもの無表情を装い続けた。


* * *


時間はあっという間に過ぎ、やがて昼休みのチャイムが鳴り響いた。


私が何も食べるものを持っていないことに誰かが気づく前に、逃げ出すように席を立って教室のドアへと向かった。


だが、そのまさに同じ瞬間、背後から伸びてきた細い手が私の手首を掴んだ。


「ねえ、一緒にご飯食べよう!」


葵さんが弾んだ声を上げる。


弁当を買うお金なんてないから、いつも昼食は食べない。


だが、彼女の真っ直ぐな視線に押し切られ、私はついに折れてしまった。


「あ……うん、いいよ……」


混雑した食堂や、私を嘲笑ういじめっ子たちの視線を避けるため、私は彼女を校舎の隅にある非常階段へと連れて行った。


そこは普段、誰も来ない薄暗い場所だ。


コンクリートの階段に二人並んで腰を下ろすと、葵さんは嬉しそうに可愛らしい弁当箱を広げた。


そして、私の両手が完全に空っぽであることに気づき、怪訝そうに視線を向けてくる。


「あれ、お弁当は?」


「ないよ、見ての通り」


私は階段の下を見つめながら、ぽつりと言った。


「どうして?」


「君は本当に、俺のことを何も知らないんだね……」


私は彼女に視線を戻した。


その瞳には、自分の生い立ちそのもののような深い陰が差していた。


「俺はド貧乏なんだ。亡くなった兄の知り合いから譲り受けた家で、たった一人で暮らしている。飯を食う余裕なんてないんだよ」


私の告白を聞いた葵さんの瞳が、みるみるうちに潤み、深い同情と優しさで満たされていく。


「そっか……じゃあ、私のお弁当を分けてあげる!」


私が拒絶する間もなく、彼女はおかずの卵焼きを一つ、箸でつまみ上げた。


箸が一つしかないので、それをそのまま私の口元へと運んでくる。いわゆる「あーん」の体勢だ。


彼女の顔は終始真っ赤だったが、私は空腹に抗えず、深く考えずにその食事を口に運んだ。


美味しかった。


泣きそうになるくらい、温かい味がした。


食べ終えると、彼女はカバンからいちごミルクのパックを取り出して、私の手に握らせた。


「これ、あげる!」


そんな贅沢品、今までの人生で一度も口にしたことがない。


ストローを吸うと、暴力的なまでの甘さが口いっぱいに広がった。


私のいつもの陰鬱な表情から、自然と本物の笑顔がこぼれ落ちる。


「もしかしていちごミルク、初めて?」


「うん。買うお金がなかったから」


葵さんはすっかり困惑した様子で、自身の青い髪をかるくかいた。


「ねえ、今更だけど、家ではいつも何を食べてるの?」


「隣に住んでる兄の知り合いが、毎日ご飯を持ってきてくれるんだ。本当に困った時は、少しお金を借りることもあるし」


すると驚いたことに、葵さんの目から大粒の涙がポロポロと溢れ出した。


それは純粋な、私の環境に対する嬉し涙だった。


「なんていい人なの……!」


彼女はぐずぐずと鼻をすすりながら、他人のことのように喜んでいる。


「っ、ちょっと、なんで君が泣いてるの!?」


私は激しく慌てた。


制服の上着の下に着ていた、少しヨレたセーターの袖を引っ張り出し、彼女の濡れた頬を優しく拭った。


「ほら、もうすぐチャイムが鳴る。教室に戻ろう」


* * *


その後の授業はまるで嵐のように過ぎ去り、私たちは周囲の目を気にしながらも、ごく普通の生徒のように過ごした。


やがて放課後のチャイムが鳴ると、葵さんは私がどの地域に住んでいるのか尋ねてきた。


驚いたことに、家へ帰る方向が完全に一致していたのだ。


「誰かと一緒に下校するなんて、生まれて初めてだな」


私は並んで赤く染まった歩道を歩きながら、ふとそんな言葉を漏らした。


「本当に!?」


葵さんは、呆れと励ましが混ざったような複雑な顔で私を見上げた。


「煌くんの人生、切なすぎるよ……。よし、これから毎日一緒に帰ろう!その方が絶対楽しいって!」


「ねえ、一さん……俺たち、本当に……友達になれたのかな」


私が不安を口にすると、彼女はぴたりと足を止め、少し膨れっ面をして私を睨んだ。


「もうとっくに友達でしょ!」


胸の奥に、じわりと温かいものが広がっていく。


私の世界に、初めての『友達』ができた瞬間だった。


自然と、偽りのない本物の笑顔が浮かぶ。


「あ、ここ。俺の家」


私は、古びた小さな平屋の前で立ち止まり、彼女に手を振った。


「気をつけて帰ってね」


彼女の目は皿のように丸くなり、私の家と、私の顔を何度も何度も往復する。


「嘘……ここが煌くんの家!?ってことは……私のお兄ちゃんが言ってた、お兄さんの知り合いってこと!?!?」


「え……?」


今度は私が完全に呆気にとられる番だった。


「待って、待って……仁人ひとひとさんに、妹がいたの!?」


まさにその時、隣の家の木製の玄関ドアがガチャリと音を立てて開いた。


エプロン姿の仁人さんが外に出てきて、門扉の前に立つ私たちを見て足を止める。


「お、おかえり葵」


仁人さんはいつも通りの温かい男前の笑顔を浮かべ、私と葵を交互に指さした。


「おお!お前、俺が話してた隣の煌くんと会ったのか!」


葵と私は、完全に言葉を失ったまま、夕暮れの路地裏に立ち尽くしていた。


沈黙を破るように、私はコホンと咳払いをする。


「こんばんは、仁人さん……この前いただいた焼き鳥、すごく美味しかったです」


「ハハハ!ありがとう、煌くん!」


仁人さんは豪快に笑い、妹の肩をぽんと叩いた。


「また今度たくさん作って持っていくよ。それじゃ、夜飯の準備もあるし、妹を連れて帰るわ。またな!」


仁人さんに引っ張られながら、葵さんもいつの間にか満面の笑みに戻って、ちぎれるほど激しく手を振り返してくれた。


「また明日、学校でね!煌くん!」


遠ざかっていく彼女の後ろ姿を見つめながら、私は小さく呟いた。


いつも私の胸を重く圧迫していた灰色の塊が、ほんの少しだけ軽くなったような気がした。

第1章を読んでいただき、本当にありがとうございました。煌の灰色に閉ざされた孤独な世界に、葵の鮮やかな青色が突然飛び込んできたのは、二人の長い旅のほんの始まりに過ぎません。この甘くて思いがけない最初の出会いを楽しんでいただけていたら嬉しいです。ここから二人の関係がどのように育っていくのか、続きをお届けするのが今からとても楽しみです!

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