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悪役令嬢の願い  作者: なむそ


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4.わたしの、せい。




部屋に入って真っ先に見えたのは―――

ベッドに横たわり、静かに目を閉じているリサの姿だった。


「……リサ…?」


私はリサに近寄り、名前を呼んでしまう。

目の前のリサは、いつもの優しい笑顔で返事がない。


私はリサの胸に置いてある手を取る。

さっきまで確かに温もりのあったその手は―――冷たくなっていた。


私は、もう二度と…

その手が、私の手を握り返すことはないのだと―――分かってしまった。


「見たことのない症状です」

「急に倒れてしまって…」

「風邪だと本人は言っていたのですが…」


周りの大人はリサを囲いながら悲しそうにしている。


その中で…私と同じ銀色の髪をした男性が、目に入った。

ひと目で分かった。パパだ…。


「パパ…」


声が、思ったより小さかった。

それでも、私は必死に裾を引く。


「リサは…お空へ旅立ったの…?」


震える声で聞いた私を、

パパは、ただ一度だけ見下ろした。

―――初めて、パパと目が合った。


「…私はお前の父ではない」


そう言って、パパは私の小さな手を振り払った。


ガツン―――。

鈍器のような重いもので頭を殴られたみたいだった。

息が、胸の奥で詰まる。


「…そういえばリサはお前の乳母だったな」


父ではないと言ったその口で、

公爵は何事もなかったように話し続ける。


「ここ1年ずっと風邪を引いている、と報告を受けている」


近くにいる侍女や執事は公爵の言葉に賛同するかのように、頷いているのが見えた。


「母親だけでなく、乳母もお前のせいで死んだのか?」


「…なんでママも……?」


私の言葉に、公爵の表情がわずかに歪む。

それは悲しみではなく、何も知らない私への苛立ちだった。


「お前を産んだ後、エレノアは出血が多くて死んだ。

…つまりお前を産まなければ、そんなことは起きなかった」


―――知らなかった。

本当の事実を、今までリサでさえも教えてくれなかった。


「お前のせいで死んだんだ。…悪魔の子め」


追い打ちをかけるような公爵の言葉に、

私は声の出し方を忘れてしまった―――。


気づいたら私は自室のベッドにいた。

自分の足で戻ったのかすら覚えていない。


私は、父から愛されていなく、

ママとリサは……私のせいで死んでしまった。


その思いを胸に抱えたまま―――

私は、泣き方を忘れてしまった。




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