修学旅行といえば普通は男子が女子部屋に突撃しますよね
修学旅行の夜。
風呂に入り終え、自由時間になった同じ部屋の男子たちは女子部屋へ突撃していった。
度胸がない僕は一人残っていベッドにいたのだが……。
「あの、なんでいるんですかね? てか、距離感おかしいですよね!」
僕の隣には学校で大和撫子と呼ばれる美少女、黒宮 さつきさんがいた。
身長は僕より少し高いから165センチくらいだろう。
正しくは肩と肩が触れ合っている。
「まあまあ気にせず」
おっとりとした口調で優しく微笑む。
風呂上がりのせいか、色っぽいし。黒宮さんから良い匂いがする。
意識するな、と言われても無理だろう。
緊張で自分の顔が熱くなるのを感じた。僕には刺激が強すぎる。
状況を説明しようにも僕自身理解が追い付いていない。
彼女は突然部屋に入ってきたと思えば一言も口に出さず、迷わずに僕が使っているベッドに来て隣に座った。
僕が知っている黒宮さんは基本的に女子とは関わっているが、男子は寄せ付けない。
もちろん僕も同じでそれほど関りがあるわけではない。皆と同じくらいの距離感。
急に距離を詰めてくると誰が相手でも怖さを感じる。それが黒宮さん程の美少女でも、だ。
距離を取ろうと横にズレる。
が、黒宮さんはすぐに詰めてきた。
「やっと二人きりになれましたね」
終始笑顔で接してくる。
おかしい。普段は冷たいのに。僕を相手にこの笑顔。仲が良い女子相手ならまだしも、なにかあるに違いない。罰ゲームとか。
「ね、狙いはなんですか?」
「狙いですか?」
顎に人差し指を当て小首を傾げる。
「んーそうですね、狙いと言われましてもねえ。もう達成してますし」
「わかるように説明してください」
「部屋で二人っきりになることです」
僕の腕に自分の腕を絡ませ、大きな胸を押し付けてきた。
「ちょっ、む、胸!?」
「可愛い反応ですね、紅葉さん」
「も、紅葉さん!?」
「間違ってないですよね、秋田 紅葉さん」
「名前は間違ってはないけど呼び方!」
「だったら良いじゃないですか。私のことはさつき、と呼び捨て呼んでください。あと敬語は禁止です」
人の話を聞くタイプじゃない。会話が一方的だ。
「まあ欲を言えば、紅葉さんとイチャイチャしたいですね」
「そ、そういうのは好きな人同士が恋人になってやるものでしょ!」
「私は好きですよ、紅葉さん」
黒宮さんは赤く染まった頬に手を当て恥ずかしがっていた。
ま、まさかの告白!?
ストレートにとんでもないこと言ってきたよ。
「そ、そんなこと急に言われても……」
「ふふふっ。可愛いですね。私は紅葉さんを好きになりました。今の紅葉さんの気持ちは関係ありません。あとは私の手で籠絡するだけですから。安心してください。終わったときは私のこと好きになってますよ」
「ろ、籠絡!? な、なにを言ってるの!?」
「大丈夫です。この部屋には誰も来ません。今頃男子たちは先生たちに捕まってるでしょうし、女子たちも先生たちに捕まるリスクを背負ってまではやりませんよ。やったとしても紅葉さんの部屋に来るような人はいません」
絡んでいた腕が解放された次の瞬間、胸を押された。
ベッドに倒れた僕の上に黒宮さんが覆いかぶさる。
「さあ、夜は長いんですから。心配しなくても大丈夫。痛くしませんから」
「ちょ、ちょっと待って!」
「嫌ですよ。この時をどれだけ待ち望んだことか……もう我慢の限界です」
「だ、誰か、誰か助けてー!」
「ふふふっ、本当に紅葉さんは可愛いですね」
この後、黒宮さんに襲われた。