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死んだはずなのに...

全身が痛い。呼吸するたびに鈍い痛みが体に広がり、意識がぼんやりしている。だが、痛みを感じているということは——。


「おかしい…僕、確かに死んだはずなのに」


自分の声が、思っていた以上に弱々しく聞こえる。目を開けるのが怖かった。最後に見た光景は、夜の道路と車のヘッドライト。そしてそのすぐ後、激しい衝撃と共に意識が途絶えたのだ。


(母さん…父さん…ごめん)


胸が締めつけられ、目が熱くなる。懺悔の言葉が心の中でぐるぐると回る。だが、そんな感情を振り払うように、目の前に風が吹き抜けていく。肌に感じるその風は、生々しい温かさを持っていた。


「おはようございます!新規ユーザーさん、ようこそ~!」


突如、元気な声が頭上から響き渡る。びっくりして目を開けると、そこには鮮やかな色彩の服をまとった少女が立っていた。彼女の頭上には「NPC」という文字が、まるでゲーム画面のように浮かんでいる。


「え…?」


周囲を見渡すと、現実感が完全に崩壊する。上空には逆さまの街、そして横に流れる滝、緑色に燃える炎…。ありえない光景が次々と目に飛び込んでくる。


「う、嘘だろ…」


信じられない。目をこすってみるが、幻は消えない。むしろ、さらに現実味を増している。


「驚きますよね。最初は誰でもパニックになりますから、落ち着いてくださいね!」


その少女、いや「NPC」は無邪気に笑いながら、僕に近づいてくる。


「待って…これは夢だ、絶対に夢だ。だって僕…死んだはずなんだ」


頭を振りながら、必死に現実を拒否しようとするが、痛みも風の感覚もすべてがリアルだった。現実逃避している僕の前に、突然半透明の青いウィンドウが現れた。


『本日のスキルガチャを開始します』


「は?」


意味がわからない。何のガチャだ?


『ガチャ実行中…』


画面の文字が淡々と進む。


『結果:【究極料理スキルLv99】を獲得!』

『※このスキルは24時間後に再抽選されます』


「……究極、料理?何それ?」


完全に頭が追いつかない。混乱したまま、僕はその場に座り込む。


「さて、説明しますね!私の名前はアリス!あなたは確かに、元の世界で死にました。でも、たまたまこの世界のアップデート中に、システムのミスでこちらに転送されたんです!」


「…転送?アップデート?」


アリスと名乗るNPCは、まるで当たり前のことのように話し続ける。しかし、僕の頭の中は混乱が渦巻いている。


「簡単に言うと、この世界はバーチャルリアリティのようなものですが、バグがたくさんあるんです!いろいろなことが不安定で、例えばあっちの街も時々逆さまになったりしますし」


アリスが指さす方向を見ると、まさにその通り。空中に浮かぶ街は回転し、時折一部が崩れたり戻ったりしている。


「やばい、これ夢じゃないのか…」


僕は何度も頬を叩いてみる。痛い。やっぱり痛い。


「これが現実だなんて…信じられない」


目の前の世界が狂っているのは間違いない。しかし、それでも痛みや感触は確かに存在している。


「とりあえず、ここは危険なので、少し安全な場所に移動しましょう。次のアップデートであなたが消されちゃったら大変です!」


アリスが差し出した手に、僕は躊躇しながらも応じる。


「消される…って、どういうこと?」


「この世界はまだ不安定なので、バグやミスで消去されることがあるんです。だから、まずは安全な街に避難しましょう!」


不安だらけのまま、アリスの手を借りて立ち上がる。彼女に引っ張られるようにして、歪んだ風景の中を歩き始めた。

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