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私が魔王を倒しました。 とある書記官と5人の嘘つき勇者  作者: みさと
第五章 当千のマリス・天穹遍くヤディオルシガ
40/50

1話 カガヤキの魔法

 アシュリンは、今までの中で一番力強くそう言った。

 だが、キーヴァもヴィンスもピンときていなかった。


 なぜなら――


「マリスって……誰?」


 キーヴァの質問は、ヴィンスの内心と一致していた。

 アシュリンは、答えた。


「魔王軍の大参謀よ」

「え、魔王軍って参謀いたの⁉️」


 驚くキーヴァだったが、それはヴィンスも同じだった。

 魔王が存在していることは、いくつもの証言で裏付けられている。

 しかし、参謀がいるという話は今まで一度も出てきたことが無かった。

 文献などで出てくるのは精々将軍まで――

 アシュリンのこの発言は、とても衝撃的なものだった。


「アリ・マリス・フィア。別名、当千のマリス、百魔法のマリス、輝きのマリス――魔族の中では結構有名な存在なのよ」

「ぜんっぜん、聞いたことない」

「あなた達からしたらそうでしょうね。マリスは殆ど表に出てこないわ。いつも魔王を盾にして、陰険な策と魔法、呪いを作ることにお熱なのだから」

「で、そいつが今回のノア爆殺に関わってるってこと?」

「ええ、そうよ」

「言ってること矛盾してない? そのマリスって奴は、表に出てこないんでしょ? なんであんたがそれに気づいたのよ。他の魔族の可能性だってあるんじゃない?」


 キーヴァの指摘は冴えていた。


 魔王の参謀が事件に絡んでいる――


 という読みは、魔王が倒されたという事象に引きずられ過ぎているからだ。


 そして、キーヴァが指摘した通り、引きこもりな魔族が、今回表立って動いてる理由が分からない。

 今のところ、アシュリンの推理は穴だらけだとヴィンスは思った。

 だが、アシュリンは力強くそれを否定した。


「その可能性は全く無いわね」

「へぇ、そんなに言い切るなら証拠を言いなさいよ」

「証拠は魔法――カガヤキの魔法よ」

「カガヤキのまほう……?」


 キーヴァが復唱したように、ヴィンスもその名前を初めて聞いた。


「カガヤキの魔法は強力な時限爆発魔法よ。この魔法は他の時限爆発魔法と違って、相手の心象変化、行動を爆発条件に設定できるの――何となく察せないかしら?」


 アシュリンの問いかけに、ヴィンスは思わず口が開いた。


「ノアが言っていた『勇者ではない』って……」

「そう――その言葉が、カガヤキの魔法の発動条件だったのよ」

「ぐ、偶然じゃない……?」


 キーヴァはまだ信じられない様子だった。


「でも、あなた達は二回見ているのよ、カガヤキの魔法が発動する瞬間を――」


 キーヴァはハッとした。


「……アイゼンハウアー」


 アシュリンは、静かに頷いた。


「そう、あの時の爆発もカガヤキの魔法なのよ――あの時から、全てが始まっていたの」


 確かに、アイゼンハウアーが爆発して死んだ時、『勇者ではない』と言った可能性はあるだろう。


 それに、同じ事件の中で、同じ死に方をしている人物が二人――


 これは少し、アシュリンの推理が当たっている可能性が出てきている。


 だが、それでもまだ弱いとヴィンスは思った。

 なぜなら、アイゼンハウアーが爆発した時の状況は、解明されていないからだ。


「で、でも……アイゼンハウアーが『勇者ではない』って言ったかどうかは分からないでしょ? それじゃやっぱり、まだ偶然って可能性も……」

「でも、マリスが介入しているって話は、少し信じれたでしょ?」

「ま、まぁね」


「うん、それだけでいいわ。重要な話はここからなのだから」


「……え?」

「マリスが介入しているってことは、あることが確定しているのよ。あの鳥頭はね、保険をつけるのが大好きなの。例え何があっても自分が不利にならない、強力な保険を用意することがね――」


 そう語るアシュリンはとても感情的に見えた。

 ここまで饒舌になっているアシュリンを見るのは、会ってから初めてのことである。


「保険って……どんなものを用意しているの?」


 キーヴァの問いに、アシュリンは静かに――それでいて、ハッキリと言った。


「天穹遍くヤディオルシガ――あなた達が『魔王』と呼んでいる存在が、マリスと行動しているわ」

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