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1話 影が動き出す

 ヴィンスは報告書に署名をし、王都への報告を兵士に頼んだ。


「あースッキリ‼️ ざまぁ見やがれ‼️」


 キーヴァのその喜びようは相当なものだった。

 顎で命令されたのが本当に、相当に癪に障っていたようだ。

 それとなにより、感謝を伝えないといけない相手がいる。


「協力ありがとう、アシュリン」


 そう言うと、ヴィンスの影からアシュリンが現れた。


「まったく……ぐうの音が出ないほどヘコませたいからって、魔族の私にこんなことさせるとはね」


 アシュリンは窓に近づき、木にとまっていた鳥の頭を優しく撫でた。

 そう、遠視の魔法を見せていたこの鳥も、水晶に映し出してみせたのも、アシュリンが全てやっていたのだ。

 本当に感謝だけでは足りていない。


「報酬も用意するよ」

「人間と同じ価値観だと思わないでほしいわね。何もいらないわよ」

「そうか」

「そうよ」


 アシュリンは一度もこちらを見ずに鳥を撫でていた。

 依頼された仕事はこなしたのだから、もう関係ない。

 そういう態度にヴィンスは見えた。


 ――まぁ、そりゃそうか。


 割り切り方も魔族らしい、そうヴィンスは思った。


「で、お兄ちゃん。この後はどうするの?」


 我に返ったキーヴァがヴィンスに問うた。


「当然、次の『勇者』のところに行ってまた調査だよ。お前も一緒にな」

「だ、だよねー……知ってた知ってた」


 キーヴァも『勇者』を名乗っていた。

 だが、それは報酬目当ての嘘であり、妹のような存在のキーヴァを犯罪者にして投獄するのは忍びないと思い、ヴィンスは罪滅ぼしのためにこの『勇者』探しを手伝わせているのだ。


「あいつの尋問とかは、お兄ちゃんはしないの?」


 と、キーヴァは窓外を指さした。

 そこには両手を縄で縛られ、荷車に押し込められているアイゼンハウアーの姿があった。


「あれの尋問は王都の教会がやってくれる。『勇者』と偽り、民衆と国を混乱させた犯罪者としてな」


 ヴィンスは含みを持った視線をキーヴァに送った。


 ――お前も、こうなりたくないだろう?


 そういう意味に、キーヴァは見えた。


「そ、それでさー次はどこに行くのー?」


 ――気まずくて話を変えたな。


 ヴィンスは資料を取り出しい、少し思案した

 残りはノア・ウィリアムズとエーデル・クラーク、ギアロイド・サリバン。

 この中に本物の『勇者』がいる。


 ――こっから先は少し慎重になっておくべきか?

 ――いや、もうそろそろ絞りに行っても良い頃合いか?


 まだまだ考えることが多いことにヴィンスは気付いた。

 やはり、この仕事は一筋縄ではいかなそうだ。


「それじゃ、私はそろそろ帰らせてもらうから」


 アシュリンはそう言って部屋を出ていこうとした。


「あ、外まで送らせてくれ」

「いいわよ」

「それくらいはさせてくれ」

「感謝の印ってやつ?」

「そうだ」

「迷惑ね」

「それでも行かせてくれ」

「……そう」


 アシュリンは、ヴィンスが絶対に譲らないことを悟り、諦めたようだった。


 ――これでお別れか。


 そうヴィンスが思った。




 刹那。


 部屋に閃光が差し込む。


 間髪入れず、炸裂音が聞こえてくる。


 塔が激しく揺れた。


 窓の外から――


 塔の外からだ――


 ヴィンスは急いで窓を明け、外を見る。


 煙が見えた。


 燃えているのは――


 荷車だ――


 アイゼンハウアーを乗せていた荷車だ――


 一体何が――




「失礼します」


 部屋に兵士が入ってきた。

 その顔は、明らかに狼狽していた。


「報告します。アイゼンハウアーが死亡しました」

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