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私が魔王を倒しました。 とある書記官と5人の嘘つき勇者  作者: みさと
第三章 軽口のアイゼンハウアー
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17話 地図の盲点

 アイゼンハウアーの首元にナイフが突きつけられる。

 ナイフを握っていたのは、キーヴァだった。

 

 ――さっきまでドアの前にいたじゃねーか‼️


 きっとアイゼンハウアーはそう思っているだろう。

 これが、キーヴァの使う『魔法』である。


「おいおい、『勇者』様にこんなことしていいと思ってるのか……?」

「安心しろ、お前は『勇者』ではない」


 対面に座るヴィンスは姿勢を崩し、足を組んだ。

 先程までの改まった様子はどこかへ消えていた。


「……さっきまでと随分態度が違うじゃねーか、副書記官」

「ただのゴロツキ相手に態度もクソもないだろ?」

「へぇ、そこまで言うのか。まさか『勇者』ではない証拠でも手に入れたのか?」

「そうだ」


 アイゼンハウアーが大声で笑った。

 その声はきっと、トバカリー城塞の外まで聞こえただろう。

 キーヴァが握ったナイフに力を入れようとするが、ヴィンスが手で制止した。


「すまんすまん。あまりにもおかしくてな。それじゃ見せてくれよ、その証拠ってやつを」

「お前の主張を確認する」


 ヴィンスはテーブルの上に置かれた資料を指差し説明を始めた。


「バリーナ城塞から魔族領に入り、コロ平原、タウラ丘を抜け、魔王城のあるスイゴに着いた。

 コロ平原からタウラ丘は三〇キロ、タウラ丘からスイゴまでは二七キロ、おおよそ二週間の旅程……そうだな?」

「まさか、数字が違うとか言うんじゃないだろうな?」

「ああ、その通りだ」


 再び、アイゼンハウアーは笑い、丁寧な口調で言った。


「残念ですが副書記官、それは正確な数字なんですよ。もしも、どこかの魔族に聞いているのならば、完全に騙されていますよ? 私が提出した数字は完全に、完璧で、正しい数字です」


 自信満々。余裕たっぷり。

 餌に釣られ、まんまと引っかかった獲物に、真実を伝えてやろうという最大級の上から目線だった。

 完全に、出し抜いてやった。

 そう、アイゼンハウアーは思っただろう。


 だが、ヴィンスはそれを鼻で笑った。


「残念なのはお前の頭だな、アイゼンハウアー」

「安い挑発ですねぇ」

「俺はまだ数字が間違っているとしか言ってないぞ」


 ヴィンスは、一枚の紙をテーブルの上に置いた。

 それは、アイゼンハウアーの証言を元に作成した地図だった。


「コロ平原からタウラ丘は三〇キロ、タウラ丘からスイゴまでは二七キロ。これが間違った数字ではないことは、俺も確認済みだ」

「じゃぁ、私の証言も説明も正しいということですよね?」

「証言は正しかったが、説明は間違っていたな」

「は?」

「コロ平原からタウラ丘は三〇キロ、タウラ丘からスイゴまでは二七キロ。これは直線上の数字だろ?」

「……何言ってんだお前」

「お前は地図の盲点に陥ったんだよ」


 その意味の分からない指摘にアイゼンハウアーは顔を歪めた。

 イラついているようだ。


 ヴィンスは地図のある場所を指さした。


 それは、タウラ丘。


「タウラ丘からスイゴへ、お前はどうやって向かったんだ?」

「そりゃ当然歩いてだよ」

「ギル山脈って知っているか?」

「しらねーよ」

「タウラ丘とスイゴの間を横切る六〇〇〇メートル級の山脈だよ」


 アイゼンハウアーの顔色は明らかに変わった。

 ヴィンスは姿勢を前傾姿勢に直し、アイゼンハウアーに問うた。


「なぁ、お前は二週間で魔族領から帰って来たんだよな? 登るのに十日もかかる山道を、どうやって二週間内で行き来したんだ?」

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