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私が魔王を倒しました。 とある書記官と5人の嘘つき勇者  作者: みさと
第三章 軽口のアイゼンハウアー
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14話 魔族よりも悪い人間

 まるで時が止まったかのように、辺りは静まり返った。

 無理も無いと思う。


「あー……悪いんだけど、もう一回説明してくれるかしら?」


 アシュリンの声は、明らかに困惑しているようだった。

 顔を見なくても分かるほどに。


「つまり、お前が迷わせていた人間は、俺が用意していたってことさ。そして、迷って出てきた人間の数や状態を事細かに報告させ、ここを根城にしているアシュリンという魔族はかなり善良だということを裏付ける資料を作っていたってわけさ」


 一体何こんな資料が何の役に立つというのか。


 誰しもがそういう疑問を持つことだろう。

 実際、ヴィンスもこの提案を枢密院に出した時、多くの人々から言われた言葉だった。


 しかし、この資料の制作には地味ながら大きな意味が存在した。


 王都と魔族の睨み合いは既に一千年近く続いており、一体何が発端だったのか覚えている人も、書かれていた資料も消え失しているほどだった。

 結果、時に大戦に発展し、時に休戦し、はたまた睨み合いが続き……と、この日常は終わらないのだと大半の人々が諦めていた。

 そうなると、政治は簡単だ。

 常に警戒をし、兵士を育成し、配置すればいいのだから。


 しかし、住民たちはそうもいかない。


 いつ来るかも分からない戦火に怯えながら、常に逃げる準備をして過ごす――


 そんなこと、いつまでも出来ると思うか?


 多くの人々は明日の生活を考えるので手一杯だし、仕事以外に気を配れるほど余裕がない。


 そこで、彼らに変わって、安全な避難場所を調査するために行っていたのが、このボイル峡谷近辺で起きていた一連の迷惑騒動ということなのだ。


 とはいえ、魔王が倒されたらしい今では、無用の長物になったわけだが――

 まぁ、役に立ったので良しとしよう。


「最低だよお兄ちゃん……」


 後ろからキーヴァの呆れた声が聞こえてきた。

 冒険者や勇者一行を実験台にしていたわけなので、その通りである。


「……あなただったわけね。私の仕事を増やしていた張本人は……」


 霧の中から聞こえてくるアシュリンの声も、呆れているようだった。


「憎いか?」

「今のところ二番目くらいかしら」


 あれ、結構高いな。


「だが、お前が優しい魔族だという証明はこれで十分だろ?」

「……気持ち悪いから止めてくれるそれ」

「手伝ってくれるならな」

「……分かったわよ。手伝って上げる」


 その声と同時に、霧がゆっくりと晴れ始めた。

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