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私が魔王を倒しました。 とある書記官と5人の嘘つき勇者  作者: みさと
第三章 軽口のアイゼンハウアー
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10話 霧の中を探して

 掴んだ首を激しく振るキーヴァ。

 ヴィンスの頭は激しく揺れている。

 残像が見えるくらいに。


「なに測ってない距離勝手に想像で決めてんの‼ そんなの正式に採用するな‼」


 首を激しく揺らされながら、ヴィンスはキーヴァに同意していた。


 とっても。

 激しく。

 でも、そろそろ。

 止めてくれないと吐いちゃう。

 

 そんなこんなで、やっと、キーヴァが手を離してくれた。


「あー……死ぬ……」

「そんな簡単に人間は死なないから」

「俺の身体でそれを証明するのはやめてくれ」


 意識が定まり、ヴィンスは再び喋りだした。


「要するにだ、アイゼンハウアーは俺たち枢密院の常識を『逆手』に取ったんだよ。しかも、これの嫌らしいところは、逆手に取られたと気づいたとしても、調べようがないってところだ。なんせ答えは戦争相手の領内なんだからな」


 そんなところを、すみません距離図らせて下さい、えへへ。

 なんて言って入らせて貰える訳はない。


「じゃあ、ひっくり返すなんて到底無理ってことじゃん。

 結局ここに来た理由はなんなの?」

「正確な距離を知るために来た―――

 いや、正確な距離を知っているものを探しに来た、が正しいか」


 そう、これが本来の目的。

 分からないなら聞けばいい。単純明快な答えである。


「ここにその距離を知ってる人がいるの?」

「ああ、いる。会えるかどうかは分からんがな」


 いや、確実に会える。

 ただし、問題なのはその後だ―――


「まぁ……こんだけ濃い霧だ。遭難や事故を防止するために待機役と探索役でわけてもいいな」

「どっちが待機役?」


 キーヴァはヴィンスに問うた。


「お前」

「えーやだー、暇じゃーん」

「だったら、誰を探してるのか分かるのかよ」

「教えてくれれば探してくるよ?」

「どうせ覚えれないだろ」


 すかさずキーヴァはヴィンスの首を掴んだ。


「どういう意味?」

「なんでもありません……」


 キーヴァをなんとか宥め、ヴィンスはやっと開放された。

 まだ少し首が痛い。

 どうやら2人で入るしか無いようだ。

 ヴィンスは諦めたように、キーヴァに手を差し出した。


「それじゃ……ほら」


 キーヴァはその手をキョトンと見つめていた。


「……どしたの?」

「いや、手を繋ぐ」


 キーヴァは何かを察したのか、呆れた顔をした。


「まさか、それで遭難防止とか言わないよね……?」

「少しは賢くなったな。その通りだ」

「わぁ、画期的ぃ」


 明らかに馬鹿にしているような言い方だった。


「嫌ならここで待ってろ」

「もう……冗談じゃん」


 そういうと、キーヴァはヴィンスの腕に、手を回した。

 それはいわゆる、ラブラブなカップルが町中を並んで歩く時にやっているような。

 そんな手の回し方だった。


「……歩きづらいんだが」

「お互い様でしょー」


 一方のキーヴァはご満悦のようだ。

 何故そんなに楽しいのだろうか。ヴィンスには分からなかった。

 だが、どうにも離れてくれないようなので、このままボイル峡谷に入ることにした。

 何故なら、日は既に傾き始めていたからだ。

 さっさとボイル峡谷に入って、協力者を見つけなければ―――

 ヴィンスは改めて覚悟を決め、ボイル峡谷の濃い霧の中へと足を進めた。

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