憧れだった人へ
どうして
大切な人が亡くなっても
僕は生き続けなきゃいけないのか
わからない
生きてる意味って
なんだろうね
そちらでの暮らしはどうですか?
バイクでの交通事故があった27歳のときから
君の住む環境は
ガラリと変わってしまいました
お元気ですか?
もう
十年も前の話
だけど
昨日のことのように
鮮明に覚えている
別れはね
死別だけとは
限らないって、
そんなことを言っていたくせに
なんなのさ
もう二度と会うことはない
子どもの頃から
君の背中ばかりを追いかけていて
追いつくと思ったら
少し前を
着かず離れず
走っていく君は
僕の憧れだったよ
生きていたら
何をしたんだろう
今の世の中の
地球規模の災害や海洋生物の異変、異常気象のような暑さを
どう思っただろう
それでも
君は多くの人と手を取って
生きていくんだろう
僕とは違う
まるで違うんだ
僕には何も無い
やりたいことも
してきたことも
大したことはない
だけど
君は立派だった
多くの人に囲まれて
常に賑やかで愉しげなのが
羨ましかった
ねえ
そっちとこっち
交換しないか
君が変わりに
この世界を生きてよ
僕が
そっちに行くからさ
そしたら
君はいう
いいけど
怖くないのかいって
それに
こっちに来たら
2度と戻れないけど
それでもいいのかい
そんなに急ぐことはないだろう
それとも、あれか
生きてるのが嫌にでもなったか
死ぬのが怖くないのかい
ああ、そうさ
怖くなんかないし
この世界より
そっちの世界の方が楽しいんでしょ?
だって、十年経っても
いつまで経っても
戻ってきやしない
よっぽど
楽しいからだろう
何を馬鹿なことを
そんなわけないから
好き好んで
来るところじゃない
いま、やれることをしたほうがよっぽどいいよ
そうかなあ
そうだよ
それに
あなたがこっちに来たとして
残された人たちは
どう思う
本当に
それでいいのかい
君が真剣な眼差しで
尋ねて来るものだから
僕はようやく
気づいたよ
...やっぱり、怖い
死にたくないよ
だろ?
それでいいんだよ
そのうち
会える日まで
待っているからさ
そっちはそっちで頑張れよ
こっちは、こっちで大切な人と
素敵な時間を過ごしながら
のんびり気長に待ってるよ
だから
僕と君は会えないよ
夢でも見れば別だけど
君のことを、他のみんなが忘れないように
よろしく伝えておくからね
ずっと、ずっと
ここに君がいたことを、
語り継ぐよ
それが僕が生きる意味
生きなきゃいけない
だから、
やっぱり、そっちに行くのはやめるね
だって
怖いから
君を忘れないためなんだ
時々、淋しくなるけれど
もう、死ぬのが怖くないなんて
言わないよ
生きていないとできないことが
あるって僕はわかったから




