1-1 幽世で嗤う銀木犀
裏表のない人間はいない
その差が薄いだけで
ふたりは幸せなキスをして、終了。
酷くありきたりな、使い古された、いかにも王道的な終わり。アニメや映画なら暗転してエンドロールが流れる奴。
沈みかけの太陽が放つ輝きが、彼女を幻想的に照らす。対する俺は、今世紀最大のアホ面を引っ提げたまま、音もなく流れる涙は実在するのだという事実に震えるだけで。
「……レモンだとか煙草だとか、嘘ばっかり。味なんて分っかんないよ」
そよ風が目前の彼女を、泣いている彼女だけを撫でる。ふわりと広がる弁柄色の頭髪、モナ・リザを彷彿させる和らいだ頬。そうして、彼女は両手を後ろに組んで悪戯に踵を返した。
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血の色を忘れて二年目の春。気怠さを引き摺って校門を潜り、大きな足音で階段を登っていく。無駄に長く感じる教室までの道程は、それだけで回れ右をしたくなる有様だが、根気よく歩いて建付けの悪い扉へ。
誰よりも先に出迎えたのは、席に反射する光。夢見の続きは意地でもさせてくれない様子。
朝の日差しをたっぷり含んだ俺の席を、四月の風とカーテンとが撫でる。それで熱さが冷めるなら、どれほどマシか。
熱を帯びた席に座り、頬杖を突く。無理に人間を座らせるより、ここで野菜を育てた方がよっぽど社会の為になるのではないだろうか。
開いていた窓から運ばれる、微かな桜の香り。視線の先にある青と白、ついでにピンクの花弁が、脳裏に懐かしいシルエットを浮かばせる。小学五年のちょうど今頃。春といえば桜だろうのに、イカリソウという少し変わった形の花を贈って転校した、親友を。
そう言えば、青い鳥について考え始めたのも、あいつが消えてすぐの頃だった。
「…………」
幸せは掴めないのが当たり前で、“生きてる事”で妥協しとけって話。
就寝前の子供に読み聞かせる話としては、些か夢がなさすぎる。
「よっ、賭」
元気そうで馴れ馴れしい男の声に、一瞥もくれず繰り出す生返事。
一累賭。今にして思えば、両親は随分と的確で洒落た名付けをしたのだと思う。
前提として。人間はいつ死ぬか分からない。早くからそれを理解していた俺は、大それた幸福ではなく、ちっぽけな幸運を集める事にこそ心血を注ぎ。そして、腐敗した。
「賭がなに考えてるか当てたろか」
「なぜ人間は葉緑体を持たないのか」
「アホ抜かすな。まあ待て。外したら百円でどうや?」
日脚の財布から出た、眩い銀の輝き。即ち、目先の幸福。
────得られるモノがあるなら、手を伸ばしてもいい。勝負師とはそういうものだ。
「賭けは成立した。聞かせて貰おうか」
日脚の方に顔を向ける。目に入ったのは、ひそめた眉とトレードマークである赤い短髪の輝き。
賭けの答えが繰り出されたのは数秒の唸りを経てからだった。
「はよ帰りたい。せやろ」
「惜しい。それは少し前」
百円玉を搔っ攫って緩む頬。その使い道を考えていた矢先、日脚が聞く。
「で、何を考えとった?」
「…………考えても仕方ない事」
返って来る生返事。沈黙で目立つ教室の騒音。予鈴が鳴り、担任教諭の山田が入って来て、クラスのみんなが席に着く。騒がしさはそのままで。
「そういえばあの話、聞いたか?」
隣の席で座る日脚に冷たく「知らん」と返す。噂などくだらない。出自不明の、尾びれ背びれが無限に付いて来る、聞くに値しない話。そんなものに使える瞬間があるなんて、世の人間はよほど時間が有り余っているらしい。
「うちの学校に転校生が来るっちゅう話。金持ちな上にすっげえ美少女らしいで」
聞いてもいない噂の詳細を語り始める日脚。
金持ち、美女、らしい。ほら見たことか。
名前もまともに分からない人物の容姿と資産状況だけが判明しているのはおかしい。どうしてこんな簡単な事に気付かないのか。「らしい」など、世界一信憑性のない言葉尻を出されては、いよいよこちらも冷笑せざるを得ない。たとえそれが中学からの腐れ縁の友としても、だ。
「五百円賭けてもいい。転校生の正体はイケボの成人男性」
というか、そっちの方が絵的に面白い。
「降りるなら今のうちやぞ?」
互いに下がらず。賭けは成立した。
「ハッ、吠えろ。大穴は勝敗を気持ちよくする為にあんだよ」
引き気味の日脚に、俺はポケットから取り出した五百円玉を指で遊ばせながら笑って見せる。
どうせ見るなら、地獄絵図。勝手な期待を裏切られ、阿鼻叫喚の男ども。
どうせ聞くなら、恨み節。ありきたりな歓声より、手前勝手な欲に塗れて沈んでいく怨嗟の叫び。
他の誰でもなく、ただ。俺が見たいのだ、俺は聴きたいのだ。それを。
山田が手を叩いて俺たち生徒の注目を集める。訪れる静寂。
「はーい。今日からみんなと一緒に学園生活を共にする転校生を紹介します」
刹那。静まったばかりの教室が騒がしさを取り戻し、山田は先ほどと同じように手を叩く。より強く。少し苛立った声で。一分ほどの時を経て、山田が扉の向こうにいるらしい転校生に声を掛ける。
「青木さん、入って」
しかし扉は開かずのまま。開かれる筈が、大きな音を立てて止まる。うんともすんとも言わない扉。俺を含めるクラス全体の心配が積もっていく。
「えっ、あれ?」
「────」
鼓膜が揺れ、脳が告げる。美少女だ。
建付けの悪い扉。その向こうで困惑する女子生徒の声ひとつで、消え失せた眠気。天で煌めく金の輝きを、日脚が握りしめて笑う。
「ごっそさん」
「待てよ兄弟。美少女ボイスの成人男性である可能性が、微粒子レベルで存在するだろう? 声の主を俺たちが実際に観測するまでは、扉の向こうの人物は女であって、男なんだ」
慣れた手つきで財布からすぐ取り出した追加の五百円玉を握らせ、日脚に話す。視線はまっすぐ扉に一点張り。山田が扉を直す姿を眺めながら、ただ賭けの結果だけを。汗と共に、ただ天命を待つ。
「失礼します」
改めて、入ってくる。埃っぽい教室に似合わない透き通った声と乳。顔でも、髪でも、腕でもなく。いの一番に先行してきた胸。胸筋と呼ぶには稍やわすぎるその初期微動を観測する。遅れて現れる全身。女子にしてはやや高めの身長。きっと、声の良さなどもう誰の脳にも残っていないだろう。僅かに残っていた男である可能性は完全に潰えた。
「……持ってけ泥棒」
何かを探しているのか、緊張しているのか。ともあれ、常盤色の大きな瞳が少しの間キョロキョロ、キョロキョロ、教室中を右往左往。瞬間、向けられる熱い視線と確かな微笑み。
「──────あいつと、」
脳が揺らぐ。気合で振り切る。馬鹿げた思想。
教卓にゆっくり近付く靴音ですら、どこか心地よく。踏み進む汚い床が木琴にすら見えてくる。
弁柄色の頭髪。遠目で見てもよく分かるきめ細やかな白い肌。制服の上からでも分かる、見た者を例外なく錯乱させる体つきは、従姉で三つも年上のつば姉にも負けず劣らずのポテンシャル。
姿勢や立ち振る舞いから窺える育ちの良さ。全身から自然と醸し出されているその清楚な雰囲気はさながら、マイナスイオンの擬人化を彷彿とさせた。
「じゃ、フルネームと一分スピーチよろしく」
「へっ? いやいや、聞いてないですよ!?」
転校生が首を横に振って山田に返す。見た目とは裏腹に、ややオーバー気味なモーション。気にする者はいない。わざわざ言うまでもないが、それでもあえて語らせていただくと、教室中が釘付けなのだ。リアクションの裏で、確かに揺れる果実に。
人が死ぬ。今月中に、何人か。日脚と賭けをしなければ。
「言ってないからね」
ニヤついた山田の笑顔。頬を染める転校生。
…………こういう奴がいるから。と、喉元まで出掛かった言葉に気付き、握り拳に別れを告げた。
お前の出番はない。もう、どこにも。
「黒板とチョーク使っていいですか?」
勝手にむかっ腹を立てる俺などいざ知らず、転校生は頭を切り替える。山田の許可と同時に緩んだ頬の赤はすっかり元通り。手慣れた動きですらりと名前を書いていく。窓際の最後列にいる俺からでもはっきり分かる、非常に読みやすくて綺麗な文字。恐らくは校内で一番美しいだろう字の筆跡から、住む世界の違う才女である事は明白だ。
山田がポケットから取り出したタイマーを合図に、彼女は話し始めた。
「初めまして、青木杏です。今日の日付と同じ誕生花はアンズ・モモ・ケマンソウ・ネメシアと多々ありますが、青い木にその杏と書いて青木杏」
震えひとつない落ち着いた声色、聞き取りやすい語り口。先ほどまでガチガチに緊張していた人物とは到底思えない。ふと脳裏に日脚の言っていた噂が浮かぶ。
少なくとも美女であるのは間違いない。金持ちってのも当たらずと雖も遠からずなのか?
「好きな物はお花、嫌いなものはピーマン……」
ピーマン嫌いね。意外と子供っぽい一面も────。
「の、花言葉です!」
ごめん、それは想定外。
なに急に? 花言葉? 花言葉に好きとか嫌いとかある? ねえよ。ないって言ってくれ。どこに怒りの矛先向けりゃいいんだよ。
「ピーマンの花って白くてちっこくて、それはもう可愛いんですけど、皆さん知ってますか?」
脳内のツッコミとシンクロするように騒めく教室。挙手する数名の生徒。先ほどまで醸し出していた清楚な雰囲気から一変、感情たっぷりの語りで続くスピーチ。
「あ、ご丁寧にありがとうございます。ピーマンって野菜じゃないですか、思いっ切り大地に根ぇ張って育ってる訳じゃないですか? でも! …………花言葉は『海の恵み』なんですよ。何それ、意味分かんなくないですか! 脳みそバグるじゃないですか!?」
あくまで可愛らしさを保ったまま、独特のアクセントで強調された言葉尻。教室中から笑いが零れる。彼女の後ろでずっと沈黙を貫いていた山田でさえも、失笑している有様。
教室中が、青木杏に飲み込まれる。たったひとりに、支配される。
「だから嫌なんですよね。……まあとにかく、本日からよろしくお願いします。ご清聴ありがとうございました」
丁寧なお辞儀と同時、刻限を告げるタイマー。感嘆を混じえた「ジャスト」という山田の呟き。誰に促されるまでもなく、自然に溢れた拍手喝采。可愛らしい笑顔と両手で握り拳を作るポーズを浮かべ、静かに喜ぶ青木さん。
計算か、天性か、あるいは日々の賜物か。噛みも詰まりもしない言葉、親しみやすさを覚えさせるオーバーリアクション、絶妙な間の使い方、知識からオチにまで繋がる好きなもの、徹底した時間厳守。
ウィットに富んだ、聞き手を強く意識しなければ出来ない構成。
それを、即興で。
美しい。『偶然の産物』と呼ぶのは、論理的に考えて、些か無理がある。
「席は賭んとこの…………えっと」
山田の話を無視して歩み始める青木さん。口角を上げ、靴音を鳴らし、まっすぐこちらに微笑んで。山田の話など、最初から耳に入っていない様子。ふわりと香る、柔らかく穏やかな甘さ。
「────」
俺はこのいい匂いを、この花の香りをよく知っている。間違える筈がない。
香りや姿かたちを楽しむために観賞用として庭や鉢植えに植えられる樹木、花木。その花木の中で特に香りが美しいとされる三大香木のひとつであり、何より個人的に思い入れがある花だから。
花の名は、金木犀。
オレンジ色の小さな花びらと、濃い色をした大きな葉っぱのコントラストが実に鮮やかな、縁起の良い香木。橙色なのに金なのは、きっと白い花を咲かせる銀木犀と対比してこちらを金色に見立てたのだろう。
金木犀の匂いがすぐ鼻孔を突き抜け、どうしようもなく脳が揺さぶられる。が、そんな事はこの心地よい匂いをほのかに香らせている彼女自身、知った事ではないだろうけれど。
山田のどうでもいい話が、いつも以上に入って来ない。ちょうど前の席に座る青木さんの観察を続ける。
意外と座高は低めで、座っていれば他の女子と大差ない身長。姿勢の良さと人の話を聞く態度から察するにやはり、間違いなく、育ちは良い。
青木さんの頭がピクリと動く。何事だと思ったのも束の間、青木さんは教室が騒がしくなった頃合いを見て、こちらへ振り返って言った。
「ごめん、賭くん。前、見える?」
長い髪を揺らしながら、差し向けられた問い。田舎の空気よりも澄んだ息と、ただ鼓膜を揺らすだけで不思議と安らぎを与えてくれる声音。声帯にペパーミントでも貼り付けているのか、いちいち中枢神経を擽る青木さんの吐息は何の誇張もなく、清涼感の塊と呼べる。
質問の意図より先に気付く、チラリと見えたうなじの美しさと、顔面偏差値の高さ。近くにいるだけで漂ってくる圧倒的な包容力で脳みそがロクに回せず、俺は間抜けな生返事しか返せない。
窓の方からちょうど風が吹く。長い髪が目に入らないようにする為か、青木さんは自分の髪をすぐ耳に掛ける。露になるこめかみと一連の所作にどことなく色気を感じ、パブロフの犬の如く目を逸らした。
「じょ、丈夫っす」
愛らしいたぬき顔、瞳孔の奥にある煌めきを秘めたタレ目、転校初日で緊張しているからなのかほんのり赤い頬。乳牛を連想させるたわわな実りは本当に同世代なのか疑わしい。
昔の制服を無理やり着させられた若妻だと言われれば誰もが納得するだろう。
それも新婚ほかほかで口を開けば旦那の惚気が息をするように出るタイプ。
「ジョブス? スティーブ・ジョブズ?」
おまけに天然ときた。なんてこった、疑問符を浮かべる姿すら可愛い。直視は危険だ、意識するな、されど鼻孔が邪魔をする。視覚と違って嗅覚だけはどうやっても防げないのだ。
咳払いをひとつして「じゃなくて、大丈夫」と添える訂正。青木さんはホッと胸を撫で下ろしながら言葉を続ける。
「目ぇ、悪いの? ゲームやり過ぎ?」
「ファーストコンタクトが偏見に満ちた会話なんですが」
「あぁ、目だけに!」
「うるせえ前見ろ」
俺の眼鏡(伊達だが)を見るなり、阿吽の呼吸で返してくる青木さんに素が出て、和らぐ緊張。思考速度が落ち着きを取り戻す。
山田から先頭列の生徒たちに配布物が配られる。前の席から次々と薄っぺらいプリントが回され、とうとう自分の所にも来るその時。
「────」
青木さんは右手で渡そうとしたプリント止め、左手に持ち替える。
右手の調子が悪いのか?
思考に耽っている間にプリントがこちらへ渡されそうになった瞬間、プリントを今度は右手に持ち替えた。それを二、三回繰り返すと青木さんはこちらに微笑んで言う。
「これ欲しい? 二十個もあるの」
「一個しかねえよ。リトルマーメイド好きなの分かったからさっさと回して?」
「何言ってるの一枚だよ?」
血の色を思い出せる気がして、心を落ち着かせる。
「いいからプリント回せって」
「はーい」
見せびらかすようにプリントをくるくる回転させる青木さん。
ボリビアだったら殺してる。
「はいはい」
露骨なうんざり顔をした俺を見て、青木さんはようやく観念したのか、不服そうにプリントを渡す。早朝だというのに四限目並の疲労を蓄積したまま、溜息ひとつ。
どこで対応をまずったのか、完全に遊ばれている。心当たりがあるとすれば、ファーストコンタクトのくだりでノリの良い奴だと思われたのだろう。やらかした。
この女、関西圏の育ちだろ。それも京都じゃなく大阪だよ、絶対そう。
「ところでさ、お願いがあるんだけど」
「肝据わってるってよく言われない?」
「ねえ、付き合ってよ。お昼休みに、校内案内」
「………………ぬぁんでぇ俺が?」
俺を華麗にスルーしながら上目遣いで言う青木さんに、先ほどよりずっと強調した顔芸を繰り出す。
「スクショタイム? 嬉しいけどまた後でお願い」
上目遣いと手合わせ。可愛さとウザさの反復横跳びで疲弊していく脳。なんとしても断りたい、が。これまでのコミュニケーションから察するに、彼女を振り切るのは至難の業だろう。そこに労力を割くというのを考えただけで気が滅入る。
「だから、どうして俺なんだ。俺である理由がない」
うんと唸って少しの時間を使い、青木さんは言う。
「現状だと賭くんが一番話しやすい、から……?」
そりゃ俺にしか絡んでないからでしょうが。
「聞くな。悪い事言わねえから男子の俺を捕まえて案内させるより、女子に頼めって。友達作りも兼ねてさ。花の女子高生らしく楽しそうにお喋りしてろって」
休み時間に休めないのは致命的だ、面倒事は避けるに限る。
どれだけ外見や雰囲気が好みの女に言い寄られても、面倒なのが変わる訳じゃないのだから。
「うわっ、すっごい偏見。ていうか、ふふっ。もしかして今の掛けてる?」
「御眼鏡に適ったかは知らん」
赤いブリッジを中指でクイッと上げて語ると、青木さんは両肩を震わせ、口元を手で覆う。
「んふっ、ちょっともう。止めてよ、僕そういうしょうもないのに弱いんだから」
理屈は分からないが、美女というのは吹き出しても可愛らしさを保つ生き物らしい。不思議だ。
「賭くん。僕は友達と楽しくお喋りする為に女の子になったんじゃないんだよ?」
咳払いをひとつして「あのね」と改めるように青木さんが話す。しれっと名前で呼んだことを無視しつつ、俺も同じように真面目な口調で答えた。
「奇遇だ。俺も校内案内する為に後ろの席になった訳じゃない」
すると、青木さんは俺の椅子の上に両腕と顔を乗せ、と露骨にいじけだす。
「いーじゃん、ちょっとぐらい。騒ぐよ?」
「何の脅しだ。既にうるせえよ」
伏せたまま、じろりとこちらを睨む視線。過去に一度、覚えがある。完全に懐かれた。
頭を抱えていると隣から紙飛行機が飛んでくる。開いた先にある、筆者の想いが込められた「黙れ」の二文字。
「…………」
「それ、なに?」
選択肢はない、か。聞こえてんなら、ちったぁ助けろ。
「さあ。デスノートの切れ端だろ」
手元を覗こうとする距離感のバグった青木さんに、中が見えないよう、くしゃくしゃに丸め、「じゃあ昼休みな」と面倒な要求をしぶしぶ呑む。ようやっと黒板に向かう青木さんの身体。
これで静かにしてくれる。と、安堵したのも束の間。青木さんは振り返って「絶対だよ?」と囁いて念を押す。はにかんだ口元の、その先にある真っ白な輝きが眩しく、「はいはい絶対」と軽くいなす俺。その後、昼休みまで青木さんが絡んで来ることはなかった。
【作者からお知らせ】
「こんな駄文、修正してやる!」
そんな感じでタイトルとか設定とかめっちゃ変えました。
あ、完結は今年の12月25日です。