一話 初登校
「おーい、なお起きなって」
「ちょっと無理…」
「ん゛起きて!」
ボゴフッ
あ、朝から鳩尾に踵おとしはやばい…
俺は福森直樹。今日は高校の入学式、だけど少し体がだるいかも。
はぁ…こいつは元気で羨ましいな…
「な、何よ。そんなにジロジロ見て、、」
朝っぱらから踵おとしを食らわせてきたこいつは清流佳菜。向かいの家に住んでるガキの頃からの腐れ縁。いわゆる幼馴染ってやつ。いつも付き合ってるのか?と聞かれる。確かに顔は客観的に見れば可愛いが、家族同然の幼馴染に恋愛感情なんぞ生まれるはずもない。
「なんでもねーよ。着替えるからちょっと外出てくれない?」
「はーい」
よっこらせっと
布団から起きあがろうとした時、頭がズキンとした。
やっぱ今日体調悪いのかもな…
そんなこんなで“ほとんど”着替え終わった。
ガチャリ
「かなぁ、ネクタイ結んで」(๑•᎑<๑)ー☆
そうっ!俺は高校生になってもネクタイが結べないのであーる。入学前の春休み、練習しよう練習しようと思いながら過ごしていたところ今日が来てしまった。あぁ〜、時間とはなんて残酷なのだ。
「はぁ〜?あれだけ練習しとけって言ったでしょ?」
「ごめんって」
「ん〜わかったわよ。今日だけだよ?」
なんだかんだやってくれる優しい佳菜さん。幼馴染でよかったわ。
「む、結ぶこっちの気持ちにもなってよね」
「だからごめんって」
今度ジュースでも奢ってやったら大丈夫だろ
「どーせジュースでも奢ったら大丈夫とか考えてるんでしょ」
「凄いな流石幼馴染」
「鈍感チビバカ野郎」
「んなっ!チビじゃねーしバカでもないわ!大体お前と身長ほとんど変わらないじゃねーかよ!あとお前、この高校入りたいから勉強教えてって言ってきただろうが!俺、お前よりは頭いいからな!?」
「ごめん、これは私が悪かった。許して?」
「しょうがねーな。許してやる。」
ありがとうございますぅー。と佳奈は不満げな表情を浮かべた。
「あ、そういえば何でこの高校受けたんだ?」
「くだらない理由よ。知らなくたっていいでしょ」
「いや知りたいでしょ」
「え…///」
佳奈は少し頬を赤らめた。
「そ、そんなに、私のこと、知りたい?」
「幼馴染としては聞いておきたいなぁ〜ってだけ」
「ああそうですか、」
なぜか佳奈は少し怒っている。
「別に、家から近い所にしたかっただけよ」
「いや、でもあんなに『なお、模試の判定Cだった。このままじゃ行けなくなっちゃう、どうしよう』って泣きながら言ってただろ」
「うるさいバカ!」
ボゴ
「痛っ、鳩尾殴るな。あとバカじゃ、ねぇ」
パンチが強いんだよ。呼吸できなくなるわ。
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「母さん、行ってきます」
「行ってらっしゃい。佳奈ちゃん、高校でもなおきの事よろしくね。入学式は旦那が起きたら行くわ」
「任せてください!」
そう言って俺らは百崎家を後にして高校に向けて歩き出した。
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「お母さんいつ見ても美人だよねぇ」
「まぁ、それなりに、ね、、」
今日ってこんなに暑かったっけ…
「お父さんも相変わらず忙しそうね」
「まぁ、それなりに、ね、、」
父は国の防衛に関わる仕事をしてるから夜帰ってくるのが遅いんだ。って何でこんな説明してるんだろ…やっぱ今日おかしいな…
「…ねぇお腹すいた?」
「まぁ、それなりに、ね、、」
頭もちょっと痛いかも…
「………さっき食べたばかりでしょ?」
「まぁ、それなりに、ね、、」
「ねぇ、ちゃんと話聞いてる?」
「ごめん、聞いてなかった」
「もう…」
そんな話をしていたら高校に着いた。
邂逅高校、これが俺らの通う高校。偏差値は73くらいでそこそこ高いとは思う。公立だけど最近建て替えられたらしくそこらの私立高校よりも断然綺麗だ。邂逅という名前には巡り合いという意味が込められているそう。
「はいっ!シャキッとする!」
「うぃ…」
よし、切り替えなきゃ。学校生活はスタートが重要だからな。
「えーと、壱の弍はどこだろ…」
俺らは2人とも壱年弍組になった。数字が全部漢字なのもこの学校の変な特徴だよな。
「あっ!見つけた!一階だ!」
「よっしゃ!多少遅れても大丈夫だ!」
あんたは家が近いんだから余裕を持って来なさいと佳菜にチョップを食らった。
今頭痛いのに。
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西連寺 永
@S_tokosie