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異世界生活2日目は、前日早めに寝たこともあり朝の早い時間に目が覚めた。
あまり朝には強くないのだが、環境が変わったせいか、あるいは若返ったおかげか体に力がみなぎっている。
昨日急遽用意してもらった部屋は広く、急いで用意してくれたとは思えないくらいきれいだ。エランさんたち家族の部屋も2階にあり、メイドさんたちの部屋は1階にあるらしい。
窓から外を見ると朝焼けの中に見慣れない風景が見える。
本当に異世界に来たんだな・・・等と感慨にふけりながら外を眺めていると、庭でエランさんと執事兼雑用兼庭師のアーノルドさん、料理兼雑用担当のダルマさんが剣の稽古をしている。
さすが異世界。剣の稽古とか普通にしてるんだなとか思いながら、興味があるので庭に出てみることにした。
ちなみにニャニャは、ルーシーがとても気に入り夜も一緒に寝たいとのことで、ルーシーの部屋で一緒におやすみしている。
少し寂しい。
急いで作ったとは思えない上質な生地の子供服に着替える。その時壁にある姿見を発見。
そういえば小さくなってから鏡見てなかったな。
現在の姿を見てみると、「あれ、なんか子供のころと顔が違うな。あと髪の色が黒色ではあるだがなんとなく青みがかってみえる。」
じっくりと顔を見ながら考える。
俺の子供のころよりもずいぶん可愛い顔している。髪の色も合わせて将来かっこよくなれそうだ。
神様がこの世界に合わせて作り替えるとか言ってたからそのせいかな?
これもある意味神様特典かもしれない。もともと普通の顔立ちだったので、かっこよくなる分には不満がない。
それにしてもここまで来ると転移よりは転生って感じだなとか考えながら廊下に出る。
するとすでに廊下ではエドさんが掃除をしていた。
エドさんは165cmくらいで26歳。髪と目が茶色だ。顔は切れ長の目のせいかきつめの美人。目のせいか少し厳しそうな見た目に反し実はおっとりしている。少し細目で胸も控えめだ。
元々マリアさんの専属メイドをしていて、結婚後も一緒についてきたとのこと。
「おはようございます。」
「あら、おはよう。ずいぶん早いのね。」
「昨日早かったせいか目が覚めました。」
「そうなのね。よく眠れましたか?」
「はい!ベッドもふかふかでゆっくり眠れました。」
「フフッ、よかったわね。それにしても言葉遣いが硬いわね。もっと気楽に話していいわよ?」
「どうも癖になってるようで・・・」
「まだ緊張してるのかしらね。そのうち慣れるでしょう。」
「がんばります・・・」
「フフ。朝食までまだ時間があるけどどうする?」
「庭で剣の稽古をしているようなので少し見学しようかなと。」
「それならダルマにもうそろそろ朝食準備をするように伝えておいて。」
「わかりました。それじゃ失礼します。」
そう伝えて1階に向かう。
エントランスでは、メイドのジェニファさんが壺を磨いていた。
ジェニファさんはエランさんの実家でメイド見習いをしていたが、移住を機に正規メイドとして昇格。少しドジっ子らしく、昨日も夕飯の配膳時に転びそうになり、危うくエランさんにシチューをぶっかけそうになっていた。
エランさんがぎりぎりで躱して事なきを得たが、そんなドジっ子が壺を磨いているのを見てると不安になる。
年は20歳で身長は150cmちょいと小柄だ。だが胸はこの屋敷最強だったりする。髪の色はさすが異世界と言うかピンク、ぱっちりした目の色は青色。元気いっぱいで朗らかな性格。今も笑顔で壺を磨いている。
こちらに気づいて、元気に挨拶してくれる。
「おはよーございます!」
「おはようございます。」
「よく眠れました?」
「はい。ベッドもふかふかでとてもよく眠れました。」
「昨日頑張って掃除しましたからね!」
自慢気に胸を張りながら答えてくれるが、胸の主張がすごいくてついつい目が行ってしまう。
その視線に気づいたのか、少し頬を赤らめながら胸を手で隠し、
「お子様にはまだ早いですよ!それとも飲みたいんですか?まだ出ませんからだめですよ!」
っとあたふたしだす。
「つい目が行ってしまっただけで、そんなこと考えてないですよ!それよりも壺が近いですから落ち着いて!」
なんとか落ち着かせて事なきを得る。
「危ないところでした・・・。また壺を割って怒られるところでした・・・」
すでに割ったことがあるのか・・・
「すみません。昔からからかわれることが多くてつい・・・」
申し訳なさそうに謝ってくれる。
見た目は子供でも、中身は大人なのでやらしい気持ちがあったことは否定できないので素直に謝ろう。
「こちらこそごめんなさい。」
「いえいえいえ!もう気にせずばんばん見てください!」
と言って、また胸を張る。
これで見るとまた繰り返しそうなので、少し視線をそらしながら、
「そ、それでは外で剣の稽古を見物してきます。」
っと言って玄関から出ようとするとが、重厚感のある玄関の扉は無駄に重く3歳児には厳しかった。
「あーこの扉重いですよね。」っと笑いながら開けてくれる。
お礼を言い外に出る。
はぁー。外に出るのに無駄に疲れたな・・・
とりあえず稽古をしているところに向かった。
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稽古場所に行くと、エランさんとアーノルドさんが戦おうとしていた。
早速みられることにワクワクしていたが、ダルマさんの「始め!」の声がかかった途端、二人とも消えた。
「えっ?」動きが速すぎて何がどうなってるのかも全然わからない。
右へ左へと動いているのを追いかけるのがやっとで、手の動きが全然見えない。
っと、エランさんが完全に消えたと思ったら、一瞬でアーノルドさんの首に木刀を突き付けている。
「参りました。」
っとアーノルドさんが手を挙げたところで、エランさんも突き付けていた木刀を下ろしこちらを見た。
「おはようケンタ君。ずいぶん早起きだね。」
「おはようございます。昨日早く寝たせいか目が覚めちゃいまして、庭を見てたら稽古をしているのが見えたので見物に来ました。」
「興味があるのかい?」
「はい。今まで剣の稽古を見たことなかったので。動きが早くてびっくりしました。」
「ハハハ、これでも剣は得意だからね。よかったら君も参加するかい?」
「いいんですか? できたらやってみたいけどお邪魔じゃないですか?」
「僕も小さなころから鍛えてもらってたからね。始めるなら早いほうが上達するよ。」
「それではお願いします。大きくなったら冒険者になって世界を見て回りたいんです。」
やっぱり異世界転移なら剣も魔法も鍛えて、俺つえーしてみたい!
冒険者登録時にちょっかいをかけられるも、圧倒的な強さで周囲を黙らせる自分を想像しながら返事をする。
「そうか。冒険者になって世界を回れば故郷も見つかるかもしれないね。」
故郷は異世界だから無理だけど、せっかくの異世界なのでいろいろ見て回りたい。
「そうですね。どこにあるかはわからないですが、世界を回りながら故郷を探してみたいと思います。」
「それじゃあ明日から早朝に一緒に稽古をしよう。今日はもうすぐ朝食の時間だし、君に合わせた木刀も用意しないとね。」
「ありがとうございます。明日からよろしくお願いします。」
「うん明日からよろしくね。」
「あっ、エドさんからダルマさんに朝食の準備をするよう言付かってたの忘れてました・・・」
「ハハハ。じゃー今日はもう戻ろうか。」
そうしてアーノルドさんが稽古の片づけをし、ダルマさんは一足早く調理場に向かい、エランさんと俺は会話しながら食堂に向かった。