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森を抜けて1時間ほど歩くと麦畑が見えてきた。
農作業をしている人にあいさつをしながら更に30分程歩くと村の入口が見えてきた。
入口と言っても低い柵に囲まれて、その先に家が何軒か見えるくらいだ
村に入ったところでガンツたちと別れ、村の中を行く。途中で何人かの村人を見かけたが、裕福ではなさそうだが困窮しているというほどでもなさそうだ。家も特に固まっているわけではなく適当に建っている感じがする。
エランさんに聞いてみると、まだ開拓を始めてから5年ほどで、本格的に整地をしているわけではないため、今後徐々に整理していく計画なんだそうだ。
更に20分程歩いたところで、立派な塀に囲まれた2階建ての大きな屋敷が見えてきた。
「大きなお屋敷ですね。」
「ありがとう。本来ここまで立派な屋敷はいらなかったんだけど。そこら辺の話はあとでするとして、まずは家に入ろう。」
門番はいないようで、エランさん自身で門を開けて中に入ると、庭もしっかりと整備されていてきれいだ。
庭を眺めながら玄関に向かうと、メイドさんが玄関を掃除していた。
「おかえりなさいませ。エラン様」
「ただいまエド。」
「失礼ですが、そちらのお子様はいかがされたのでしょう?」
「森で保護をした。説明をするのでマリアを応接室に。あと子供服の用意を頼む。」
「かしこまりました。ただ子供服についてはお嬢様の服しかございませんが・・・」
「作ることはできるか?」
「布があるので作ることは可能ですが、少しばかりお時間がかかります。」
「すまないが何着か用意してほしい。」
「かしこまりました、奥様をお呼びしますので応接室でお待ちくださいませ。」
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応接室で待つこと少し、白金の髪に茶色の目をしたきれいな女性と白金の髪に青い目をした小さな女の子が入ってきた。
「紹介しよう。マリアとルーシーだ。」
「そして、この子は森で保護したケンタ君だ。」
「初めまして、サトー ケンタです。ケンタが名前になります。」
「あらあら。小さいのにしっかりしてるのね。私はマリア・ガルフォードです。そしてこの子はルーシーよ。」
小さな女の子は目が合うとマリアさんの後ろに隠れてしまった。
「ルーシーご挨拶は?」
小さな子は後ろから顔を出すが、黙ったまま肩の上のみーちゃんを見ている。
肩からみーちゃんを下ろしながら、ルーシーに話しかける。
「こんにちは。この子は猫のみーちゃんだよ。」
みーちゃんが「にゃっにゃっ」と鳴きながら近寄ると、ルーシーも多少怖がりながら近寄る。
ルーシーがおずおずと「みーちゃん」と話しかけると、みーちゃんは嬉しそうに駆け寄って、ルーシーの足に体をこすりつけながら、「にゃー」と甘えた声を出す。
ルーシーも嬉しそうに手を出すと、ミーちゃんがその手を舐める。
ルーシーは喜んでそのままみーちゃんを抱き上げる。
みーちゃんは抱っこされるとそのまま手を駆け上り、肩に上るとルーシーの顔に頬ずりする。
ルーシーはくすぐったそうにしながらも、とてもいい笑顔を見せる。
マリアさんも笑顔を見せながら、「みーちゃんは可愛いわね。」と言いながらみーちゃんの頭を撫でる。
どうやらみーちゃんは受けいられたようだ。
エランさんが微笑みながら、
「とりあえず今までの経緯とか説明するからソファーに座ろうか。」
といってソファーに座る。
どこに座ろうか迷ったが、エランさんに呼ばれたのでその隣に座る。
マリアさんとルーシーは対面に座る。みーちゃんはルーシーの膝に移動した。
タイミングよくエドさんがお茶とお菓子を用意してくれる。
「とりあえずはここに連れてくるまでの経緯を話そうか。」
・・・・
「・・・というわけで、住んでいた場所への帰り方もわからない状態なんだ。」
「そうだったの・・・。その年で両親を亡くされてるなんて・・・。ケンタ君は帰りたい?」
「親戚もいないので、もしよければこの村で暮らしてもいいでしょうか? もちろん仕事もして生活費を稼ぎますので。」
「それならここで暮らせばいいわ。ルーシーもみーちゃんを気に入ったようだしね。仕事はルーシーと遊んでくれればいいわよ。」
みーちゃんと楽しそうにしているルーシーの頭を撫でながら提案してくれる。
「それではうちで面倒みるということでいいかな?」
「ええ。賢くてかわいい子だから大歓迎よ。」
「ありがとうございます。迷惑はかけないようにしますのでよろしくお願いします。」と頭を下げた。
「フフッ。そんなにかしこまらなくていいのよ。よければお母さんだと思ってくれるとうれしいな。」
「僕のこともお父さんだと思ってくれるとうれしいな。あと話し方も家族と話すようにしてほしいかな。」
エランさんも笑いながら言ってくれる。
「ルーシーちゃん。一緒に暮らしてもいいかな?」
一応ルーシーにも確認してみる。
「みーちゃんと一緒ならいいよ」
みーちゃんがいればいいらしい。
「どうしてみーちゃんなの?」
ルーシーの問いに、三毛猫だからって答えようと思ったら、ここだと言葉違うから通じないかと思いなおす。
「最初家に来た頃に、みーみー鳴いてたからだよ。」っと答えると、
「じゃー今はにゃーにゃー鳴いてるから、にゃにゃちゃんだね。」
っと可愛いことを言う。
それに合わせてみーちゃんも「にゃっにゃっ」と返事をしている。
「もうみーちゃんで覚えちゃったから、今から変えるとみーちゃんも困っちゃうよ。ねーみーちゃん。」
っとみーちゃんに話しかけるが返事してくれない。
「みーちゃん?」
っともう一度話しかけても返事しない。
「みーちゃんどうしたの?」
返事しない。
「まさか・・・。にゃにゃ?」
「にゃっにゃっ」
返事が来た。
ステータス確認!
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名前:サトー ケンタ
レベル:1
年齢:3歳
状態:普通
HP:8/8 MP:25/50
STR:4 INT:150 AGI:3 VIT:2 DEX:4 LUK:3
スキル:鑑定 アイテムボックス 言語理解 魔力感知Lv1 魔力操作Lv1
ユニークスキル:ステータス マップ 使い魔作成
使い魔:ニャニャ(猫)
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「みーちゃんの名前がニャニャに変わってる・・・」
「ええ?」
エランさんとマリアさんが驚く。
「使い魔の名前って勝手に変わるものなの?」
「えーと・・・。自分も詳しく教わってなくて初めて知りました・・・」
「ごめんね。うちの娘のせいで・・・」
エランさんとマリアさんがとても気まずそうだ。
「いえ、そんな気を遣わないでください。」
っと、気にしてなさそうに返事するが、内心では名前気に入ってなかったんだ・・・とショックを受けた。
「ルーシーがみーちゃんと言っていればまた変わるかな?」
「いえ、みーちゃ・・・ニャニャも気に入ってるようだし、ニャニャって呼んであげてください。」
横ではルーシーが「ニャニャ」と呼ぶたびに嬉しそうに頬ずりするみーちゃ・・・ニャニャを見ながら、エランさんは申し訳なさそうに
「君がいいならそれでいいけど・・・」
「はい。みーちゃんはきっと夜空のお星さまになったんです!」
「いや、目の前にいるよ!?」
「いやだなー。あれはニャニャですよ?」
「そ、そうだね。あれはニャニャだよね。」
そしてみーちゃんはニャニャとして生まれ変わった。