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「おーい、ディラン」


 ズルズル引きずってアリアナ達から見えない所まで来てからレオはディランに声をかけるが、未だ握られた手を顔を真っ赤にして見つめ、固まっている。


 その相変わらずの様子にレオは溜息をついた。


「はぁ…もう、アリアナさん…早くコイツとどうにかなってくれ」


 今ここには居ないアリアナに投げ出したい気持ちでいっぱいになるレオだった。



 ◇◇◇



「初めまして。ミナミ様の侍女、アリアナと申します。今はディラン様の侍女をしております」


 この国の騎士団長でもあり、レオの父親レーベはレオとディランの剣の師匠だった。

 初めて一緒に稽古した時は警戒心剥き出しのディランだったが、同い年で思ったより話しが合って、いつの間にか幼馴染みで一番の親友までになった。


 そんなある日、ディランの母フィオーレの体調が思わしく無いとの事を聞いたレオはいち早くディランに会いに行った。


 そこで、レオはアリアナと出会う。

 アリアナの人より長い耳を見て彼女がエルフだと直ぐに気付いた。


 エルフはこの国にはアリアナ以外居ないだろうとレオは思った。

 何故なら、ずっと昔に人間が無抵抗だったエルフに攻撃をして、殺されたり奴隷にされたエルフが人間を恨み、この国には近寄ろともしないからだ。


 そんな居づらい国にまさか侍女として働いているとは思わなかったレオは初めてアリアナを見た時、驚いた。


 更に驚いた事は、人見知りで警戒心剥き出しのディランが嬉しそうにアリアナと喋っている姿だった。見た時は思わず二度見してしまう程だった。


 しかも、アリアナが侍女になってからだんだんとディランはアリアナを見る目が変わった。

 家族のような親愛から愛しい者を見る目になったのだ。


 なので、アリアナがディラン以外の男と喋っていると物陰から睨んだり、理由を付けてアリアナと一緒にいる時間を増やしたりとしていた。


 アリアナには隠していたのか分からないが近くに居たレオには感づかれる程、分かりやすかった。

 レオでも分かると言う事は近しい国王やフィオーレ、レーベにも分かっていた。


 ただ、まだ幼かったディランは近くにいる女性に対して感情を勘違いしていると大人達には思われていた。

 レオだけは、そうは思わなかった。


 苛烈な婚約者から逃げまりながら、ディランはアリアナの好きな物の偵察、女性受けしそうなシチュエーションの研究を懸命にしていた。


 そして、ある日。


「っ好きだ」


 花束を抱え、アリアナと二人っきりになったディランにもしかしてと物陰から様子を伺っていたレオはディランがアリアナに告白する場面を目撃した。


 照れながらも直球で想いを告げたディラン。しかし、アリアナには届かなかった。


 ショックを受けたディランはその場から逃げ出したが、ある決意をする事になる。


「レオ…俺、王位継承権、捨てる」

「へー…へぇぇえ⁉︎」


 王子と侍女。立場の違う二人。

 アリアナは自分が目上の立場の者にそんな感情遠向けられるとは思っていない。


 更に何百年と生きているせいか、ディランを幾つになっても子供のような存在としか認識しない。


 そこで先ず、王位継承権を破棄してアリアナと同じ立ち位置につき、そこから一人の男として見てもらおうと算段を立てたのだ。


 この事をレオに言う前に既に父親の国王に宣言して来たと言うのだ。

 アリアナと結ばれる為にと言う理由を知らずに王位継承権の放棄発言に国王は頭を抱える羽目になり、フィオーレもどうしましょうとお腹の子に顔を向けた。


 それに困るのはレオも同じだった。

 レオの中で仕えるべきはディランと心に決めてから、ディランの騎士になる為に他の候補を抑えて、自身が一番になろうと今、必死の最中だ。

 次期王になったディランを支える、そんな理想を抱いていた。


 それなのにディランがそんな発言をするとはレオは思ってもみなかった。

 アリアナとは普通は諦めるか、嫌われると思うが権力を持つ王族なら手篭めにする術があるからだ。


 まさか正攻法で結ばれる為にそんな手段に出たのだ。

 ディランが好きな人と結ばれるのは祝福するし、喜ばしい事だと思うが、自身の主人になるべく人が居なくなるなるのは却下だった。


「、ディラン!」

「なん、」

「俺が協力するから!」


 こうなったら、王位継承権を放棄させずにアリアナとの仲を深めれば良い。

 レオの奮闘が始まった。



 ◇◇◇



 それからディランはアリアナに好かれる為にそれはもういろいろ頑張った。


 特に子供っぽさを無くしてカッコいい男として見られたくて、今まではアリアナに引っ付いていたが、一歩引いてクールにエスコート出来るよう努力した。


 そしてアリアナに言い寄りそうな男が居たら、近寄る前に呼び出して二度と近付かないようにお話しするようになった。


 だが、そんな努力のせいか今回のようなアリアナからの不意打ちの行動には脳が対処しきれず、体が固まってしまうのだ。


 嬉しくて、ニヤけてしまうダラシない姿を見られたく無いともしもの時はとディランにレオは頼まれている。


「そろそろ正気にもどれー、ディラン…あ、アリアナさん」

「っ⁉︎アリアナっ」


 可笑しくなる原因も正気に戻る要因もアリアナである。

 アリアナの名前に反応して扉を振り返るが、正気に戻す為にアリアナの名を使っただけなので勿論そこには居ない。


 睨み付けてくるディランに知らん振りしながら、気持ち良い青空を眺めるのだった。


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