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第5話:魔王、ダンジョン開発シートを埋める

まおうローゼリアのダンジョン

最寄り:ふもとの村から徒歩45分

階建:地上1階、地下3階

構造:ようがんコンクリート

その他備考:マグマ床の罠(たくさんあって歩くとダメージ)宝箱いっぱい(おかねをいっぱい配って、いげんを見せる)


ようがんでできた灼熱のどうくつの地底深くには、炎の魔剣フレイムソードがねむるといわれている。


「早速、ダンジョン開発シートを埋めてみたのだが、こんな感じか?」

「うーん、前半はいいんだけど、だんだん後半が雑になってないか?」

「むぅ……今まで使ったことのないことを考えているからのう。なかなか疲れるのじゃ」

「そもそも、これまでも頭を使ったことないんじゃ……ぶごぼっ」


ヨシヒロは魔王の尻尾でビタンとはたかれ、吹き飛ばされた。

が、さすがに馴れてきたのか受け身を取るのがうまくなってきたことを感じる。

このまま受け身でダメージゼロになれば、魔王からはたかれるご褒美だけ受け取りつつも、物理的な損傷はゼロ。

魔王ははたくことで、ダンジョン開発のストレスから解放され、俺はご褒美だけもらえる。

つまり、プラスサム・ゲームだ。この世界にプラスしか生まれない、実質右肩上がりの状態になる。

もし、この世界にスキルポイントの概念があれば、俺は間違いなく受け身スキルにポイントを全振りする。それも悪い選択ではないのだろう。


話を戻そう。

俺と魔王はダンジョンの仕様書をつくろうとしていた。

仕様書というのは、いわゆる説明書のようなものだ。

プラモデルをつくるときにも、説明書を読みながら組み立てるのと同じだ。

小さいプラモデルさえ、説明書を見てつくるのに、より大きなダンジョンを説明書なしに組み立てるのは無謀に他ならない。


とまぁ、こんな地道な作業を進めているのも、一ヶ月後に勇者がこの大陸にやってくると言われているからだ。

しかし、勇者が北方の氷の魔王の元にいき、もし、勇者が万が一倒されてしまってはこのダンジョン建設はまったくのムダになってしまう。

そうなると、次の大魔王の座はあの憎き氷の魔王フローゼのものとなってしまう。それだけは避けたい。


このポンコツ魔王が大魔王になってくれないと俺も元の世界に帰れる確率がさがってしまう。

大魔王になれば、より大きな権力を得られる。そして、権力のもとに情報は集まってくる。


だからこそ、一刻も早くダンジョンを完成させ、キーメッセージを打ち立てたマーケティング戦略を行われなければ。

客人ありきのダンジョンである。

ダンジョンは勇者を迎え撃つことを目的とした要塞なのである。

勇者が北に向かってしまっては、大陸の南に位置する自分たちのダンジョンに来てもらえない可能性がある。


だから、急がねば。

とはいえ、ただ無計画につくるだけでは意味がない。

プロジェクト・マネジメントの基礎は、まずはゴールイメージの設定だ。

だから、俺は炎のロリ魔王にどんなダンジョンにしたいかのビジョンを考えさせていた。


「書いてはみたものの、ダンジョンのイメージを考えることに一体どれほどの意味があるのじゃ。一刻も早くつくったほうがいいのではないか?」

「魔王が焦る気持ちはよくわかるよ。しかし、よく考えて見るんだ、魔王。カレーは知っているか」

「おお、知っておる。カレーは美味よのう」

「魔王がカレーをつくるときに、まず考えることはなんだ?」

「えっと、残りものの豚肉があったからポークカレーにしようか、それとも今が旬の魚介をつかったシーフードカレーにしようかを考えるじゃろう」

「あ……」

「それだ。まず作り始めるときには、どんなものにしたいかがないとゴールに向かって走れないだろう?」

「むぅ。それもそうじゃな。」

魔王は納得した様子を見せつつも、頬をぷぅと膨らませ言葉とは裏腹に腑に落ちていないのが見てとれる。

「だから、カレーとダンジョンは要するに同じようなものなんだ」

「ふむ、何をつくるかを意識するのかが大事ということじゃな」

「そうだ。だからこそ、まずは魔王が今回の勇者を倒すという目的を果たすために、どんなダンジョンをつくりたいのかをはっきりさせる必要があるんだ」

「時間も限られているし、あまり手間はかけられん。あとは、ちゃんと勇者が来てくれるダンジョン……」

「ちゃんと勇者が来てくれるには、どんなことが考えられると思う?」

「そうじゃな、ちゃんとした、いいことがあるか、それとも勇者にとってメーワクなことをするとかかのう」

「うんうん。迷惑ってたとえば、どんなことがありそうかな」

「うーん。街を襲ったり、姫さまをさらうとかか?」

「いい線だと思うよ。RPGの王道感もあるし」

「あーる・ぴぃ・じー? オマエは何を言っておるのか?」

「ああ。まぁいいからいいから。さ、イメージもできたし、後はあのゴーレムちゃんたちに伝えよう」


こうして俺と魔王は、ダンジョンの設計書をみんなに伝えることになった。

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