第14話:ダンジョンのトラップをトライアル発注しよう
ダンジョンに設置するトラップを外注するため、魔王たちは早速、制作元に連絡をすることにするのだった。
「なあ、どうやって連絡するんだ」
俺の頭にふとした疑問が浮かぶ。この世界に電話のようなものはあるのかと。
すると、ロリ魔王はふふんと得意げな顔をして答える。
「魔伝話というものがあるのじゃ」
「魔伝話?」
それは零から仇までの番号が振られた魔法陣を回転させることで、相手先の番号に掛かるものらしい。
魔伝話の前で、魔法陣をじっと見つめる二人の少女たち。
現場ディレクターのサラマンダー娘と、デザイン担当のハーピィ娘はこの魔伝話を使うのが初めてのようだ。
慣れない魔法を目の前に、また初の魔伝話の利用に緊張した面持ちなのが、取って見える。
「ア、アタイはちょっと、魔伝話とかそういうのは得意じゃないっていうか……ほら、顔が見えない相手と話しをするのはちょっと、ねぇ?」
「せんぽうに、しつれいがあってはいけないので、はなすことをまとめないと……」
「ふん。おぬしら。いつまでモタモタしておるのじゃ? ほれさっさと掛けるぞ」
そう言うと、少女の魔王はさっそくトラップの制作会社の番号が描かれた魔法陣をくるくると回し始めた。
「えー、トラップ03の、2525トラップ、10アップと……」
「はい! こちらTRAP UP株式会社、担当パンサー娘が承りましたぁ!」
魔法陣から声が聞こえてくる。
どうやらダイヤル、スピーカー、マイクがワンセットになった魔法らしい。
「もしもし? こちらは焔魔王ローゼリアじゃ。早速じゃが、トラップのとらいある?というのをやってみたくてのう」
「これはこれは、魔王様! おーきにおーきに。トラップのトライアルですねぇ! どのような内容をご希望でしょうかぁ?」
「うむ。ここからは部下たちに代わるから、あとはよろしく頼むのじゃぞ」
「承りましたぁ! 今後ともご贔屓にぃ〜」
ほれ、と言わんばかりの表情で魔法陣の方を指差すローゼリア。
サラマンダー娘は、事前のロールプレイが出来ていないからか不安な表情を浮かべるが、ロリ魔王にこれ以上手間と時間をかけさせるわけにはいかないのだろう。
覚悟を決めたように、目をつぶりながら、声を絞り出す。
「あ、あの……。まおう様……、焔魔王ローゼリアさま配下のサラマンダーともうします。チラシをみてトライアル発注をおねがいしてみたいのですが……」
「はい! トライアルですねぇ〜。詳細は対面でお伺いするので、空いているお日にちを教えてください」
「あ、はい……。えっと……あまりじかんもないので、できるだけはやい日だと、ありがたいのですが……」
「ふむふむ。なるべく早めということですねぇ〜。えー、予定は……あ、空いてますから今からお伺いしましょうかぁ〜?」
「いま、から……ですか?」
相手の言葉を繰り返し、不安ながら魔王の方をちらと見るが、魔王はにっこりとして頷いた。
しかし、魔王はきっと深くは考えてないのだろう。しかし、不安な部下の心理的障壁を取り除くことも上司の役目だ。
時として自信のない自信は、自信のある自信よりも強く力強い。
「で、ではいまからおねがいします……」
「承りましたぁ! では30分ほどお待ちくださーい」
***
「お待たせしましたぁ! TRAP UP 営業担当のパンサーです」
パンサーと名乗るその少女は、オレンジのショートヘアーに、ケモミミが生えている。
目は糸のように細長く、にっこりと笑った口元から覗く八重歯は鋭い。
褐色に灼けた浅黒い肌は、四肢がすらりとのびている。
手首、足首には虎柄の模様があり、地をつかむ足は、鋭い爪がのびている。
サラマンダーとハーピィの二人は、早速今回の要件を伝えることにする。
「事情はわかりましたぁ! ではさっそくトライアルに移らせていただきますぅ!」
これでまずは一安心、と目を合わせるサラマンダーと、ハーピィ。
しかし、パンサー娘は堰を切ったように、次々と言葉を紡ぎ出していく。
「ちなみに、今なら2年間あんしんパックが追加でなんと、2万ゴールド! それから24時間365日相談ホーダイがついて通常価格が10万ゴールドのところ、なんと50%オフの5万ゴールドぉ! どうどう? これは入るしかなくないですかぁ?」
営業トークでグイグイと売り込みをしてくるタイガー娘。さすが営業のフロントである。
「あ、あの……これは」
「これだけお得なんですよぉ? 入らないなんてもったいなくないですかぁ?」
あまりの勢いに気圧されてしまい、目がぐるぐると回るサラマンダー娘。
「ちょっと、ちょっと! アタイらが今回必要なのは、あくまで納期通りにトラップを納品してもらうことだから!」
「おっと、これは失礼しましたぁ。では今回の発注内容で承りましたので、今後ともご贔屓にぃ〜」
こうして、ダンジョンのトラップ、マグマ床のトライアル発注が終わったのだった。




