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第11話:ダンジョンの目的と手段

「まおう様。思いきってダンジョンの床をすべてこのマグマ床にしてしまうのはいかがでしょうか」

「むぅ……。これだけのマグマ床、余らせておいてももったいないしのう……」

「では、じかんも限られてますし、さっそくゴーレムたちに、さぎょうに取りかからせます」

「いやいやいや! どう考えてもダメだろっ!」


ロリ魔王と、魔物娘の会話を制するのは、一人の男の声だった。

名前をヨシヒロ。現代からやってきたソシャゲのプロジェクトマネージャーである。


「なぜジャマをする! 外に積んでおいても宝の持ち腐れにしかならんのじゃ」

「だからダメだって! もう一度このダンジョンの目的を考えなおしてみてくれ」

「目的? ダンジョンをつくることじゃろう?」

「ちがう! 勇者を倒すことだってば!」

「あ……。それもそうじゃったな……ちょっとだけうっかりしていたというか、なんというか」


ばつが悪くなったのか、少女の魔王はヨシヒロと目をそらしながら、頭をポリポリと掻く。


「この前衛的なマグマ床でそれが果たせそうかを、よく考えてみてほしい」


前衛的なマグマ床。

デザイン担当のハーピィ娘が自分の存在を示そうと描いた、ロリ魔王の肖像画風のデザイン。

大きく誇張された口元がマグマになっており、そこに片足をドボンと突っ込めば、勇者のヒットポイントにダメージを与えられる。

罠は報酬とセットが基本だ。

目の前に、エサとなる宝箱を差し出し、そこへ至る道にマグマ床のトラップを設置する。

宝箱を開ける頃には勇者のパーティーにはダメージが入る。そういう戦法だ。


「この目の前にあるマグマ床でそれができそうかを、落ち着いて考えてみて欲しいんだ」


魔王はその場で、腕を組んだまま目をつぶる。

そして、来たるべき勇者との決戦に思いを馳せる。


■■■■■

黒い空を貫くように幾多の雷鳴が轟き、火山からは熱を帯びた橙色の溶岩がどろりと噴出する、バーン火山地帯。

煉獄の炎の操り手である焔魔王ローゼリアの居城のダンジョンに勇者一向はたどり着いていた。

「僧侶、戦士、魔法使い。俺たちはついにここまでやってきた。後はここにいる魔王さえ倒せば、世界に平和が訪れるぞ」

「ついに来たわね、勇者。回復は私に任せて」

「ふふん、ここまで来れるなんて当然よ! そりゃアタシが認める、勇者なんだから……?」

「オレの戦斧で全てをぶった斬ってやる! 魔王だろうとなんだろうとイチコロよ! わっはっは」

「ああ。早く魔王を倒して、みんなが待っている村に帰ろう!」

「「おおー!」」

勇者のパーティーは火山地帯のダンジョンへと訪れる。

地底から発せられる熱は、まるで蜃気楼のように視界を歪ませる。

体内に吸い込まれた呼気は、喉元に絡みつくようにじわりと体力を奪っていく。

「ねえ、勇者! あっちの方に宝箱があるわ」

「よし、魔王の根城だ。何か良いものが眠っているかもしれない。回収しにいこう」

勇者たちが宝箱を目指す道のりで、魔法使いは驚嘆の声を漏らす。

「きゃっ! 何よ、これ……」

「どうした、魔法使い」

「うおお、なんだこれは……顔?」

そこにあるのは、前衛的な肖像画だった。それもひとつやふたつではなく、辺り一面を覆い尽くすようなおびただしい数。

その数は一万はくだらないだろう。

「これはちょっと怪しい気がするわ……」

「そうだな……。いまの俺たちの装備は使い慣れてもいるし、無理して取りに行くこともないだろう」

「ああ。何がこようとオレの斧でひと捻りだからな、わっはっは!」


朱く、重たい扉の前にたどり着いた。きっとこの先に魔王がいる。

この魔王さえ倒せば、すべてが終わる。


広間の先の赤いカーペットが敷かれた階段の先を見上げると、そこには一つの玉座があった。

赤髪から黒い二つの角を生やしたそのシルエットはまさに、魔物の王たるに相応しい出で立ちである。

「よくぞ来たな、勇者ども。褒めてつかわすのじゃ。既に手負いとなったお主らなど、一捻り……」

勇者たちは傷を負ってはいるものの、まだHPもMPも余裕があるほどケロッとしていた。

「なに、あのマグマ床の嵐を超えてきたというのか」

「あんな見え透いたトラップ、まんまと通り抜けるほど俺らはバカじゃない」

勇者は剣を後方に構え、闘気を込め始める。

僧侶が<守護の印・玉鋼>の呪文を唱え、魔法使いが<魔法憑装・氷牙>を勇者の剣に向けて放つ。

氷の加護を受けた刀身が白銀に輝きはじめ、勇者は魔王の玉座に向かって飛びかかる。


「魔王!覚悟ッ! ブリザード・ストラーッシュ!」

「ぬわわあああーーーーっ」

■■■■■


「……どうだ。このトラップで勇者が魔王の思うようになるイメージはあったか?」

「くっ……どう考えてもわらわの負けじゃ……」

一同にしんと静寂が訪れる。

「目的と手段は逆にしちゃマズイ。あくまで俺たちは当初の勇者を招いて、倒すということを叶えなきゃいけない」


「アタイにやらせてくれないか?」

そう言うのは、前衛的な絵画を描いた張本人であるハーピィ娘だった。

「アタイなら、次こそはちゃんとやれる。だから、その……信じて欲しい」


「よし、今回はちゃんとワークフローをすり合わせて取り掛かろう」


こうして俺はダンジョンの制作物発注のワークフローを整えることにした。

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