ミカ再会<土の魔女
ミミ族のラバッシュからもらった地図を頼りに進み続けると、途中ルプス族のルヴァンが案内に来てくれた。
お陰で目的地へ迷うことなく進めている。
「竜人族の村だって、あの人たちそんな社交的だったけ?」
「灰の魔女様のお力です。あの方の前では逆らう者などおりません」
ルヴァンが走りながら答える
「本当に葵に会っても大丈夫なのかな。なんか不安だなぁ」
ミカがぼやいてると、ルヴァンは話を続けてくる。
「今晩、灰の魔女様から重大な発表があるそうです。
その為に各魔女様方、各魔物の代表、天使方まで集まっております。灰の魔女様のお力故です」
「やっぱり会うの不安だな。葵、力を手にいれて人が変わったとか?」
ミカの頭に立派な椅子に座り、ワイングラス片手に足を組んで悪い顔で笑う葵。その前に天使と魔物と魔女が土下座のような格好でひれ伏している絵が浮かぶ。
「ごめん、葵。私が窓をヤスリで擦ってたばかりに間に合わなかった……」
ミカはコルをおんぶしたまま結構なスピードで走っている。
「ねえ、コル?揺れる?足は大丈夫?」
「はい、コルは幸せです」
「ん?もう少しスピード出すからしっかり掴まってて」
「はい、コルはどこまでも付いて行きます」
会話が噛み合わないまま走っていく。
「どうしてこうなった……」
竜人族の村に着いてしばらくするある魔物の村の代表を名乗る者が現れ私、灰の魔女の重大な発表を聞きに来たと言われた。
その後も続々やって来て、竜人族の村だけで受け入れが困難になってきたので、鉱山のふもとにある大きな広場を解放してもらい受け入れを続けている。
ヤエちゃんの話による中央より更に東方面のエルフやドワーフ達も向かって来ているらしい。
なんでもユニコーンをはじめとした馬系の魔物が今回の発表にあたり移動を協力してくれたらしい。
そんなのいるなら始めから手伝ってよ。この数日間の移動はなんだったんだ、本気でぼやく。
そして来る魔物達が私への献上品を持ってくる。食べ物が多いので腐っても勿体無いしこの場で料理出来る人達を使って食事を作るが、量が多いのでお祭りみたいになっていく。
お酒も勿論有るわけで、出来上がっていく人もいる。
舞と風の魔女アイレさんは波長が合うのか楽しそうにお酒を飲みながら話してる。
そう言えば人間界では高校生だったけど実際2000歳位だから普通にお酒飲めるんだよね。
話を戻すが、今回の重大な発表はメイさんに誘導されたものであって、森の名前を決めるのとその森の管理者を発表しようってだけである。
ここまで大きな話になるとは思ってもいなかった。
まあ、私が森の東側を支配するのは重要かもしれないけど……
「葵様!ミカ様到着します」
色々考えていた私は、ヤエちゃんの声で現実に戻される。
「うん、すぐ行く!」
そう言って門の方へ私達は走って行く。
門に着くと銀髪になったミカが立っていた。1人の天使の少女をお姫様だっこして。
「あ、葵、マイ、ニサ久しぶり、カノン!?ええなんでここに、お義母様も?あれ?私結構急いだのになんで?」
1人混乱してるミカに一番気になることを聞く。
「うん、ミカ久しぶり。その子は?」
「あぁ、この子はコル途中の村で出会ったんだ。怪我してるから治療頼める?」
「分かったよ、メサイアちゃんお願い出来る?」
「むっ メサイアに 任せる」
メサイアちゃんが近づこうとすると
「いえ!結構です。コルはミカ様の治療が受けたいです!」
そう言うコルにミカは不思議そうに言う
「え、でもメサイアの方が私より治癒能力高いよ」
「能力の高さではありません!愛情が違います」
「むっ メサイア 愛が足りない…… 葵の 欲しい」
メサイアちゃんが崩れ落ちる。
「あのう、その方ミカのなんでしょうか?」
私が聞くと
「コルはミカ様に一生着いて行く者です」
「そうそう、コル怪我してるのに頑張って私に着いてきてくれたんだよ」
「あぁミカ、前から薄々感じてたけどちょっと頭弱い……」
「言ってやるな、あたしは知ってる」
「わたくしも気づいてはいたのですわ」
「私は印鑑を押す時、変な構えしていたときに気づきました」
「むっ 天然」
皆好き勝手言う
そんな事をしているとソフィーさんが前に出てくる。
「わたくし、ミカの母、ソフィー テレーゼです。あなたのお名前は?」
「は!ソフィー様!!ミカ様のお母様!私、コル カンタータと申します。以後宜しくお願いします」
「そう、ではコル怪我をしているのですよね。ちゃんと治した方が良いわ。治療をしてらっしゃい」
「はい!お母様!」
コルは足を引きずりながら治療に連れていかれる。
「むっ メサイア いらないか」
その姿を悲しそうに見るメサイアちゃん。哀愁が漂う背中も可愛い。
「これでやっと話が出来る……」
「まて!来るぞ!」
「葵、避けるのじゃ!」
私が言いかけたときアイレさんとメイさんが同時に叫ぶ
地面から殺気?を感じる。瞬時にイグニスを発現させその場から飛び避ける。
土が盛り上がり土柱が上がり、土砂が舞い散る
「ちぇーー避けられましたかぁ!それでもめげませんよぅ」
そう言ってそこに立っていたのは黄色いギンガムチェックの服をきたアイドルみたいな格好で茶色の髪の少女!
「ノームちゃんの登場ですぅ!」
ドーーーン!!
地面が爆発し目元に横ピースでポーズをとる。
ポーズを終えるとすぐ私の元へやってきて
「あなたが灰ですねぇ、この業界じゃノームの方が先輩!あなたは後輩ですよぉ!そこを間違えないことですぅ!」
なぜ喧嘩腰?業界?よく分からないが挨拶はしよう
「灰の魔女 日向 葵です。 ノーム先輩宜しくお願いします」
「おぉ、素直な子ですねぇ。ノーム先輩の言うことをよくきくんですよぉ、ってあいた!」
メイさんがノーム先輩を蹴る。
「やめんか、この目立ちたがり屋め」
「ノーム後でこの穴直せよ。村の人に迷惑だ」
「ふふ、相変わらずねノームちゃんは」
「もう、こう言うのは最初が肝心なんですぅ!なめられたら負けですよぉ」
あれ?いつの間にかリエンさんが混ざってる。
「リエンさん!いつの間に来たんですか。お久しぶりです」
近寄る私を抱き締めてくれて頭をよしよししてくれる。ちょっと恥ずかしい。
「今来たわ。と言ってもその辺りにある水を使った分身体よ。私は今あそこから離れられないのよ。でも葵ちゃんの事は感じれるわ」
水でできているはずなのに温もりを感じる。
「なんじゃ、まだかかりそうなのかの?」
メイさんがリエンさんに尋ねる
「えぇ、まだかかりそうよ」
「そうか、わらわとアイレじゃ役にたたんからのう。ノームたまにはリエンを手伝ってやるのじゃぞ」
「ノームは手伝ってますよぉ、頑張ってますぅ」
「ノームちゃんはよく手伝ってくれて、凄く頑張ってますよ」
「そうなのか、すまんのノーム」
「皆さんが言っている、まだかかるってなんですか?」
凄く気になったので聞いてみる。
「500年前の戦争の後処理よ。土壌と水質の浄化ね」
リエンさんにメイさんも続いて話す。
「そうだのう、天使どもが森の魔物を殲滅するための実験とかでとんでもないことしてくれたからのう」
メイさんが天使の方を睨む。
ソフィーさんが頭を下げて謝る
「その事については弁解の余地はありません。我々天使の責任です」
「なら、後処理もして欲しいもんじゃがのう。こっち任せとはちと虫が良すぎるのじゃ」
気まずい空気が流れる。
「まあ、ここにいる天使がやった訳じゃないし今後の対応も変わることを期待して、今から話しをしよう。ここで話してても仕方ない、とりあえず移動しよう」
アイレさんの一言で空気が緩む。
「ソフィーさんも話が合って来たんだろ。天使と魔物と魔女で話しをして今からの事を決めよう」
こうして話し合いが始まる。
黙っていたがミカは思う。
私が思ってた再会の仕方と違う。もっとこう「ミカだーー!わーー!」って感じだったはずなんだけどな。