アリエル
天使の町の中央にそびえ建つ城の一番大きな部屋に2人の女性が座っている。
その2人の間のテーブルに丸い水晶が置いてあり、その水晶から人の立体映像の様なものが浮かんでいる。
その映像と2人の女性が話をしている。
「そうか、人間と魔物の魂融合率は80%まで上がったか。融合までの時間が3時間なら実践投入出来そうだな。知能の方は?」
「あ~それならね、結構複雑な命令もこなせると思うよ。集団戦とかリーダーの指揮にしたがって陣形を変えるとかね。
人間の知能が高いのが良い結果を出してるね」
「天使の方とは魂の融合は出来ないか?」
「それはほぼ無理だね。拒否反応で死ぬか、ゾンビみたいにウロウロするだけで戦闘能力も皆無だし。人間が一番だよ」
「そうか」
「ただ、一部移植なら上手くいく事もあるよ。魂は混ざりにくいけど体の一部なら馴染んだりする個体もいるよ。それも使ってみようか?」
「へ~面白そうねぇ~」
「あ、トリスさん好きそうだね。そう言うの」
「あら~、分かる~わたしのとこに強くなりた~いって言ういい子達がいるから~使える段階になったら教えて~」
「うん、良いよ。
と言うわけで戦闘データー取りたいんだよねアリエルさん、こないだくれたなんだっけ?」
「翼の騎士団」
「あーそれ、翼の騎士ちゃんじゃ役不足なんだよね。全滅しちゃったし。まあ生きてるのは実験に使わせてもらってるけどさ。もっと強いのが欲しいんだ」
「それなら~丁度良いの呼んでるから向かわせるわ~」
「ほんと!期待してるよトリスさん、あっそうそう、こないだ頼まれたやつ上手く出来たよ!動力にね凄いの使ったから楽しみにしててよ。絶対トリスさん好みだよ」
「本当~楽しみねぇ~」
「じゃ、アリエルさんもまたね」
「あぁ。ご苦労」
そう言って、水晶に浮かんでいた光の魔女の像は消える。
「実験の事になると生き生きしてるな」
「好きなのよ~、良いじゃな~い」
「悪いとは言ってないさ。あれのお陰で計画が現実になり順調に進んでいる」
「アリエルはまじめよね~わたしはドレスが染めれるならなんだって良いけどねぇ~」
トントン
扉をノックする音がする。
「入れ」
扉が開き少女が入ってくる。
「カノン ニーベルング、トリス様により召集され伺いました」
カノンは深々とお辞儀をする。
「カノンちゃん 人間界へ行ってくれるかしら~。なんでも前に灰の魔女を襲ったような魔物が現れたらしいの~。翼の騎士団を派遣したのだけど帰ってこないのよ~」
「はい、出発はいつでしょう?」
「申し訳ないけどすぐに行ってもらえるかしら~手配はしてるわ~」
「はい、すぐに出発致します」
「お願いね~」
そのとき入り口に1人の天使が走って来る。
「で伝令です……あっ」
ちょうどカノンへの指令を伝えているところだったので伝令を止める。
「かまわん、話せ」
アリエルの許可が出て慌てて伝令を伝える
「あっはい、ニサ ニーベルングと魔物を発見し討伐に向かったサキ様、メサイア様、両名敗北、その後行方不明です」
「ほう、あの2人が負けるか」
「2人の捜索はアイネにまかせるわ~、下がって良いわよ~」
「はっ!」
伝令が下がると同時にカノンが
「では私も下がります。準備出来次第出発致します」
頭を下げ出ていく。
「お願いね~カノンちゃん」
そう言ってカノンを見送った後、トリスが口を開く
「あいつ、色々嗅ぎ回ってるのよね~、これで一旦遠ざけれるわ~、うっとうしいのよね~」
「そうなのか?あまり目立った話しは聞かないが。
実験体で始末出来ないぐらい強いのか?」
「あれね~本当は強いのよ~。アイネ隊で実力は3番目になってるけど~アイネ超えてるわね~。恐らく私たちと同じ領域に入ってる気がするのよねぇ~。それに頭が良いの、うっとうしいくらいねぇ~」
「ほう、それは実験の記録を見るのが楽しみだな」
アリエル達の部屋を出た後カノンは思う
(嗅ぎ回ってるのバレてますね。完全に厄介払いの遠征ですか。
まあサッと済ませて戻りましょう。
さっきの伝令を聞くに、ニサは無事なようですね。
サキ様達を撃破したのならかなり成長した感じですか。
次会うのが楽しみです。よしよししてあげましょう。よしよしされてるときのニサ可愛いんですよね。
あーーニサに会いたいです。
おっといけない、お仕事に集中です。
人間界へは久々ですね。そう言えば人間界行ったら何を食べましょうか。あっちの食べ物美味しいんですよね。
前は急がしくて駅内で食べましたが、今回は足を伸ばして遠くへ行きたいですね。ショッピングの時間ありますかね。ニサとメサイアになにかお土産買ってあげましょう。
では着いたらまずは、ガイドブック買いましょうか)
人間界の食べ物を思い浮かべながらニコニコで旅路の支度へ向かうカノン。
周囲からは物静かで、冷静かつ聡明な人として人望も、人気もあるカノンだが、頭のなかは割りと賑やかだったりする。