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灰の魔女 ~アオイ日だまりへ~  作者: 功野 涼し
魔界の森 ~それぞれの戦い~
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水と雷

 空中で飛び散る無数の火花。その火花散るたびにドワーフ達から「おーー」「すげーー」と歓声が上がる。


 サキの大量の手裏剣をニサが鞭状の槍で弾く、そこに分身体が切りかかる。それをもう1本の槍で受けかわす。

爆弾を投げれば水で流しあさっての方向で爆発させる。

槍で突けば刀で弾かれ、刀で斬れば槍で受け流される

 空中で繰り広げれる激しい攻防も下から見れば綺麗な花火でしかない。

 下で見るドワーフ達は知らない、花火の中に2人の血が混ざっていることを。



ニサは戦いながら思考を巡らせる。


ーーーサキ様と分身体は恐らく、同時に同じ武器を出せませんわね。

 それに若干ですけど、サキ様の考えに引っ張られている感じを受けますわ。

 サキ様が刀を出すと大体後から刀を出してきますし。前回、門の前で見た感じとはちょっと違う感じですわね、動きに制限があるような……

 前回見たのはオートモードみたいな感じなのかしら?

まあ、1人で2人分の思考を賄うのは大変ですわよねーーって

「だからと言って、面倒なのは変わりませんの!」


「長引くほどわたくしの方が不利ですわね。まずは1対1に持ち込むこと。なら攻撃に工夫が必要ですわね」


 ニサは空中から地面に急降下し地面に降りる。

「ウンディ」「ノードゥス」穂先のある方の柄と石突の方の柄を水の鎖で繋ぎ、鎖の部分をつかみ頭上でブンブン回し始める。

「セルクル」「ピオッジャ」

 槍はニサを中心に円を描きながら氷の針を上空のサキと分身体へ飛ばす。と同時に氷の針と共にニサが分身体の方へ飛んで突っ込み、ウンディの先端を振り抜く。

 分身体はその攻撃を避けるが、ニサは避けられる寸前に「ネーベル」と呟く。その声に氷が砕け始め空に舞う。やがてそれらは霧になり周囲を覆い始める。


「目眩ましか……」

サキが霧を吹き飛ばす為にホウセンカを爆発させようとした瞬間、分身体の方に殺気を感じる。

 霧の中から飛び出して来たニサは左手に持ったウンディの穂先を分身体の左側へ振り抜く。

 ガチィン!!

それを分身体は刀で受け止める。

「捕まえましたわ!」

右手に持っていた石突の方の柄を構え分身体の右側へ振り抜く。ニサの手をクロスさせた状態で2本の槍が分身体を挟む形になる。

 そして2本の槍はそれぞれ氷を纏い始めそれはやがて刃となり分身体を挟むハサミのようになる。

バキ、バキバキバキ!

分身体にヒビが入り始める。

「クリュスタッロス シュナイデン」

 そのまま振り抜き刃を交差させ真っ二つにする。

分身体は真っ二つに切れたリングに戻り、多数の破片と共に地上へキラキラと落ちていく。


「なに……」

動揺が隠せないサキに向かってニサが切りかかる。

「サキ様、いきますわよ!」

さっきより更に激しく切り合う2人。



 サキは動揺していた。目の前のニサは、アイネ隊長率いる通称「アイネ隊」の5人中で、実力は4番目。

年齢はサキより400年も違うが元々持っている実力とセンスはサキの方が上だった。

 天使における実力は元々持っているものに大きく左右される。

 今のニサの戦い方は、前とは全然違う。優雅な戦い方を好んでいた時とは違い、形振り構わない強引さを見せてきた。


「いつもより、動きが悪いですわよ!」

ニサは2本の氷の槍と言うより氷の刃物で切りける。サキも2本の刀で対抗する。

 さっきまでは刃がぶつかる度に火花が散っていたが、今は氷が砕けキラキラと空中に破片が舞う。

 日の光に反射して光る氷の破片が綺麗なのでドワーフ達から

「これはこれで綺麗だな」

「これ見ながら酒飲みてーー」

など聞こえてくる。


「サザンカ」サキは空中に玉をばらまくが、玉が弾けることはなかった。

「凍っているのか……」

 空中にまかれた玉は凍りつき地上に落ちていった。


 なんなんだこれは、サキは激しく動揺する。目の前の相手はニサなのか?4ヶ月ほど前に門で戦った時とは別人だ。空気が凍りつき寒さを感じる。

リングの力もあるのかもしれないけど、明らかに魔力が上がっている。


「ユリ」「アヤメ」「スズラン」6本のくないを投てきする。2本ほどニサの頬と腕を切り裂くが止まることはなく攻撃をしてくる。

 サキも攻撃をするがその攻撃がニサを倒す為でなく、サキ自身を守る為にのものになっていた事に本人は気付いていなかった。


 一方ニサは必死だった。自分がやられたら、舞は勿論ドワーフ達も殺される。

 相手はアイネ隊の副隊長。年齢は自分より遥かに下で、隊にも後から入って来たのに実力を認められ副隊長になった人物だ。

 当時嫉妬もしたがその実力は本物だったし、口数は少ないが良い人なのは知っている。

 今でも尊敬している、だからこそ一瞬でも気を抜けない。

 今自分の方が少し優勢なのは感じている。でも油断はせずもう1つの攻撃を仕掛ける準備をしていた。


「セレネ」2本の氷の刃をサキに飛ばす。

1本は避けられ、1本は粉砕される。サキが氷の刃に対応している隙にニサは地面へと降りる。

「ピオッジェレッラ」

 ニサがウンディを上空に掲げると空中に漂っていた氷が溶け、水は集まりやがて粒の小さい雨が舞うように降り始める。


そして1本の槍を召喚する 「トルデォン」


「この霧みたいな雨、また目眩ましか」

身体中にまとわりつくような不快な雨に少し苛立ちを感じながらニサを探す。下を見るとニサはいた。見たことのない槍を持って。

 先端が光っているのか?それがサキがこの戦いで覚えている最期の記憶となる。


 穂先が銀色で柄は灰色。装飾品もなく地味な槍だが、穂先を中心に電撃が走り続け、装飾品以上の美しさを魅せる。

 ニサは槍を振り回すと空を大きく切り裂くように槍を振る。

「ブリクスト」


電撃が空中を鋭く走る。それは空中に漂う雨の間を走り始めサキを焼き付くす為に縦横無尽な稲妻となる。


バリバリバリバリッ!


稲妻が納まると電撃であちこちの皮膚が裂け、焦げたサキが落ちてくる。


「や、やりましたわ」

ニサは槍を杖がわりになんとか立っている。

 サキとの戦いに勝ったとは言えそれなりにダメージは大きいし、魔力の使い過ぎによる疲労感も大きく、立ってるのがやっとだった。


 

 なんとか立っているニサを倒そうとメサイアが斧を構えると同時に

「チビッ子!あたしが相手してやるよ」

舞がメサイアの前に立つ。

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