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灰の魔女 ~アオイ日だまりへ~  作者: 功野 涼し
魔界の森 ~それぞれの戦い~
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永遠を生きること

「葵ちゃん、重心がぶれてるわ」

そう言われて私はリエンさんの蹴りによって吹き飛ばされる。

「あいたたた、もう一回いきます」

私は池に刺さってる棒の上に戻り、リエンさんと打ち合いを始める。


「いい?葵ちゃん、魔女の強さの1つとして形にとらわれないことがあるわ。例えば……」

リエンさんは水の棒を出す。

「棒で戦うと見せて」

棒を私に振ってくる。それをかわすが

「槍だったりする」

避けたと思った棒の先が槍の穂先に変わっており私の首元に当たりそうになっている。

「トリッキーな攻撃に頼り過ぎてもいけないわ。武器の基本が出来てこそ攻撃が生きてくるの」

 

 そう言いながらリエンさんは武器の形状を次々に変え打ち込んでくる。

「いい、葵ちゃんなんとしても生き残るの。魔女の戦い方を卑怯だと言われるかもしれないわ。

それでも良い生きるのよ」

 そう言うリエンさんは、いつもより強く打ち込んできた気がした。


 修行が終わってリエンさんとお風呂に入っている。リエンさんと入ると女性としての自信を無くす……

「リエンさん私って成長するんですか?」

自分の胸を触りながら言う

「体のこと?なら無理じゃないかしら。魔女としてアニママスと完全に融合したときで年齢は止まるわ。葵ちゃん覚醒しちゃったから多分そのままよ」

「がーーーーん」

私はかなりショックを受ける。


「ふふ、でもね魔女として覚醒するだけでも凄いことなのよ」

「そうなんですか?」

「わたし達魔女が適正の有りそうな人にアニママスを渡しても、魂がうまく混ざらず覚醒しないままだったり、拒否反応が出て最悪、死ぬこともあるわ」

「え、私死ぬ可能あったんですか?」

「あったわよ。ただ火の魔女ちゃん自身の魂が混ざったから確率は低くなったでしょうけどね」

「そうだ!今さらですけど火の魔女さんの名前ってなんですか?」

「ミーテ、優しくて人の痛みに敏感な子。なのに自分の痛みに鈍感な子。

魔女の実力は凄かったけど、一番魔女に向いていない、そんな子だったわ」

「ミーテさんか……」

なんとなく胸の辺りを押さえる


「葵ちゃんは自分の体嫌い?」

「え!体?いやその……リエンさんより貧相だし、傷だらけだし……」

「いい、傷は二度と消えないわ。わたし達、魔女は永遠を生きるけど死ねない訳じゃないの。

刺されば血は出るし、傷も残る。悲しみも、苦しみも感じるの。

永遠を生きることは寿命からの解放と同時に、苦しみや、悲しみを永遠に背負う事になるの」

 

リエンさんに背中から抱きつかれ動けなくなる。

「葵ちゃん明日ここを出なさい。魔女の基礎は教えたわ。

 もっと色々教える事はあるのだけど、その前にやらなければいけないことがあるの」

「やらなければいけないこと?」

「相手の命を奪うこと。これが出来なければどんなに強くなっても意味は無いわ」

「……命を奪う」

「前に生きていた場所とは違って、ここは命のやり取りがある場所。

 天使は葵ちゃんを殺しに来るわ。それは魔女を倒すため。葵ちゃんがどんなに無害だったとしても関係ない。そんな相手に話しは通じないわ」

「……」

「ここにいては、経験出来ないこと、相手の命を奪い生き残ること。これが出来て、葵ちゃんの用事を済ませたら戻ってきて」

「命を……」

「まだ、葵ちゃんは魔女見習いよ。教える事沢山あるのだからちゃんと生きて帰ってきてね」

 私の言葉を遮るように、更にギュッと抱き締められる。


 その夜リエンさんと一緒に寝た。リエンさんに抱き締められたまま。

 考えたことなかった。生まれて17年くらいの私が永遠を生きる存在になる。不老であって不死ではない存在。

 それは生きる限り出会いと別れ、喜びと悲しみを経験し続けなければならない…………

 命を奪う、そうしないと生き残れない。私に出来るだろうか。なんとなく手のひらを見てみる。


あーー考え過ぎた、考えても答えは出ないや。


 隣で寝るリエンさんをみる。

リエンさんも長い間を生きてきて色んな経験してきたんだろうな。

 私はこの人にとって楽しい記憶として残らなきゃ、悲しませちゃいけない。そう思いながら眠りにつく。



 次の日の朝、朝食を済ませた私はリエンさんの結界から出てミカ達を探しに行く。

「いい、帰って来たら修行の続きがあるわよ」

「えーー、帰りたくないです」

「ふふ、ちゃんと紅茶も用意してるから帰ってきなさい」

「はーい、じゃあ行ってきます」

「はい、行ってらっしゃい」


ミカの背中を送る

「いつになっても別れる瞬間は慣れないわね。

ミーテ、貴女の最後の魂の選択、間違ってないわよ。葵ちゃんは凄くいい子だもの。

 貴女の約束とあの子の為にここを守り続けるわ」

リエンは涙で潤んだ目を擦りながら

「さて、紅茶の葉を準備しないといけないわ。お布団も干そうかしら」

少し広くなった家の掃除を始める。

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