相談
「今の話、詳しく聞かせてもらおうカ」
「あそこのスタボでじっくりとネ」クイッと親指を立てて後ろの建物をミカは指す。
「スターボックス」アメリカからやって来たコーヒーチェーン店。略して スタボだ。
初めての時は注文方法に手こずっていたが、今はスムーズに注文できるようになった。
季節限定のストロベリーカフェラテを2人とも注文する。
「また奢ってもらってすまないナア」
「いや良いよ。この話を誰かに聞いて欲しかったし、むしろお願いするから奢らしてよ」
「ン、それでもありがとう。それジャ、話なんだけド」
「あ~えっとね……」
私は停電の夜、コンロの火を動かせたこと、その後の火の実験のことを詳しく話した。ファイヤートルネードを噛んだことは内緒にしたけど。
それとバスで声が聞こえたことも話した。ミカは笑う訳でもなく真剣に話を聞いて一言
「その声まだ聞こえるカ?」
私は首を横に振る。
「ンー不思議現象だな、アオイの体調に問題がなければ良いんじゃナイ?
なんにも解決してなくて悪いけど、体調とか悪くなったら言ってヨ」
ミカの優しい笑顔に気が軽くなった気がした私は心からお礼を言った。
「うん、人に話したの初めてだしなんかちょっと楽になった気がする。ありがとう」
「ワタシは和、洋スイーツ奢ってもらったし満足しかないゾ」
「後、アドバイスになるか分かんないけど火を操るのはやめといた方が良いと思うヨ。よく分からないものは関わらないのが無難ってヤツだ」
「そうかな、まあ使い道もないしその辺問題ないと思うけど」
「そうか、なら安心ダネ」
「今日はありがとう、また明日学校で」
「こっちこそありがとうナ 気をつけて帰れヨ」
「うんまたね」
ミカと別れの挨拶を交わし、なんとなく軽くなった気がする足で家路に向かう。
葵を見送った後、ミカは後ろを歩いていた20歳前半の社会人らしき女性に話しかける。
「さて、盗み聞きとは感心しないな」
薄い茶色の髪を後ろにピッチリと束ねたポニーテールに細く切れ長な目。
その瞳は濃いめのエメラルドグリーン。背も高くスーツをスラッと着こなしたハーフ美人ぽい外見だ。
そんな女性に対し、ミカはいつもの可愛らしい顔ではなく、威厳と厳しさのある顔をして女性を睨む。
そしてその言葉にはカタカナは混ざっておらず普通に話している。
「申し訳ありません、私も仕事ですので」
ミカに深々と頭を下げる。
女性の方が歳上にしか見えないのに女子高生に深々と頭を下げる光景は周りから見たら異様な光景だろう。
「大体この件は私が見極めるって話じゃないのか?なぜおまえがいる?」
「トリスの指示か?」
「申し訳ありません、お答え出来ません」
「あいつなら話せないか……まあ良い、あの子は私が見極めるから手を出すなよ」
「……」
無言ですれ違う二人。
女性の背中を見送った後
「ゆっくりと時間をかけて見守るつもりだったけど、トリスか……あいつが関わると絶対めんどくさいことになるんだよね。さてどうしたものか」
空を見上げてミカはため息をつく。