クレープ会
「和風一本堂」
大正時代から続く老舗。最近4代目に引き継いでから目新しく斬新な商品を出し始めたお店である。
「これは美味しいナ 噂に違わぬ上品な甘さ。それにこの和栗が良い仕事をしている!」
「幸せだぁ……」
背景に花が満開してそうなミカが幸せそうな顔で熱く語る。
「本当に美味しいね。このお店、先代から息子さんに代わって面白いメニュー出してくるし、攻めるよね」
「ただ、納豆とかナポリタンクレープは攻め過ぎな気もするけど」
「イヤ、案外そう言うのが旨いのかもしれないゾ」
「いやそれはないはず……」
少し気になる……まあ、買わないけど。
あまり並ばずに買えて、クレープも美味し今日は充実してるなぁとか思っていると
「そう言えばアオイ、ホントに奢ってもらって良いのカ?」
ミカが申し訳なさそうに聞いてくる。
「良いよ、クレープのこと教えてくれたし、誘ってもらったお礼」
「カタジケナイ、借りは返すゼイ」
「変な日本語使わない」
くだらないやり取りをしている中、なんとなくミカに
「ミカはなんで私に優しくしてくれるの? ミカは可愛いしクラスでも人気あるし…私より…」と聞いてしまった。
ミカは一瞬目を大きくしたが、ゆっくり答えた。
「始めは興味?どんな人だろうッテ。でも今は人間、アオイそのものが好きカナ」
「クレープ奢ってくれるしナ」そう言って笑顔を見せるミカに対し
「それって、他の人からの誘いを断ってまでの理由にならない気がするけど」
とつい、突っかかった感じで言ってしまう私。
その言葉に対しても嫌な顔もせずミカは答える
「ンーー、結局ワタシがどうしたいかジャン」
「とにかく、アオイといるのが楽しい。だから一緒にいるナ」
と天使の笑顔で言われてしまったら何も言えない。
「あ、うん。分かったありがと、なんか恥ずかしぃ」
「そ、そう言えば全然関係ないんだけど、もしさ私が火を操れるって言ったら信じる?こうぐるぐるって感じで」
ミカのセリフに結構恥ずかしくなった私は、話を反らす意味でもなんとなくそんな事を口にしていた。
その瞬間、ほんの一瞬だけどミカの綺麗なエメラルドグリーンの目に鋭い光が宿った気がした。