ギリギリセーフ?
あのファイヤーボール以降、牛おとこの攻撃はあからさまに激しくなった。
しかも正確にパンチを繰り出してくる。
ギリギリで避けてはいるが拳が体の側を通った後はピリピリする。
まだ体力はある、問題は集中力が続くかだ。
もう何度目か分からないパンチが飛んでくる。
右は壁、左側には牛おとこが粉砕したであろう瓦礫がある。横には避けれないか……
それならとバックステップの要領で後ろへ飛んで逃げる。
そんな私を牛おとこは前屈みで追従してくる。
右手?左手?
集中して拳の動きを見ていると下に嫌な感じが!!
ザッ!!
「足!?」
牛おとこは右足を蹴り上げ私の顎の辺りを狙う。
顎を反らしバク転をする感じで避ける。
「!?」
少し顎が切れたのか鋭い痛みが走る。
着地した私が前を見るともう目の前に牛おとこの頭があった。
ドン!!
鈍い音がする。
頭突きをお腹に食らった??
いや、何かおかしい、
左の脇腹に牛おとこの角が刺さっている!?
「がっ!??」
痛みのあまり声が出ない。牛おとこは私を串刺しにしたまま頭を持ち上げる。
「あぁぁぁ……」
声なのか叫んでるか分からないうめき声が出る。
牛おとこは大きく頭を振り私を壁へと吹き飛ばす。
ドゴッ!!
「かっっ……」
壁に叩きつけられた私は肺から空気が漏れたような音が出て、息もできない。
そんな私に牛おとこは間合いを一気に詰め右の拳を大きく振りかぶり私の頭を粉砕するであろう拳を振り下ろす。
あぁ終わった……
ガシィ!!
誰かが私の前に立っている。
ミカ?
遅いよ全く……
そのまま意識はなくなる。
牛おとこの右拳を右手で受け止める少女。
葵と同じ制服を着て、腰まで伸びる綺麗な黒髪の彼女は葵の方を見て
「ちょっと遅かったかぁ。わるいことしたな」
気まずそうな顔で見る。
「とっと終わらして手当てしないとな」
そう言って牛おとこを見ると
「と言うわけだ。速攻で行くぜ!」
黒髪の少女は握っていた牛おとこの拳を押すように離すと牛おとこは後ろに少しよろめく。
次の瞬間少女は牛おとこの後ろに立っていた。
さっきまでの状況と変わったことは3つ
「牛おとこの首が無くなっていること」
「少女が大きな鎌を持っていること」
「少女の腰まで伸びていた黒髪が今は肩までしかないこと」
「さあ、急がないとミカに連絡しつつ移動するか」
少女は葵に簡単に止血を済ませると抱えて走り出した。
「とりあえずあたしん家が近いか、振動与えないようにダッシュだ!」
少女は葵を抱え、その綺麗な腰まである黒髪をなびかせながら走り出した。