光の強さ
炎と光がぶつかると激しい光と熱を放ちながら飛散していく。
お互い武器の形状を変えながら、間合いを変えて戦っていく。
この状況で私に有利な武器は銃の形状を取ることだが、なんとなく嫌な予感がする。
イグニスをショットガンに変え弾を散弾させる。弾はケルンに届くことなく光の壁に阻まれる。
「な、なにそれ!」
私はケルンの持つ武器に驚く。それを見て嬉しそうに答えてくれる。
「凄いでしょ。君がさ、銃なんて形状取るから真似してみたんだ」
ニコニコしているケルンの手には光るガトリングガンが握られ構えている。
「じゃあいくよーー!」
ズドドドドドドド!!
ガトリングガンが回りだし物凄い数と威力の弾をばらまき始める。
周囲の家の壁や地面をえぐり私が張っている炎の壁にあたる度に火が弾ける。
私は走りながら物陰に飛び込む。
「イグニスあれやってみるよ」
(了解しました!)
転がって弓の形状を取り5発上に向かって打つ。炎の矢は弧を描いてケルンに向かうと周りをぐるぐると縦横無尽に回り始め火の軌跡を描きつつ火の粉をまく。
そのまま火の矢は5本同時にケルンを刺しにいく。
「爆炎塵華」
ズドーーーーーーン!!
ケルンを中心に爆発が起こる。
爆風に散った火の粉を集め回す。火の粉を繋げ大きな炎のうねりを作りファイヤートルネードを作り出す。
凄い熱量の火の渦は光によって弾け舞う。
「また面白いことするね。多少の起動変更や起爆は出来るけど、ここまで複雑な命令をこなすのはアニママスとの連携が出来てないと無理だね。
やっぱりきみは面白いよ」
焦げ1つ付いてない顔で笑う。
「やっぱり本物の魔女は強いね。今の結構自信あったんだけどな」
炎の槍を振るいながらぼやく私にケルンは楽しそうに話しかけてくる。
「きみさあ、魔女になって1年も経ってないよね。それでこの強さ。いくらミーテの魂が混ざったとは言え才能ありまくりだと思うよ。
発想も面白いし仲良くなれそうなんだけどなあ」
「じゃあ、仲良くなろうよ」
「んーーやだ!今はきみが泣く顔が見たいな」
そう言った瞬間にケルンはいつの間にか私の左側に立ち剣を下から振り上げていた。左腕に盾を展開しガードをするが盾が斬られ、光の剣が私の左腕に食い込む。
(まずい、腕が切られる。内側からもっと内側から火を!)
左腕に炎の渦を生み出され光の剣を弾く。刃が食い込んだ場所から血が流れ出る。
「ほらそう言うとこ、きみさ魔女見習いとかのレベル超えてるんだよ。今の普通なら腕飛んでるよ。
なんとかの魔女を名乗れるのはその系列で1番の実力者のみ。
今、火の魔女はいないから、きみが名乗っても良いんじゃない?メイも文句言わないだろうしさ。
発展途中でその火力なら将来有望だろうしね」
「ミーテさんのことは詳しく知らないけど、その火から産み出された存在なら灰は相応しいし気に入ってるから、私は灰の魔女!」
体を中心に火の衝撃波を放つと両手、両足に炎の渦を巻きケルンに接近戦を挑む。
赤い軌跡を無数に残しながら拳と蹴りを打ち込むが全て避けられ逆に蹴りをもらう。右手でガードをしたが吹き飛ぶ。
右手で地面を受け宙返りで立つ。
「ここで接近戦での戦闘かあ……メイの入れ知恵かな?
あの人さあ、結構脳筋でしょ。考えが単純。
って言っても魔女の連中はみんな頭固いからねえ」
ケルンが普通に話しながら物凄いスピードで攻撃を仕掛けてくるのを私は必死で防いでいる。
「そうそう、天使も面白いよね。今の現状に気づいてない連中も笑えるけど、アリエル達に今の案を提案したのもわたしだよ。
人口の削減と、人間界の進出ってやつ。
困ってたんだろうね、現実を知ってる天使は飛び付いたよ。
人の道から外れてることに目をつぶりながらも必死で頑張ってたよ。
お陰でわたしの研究も進んだけどね。
魔女食いも教えてあげたよ。手っ取り早く強くなる方法としてね。
アニママスはわたしが渡すのは拒否したからね。そっちのが面白そうだったからさ」
ケルンのハンマーを受け止めるが吹き飛ばされ転がる。
「それからね、ミーテを殺したのはアリエルとトリスだけど。わたしも手伝ってるよ。
よく考えてごらんよ。天使が魔女食いしたところで魔女に敵う訳ないでしょ」
斬られ、殴られて血を流しながらも立ち上がる。
「それも好奇心と、暇潰しでやったの?」
「そう正解。他の方法も考えればあるんだろうけど、1番面白そうなやり方を選んだんだよ」
「そんな理由でこんな事をするんだ」
イグニスの銃弾を数発打ち込み、その軌跡に火を伝わせる。火の筋に火を流し続けケルンを炎の渦で押し込む。
光の剣が伸び炎を切り裂くのと同時に私も炎を長い剣にして切り裂く。
お互い胸元を少し斬られ血が飛ぶ。
「やっと一撃かあ、先は長そう」
私の独り言に自分の胸元の血を見ながら嬉しそうに笑う。
「いいよ、本当にいい!今まで生きてきてこんなドキドキするの始めてだよ。
戦いの途中で成長ってあるんだろうけど、きみは勢いが違う。
次はどうなるかと考えると、ワクワクするね」
心から楽しそうに笑うケルンに対し内心かなり焦っている私だった。