王子をぶっ飛ばそう☆
皆さんは悪い敵をたおす正しい方法を知っているだろうか。
なに?撲滅?殲滅?破壊?違う違う。そんな生ぬるいことじゃない。
正解は・・・相手の心を折る!でした。ポッキリじゃないよ?
バキバキ、ボッキボキにして修復不可能になって、悲鳴が上がるまで・・・・ね?
そのためには、物理攻撃じゃなくって精神的攻撃。貴族の皆さんはドロドロとした足の引っ張り合いに慣れてるみたいだから、思いっきりやっても全然平気だよねっ!
うんっ。そうに違いない!思いっきりやってやろっ☆
*****
皆が寝静まったと思われる真夜中。夜は私の独壇場だ。王宮の警備なんてかるいかるい。
なんせ、地球で通っていた高校の友達には『暗殺者』と呼ばれていたのだから。
全くひどい話である。足音もなく忍び寄ったり、気配を消したり、4階の窓から校庭に飛び降りられることのどこが異常なのだ。どこが!!
私はただの運動神経がいいだけのごくごく普通の女子高生だっつの!!!!!
ふふっ。なんか滅茶苦茶ムカついてきたぁ。
レイアはそうして凶悪な笑みを浮かべた。
(この恨み、晴らさでおくべきかっっっっっ!!)
完全な八つ当たりであった。
レイアが脳内一人芝居をしているうちに、王宮のある一室の前についた。
そこでは国の重鎮たちと、あの王子が話し合いをしているところだった。おそらく・・・・アノ事。
わざわざ人目のつかない深夜に会議をしているし、言い逃れはできないよね。
そうっっ!だから、ボコボコにされても文句は言えないよねっ
(どんな乱入の仕方がいいかな〜)
こんなことを楽しそうに考えてはいるが、レイアは怒っていた。それはとてつもなく。
(よしっ。決めた。ぶち壊そう!どこかのアイドル様が、「目の前のガラスを割れ!」っていってたもんね。なら私は、目の前の壁をぶち壊さなくっちゃバチが当たるわ。)
誰もバチなど当てないが、レイアには言うだけ無駄である。
「せーのっっっ」
ドッゴォォォォォォォォォォン!!!!!!
「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」
派手な破壊音をたてて、レイアは部屋の壁を丸くぶち抜いた。
「敵襲か!?」
「一体何が起きたのだ!!!」
そんな慌てる声がする部屋の中にレイアは堂々と入っていく。
部屋の中を見渡すとあわせて12人ほどの貴族や重鎮たちと、あの王子がいた。
何人かは、さっきのちょっとした爆発で恐怖のあまり腰を抜かしたり、白目をむいて気絶してしまっていた。
王子も例外ではなく、腰を抜かしてへたり込んでいた。
「レ、レイア様・・・。一体何のつもりでしょうか?会議を襲撃するなど、いくら神官様であっても許されるものではありませんよ!誰か!誰かおらぬか!衛兵!!」
後半はもう恐怖はなく、怒りへと変わっていた。
「ふふっ。大声で呼んでも無駄です。遮音結界を張ったからね。そうだ、敬語はもう疲れちゃったからこれでいくからね。」
さっきまで強気だった王子の顔が恐怖で引きつった。
無理もない。目の前には黒いオーラをまとったナニカがいるのだから。
これがなんなのか。わかるのは人ではないということと、自分たちが決して怒らせてはいけないモノを怒らせたということだけだ。
だが、今聞いていただけなら自分たちの企みはバレていないはず。
愚かにもそう考えた王子は弁解を始めた。それが逆効果だとも知らずに。
「ご、誤解だっ。私たちが話していたのは・・・そ、そう!西の村の交通をどうするかで・・・」
ドゴォォォォン!!!!!!
苛ついたレイアが右手を壁にたたきつけたことによって、完全に壁が崩れた。
「言い訳は結構だ。何も知らないと思って調子に乗るな。この売国奴めが。この私が何も知らないとでも思ったのか?証拠は揃っている。さっさと諦めるんだな。」
「しょ、証拠ってなんの?」
王子様、声が震えている。せっかくのイケメンが台無しだ。
「そうねぇ・・・。例えば、国の内部情報を他国に渡して国を売り渡してたこととか、それを邪魔しようとする国王に薬と偽って毒を飲ませてたこととか、あとは・・・・」
「も、もう勘弁してくださいぃ~~~っっ」
黒い笑みを浮かべながら容赦なく罪を公にしていくレイアに、王子の泣きが入った。
が、ルイス王子はふと疑問を抱いた。
(どうやって警備が厳しい王宮にはいった・・・・??これではまるで――――)
「暗殺者・・・・・」
「あ"??」
・・・・・・・・・地雷を踏んだ。
次の瞬間爆音がなり、部屋が崩壊。後に悲鳴は聞こえなくなり、静まりかえった…
次の朝、部屋が破壊されていることに気づいた侍女たちが部屋の中で目にしたのは、なぜか顔が何者かにボコボコに殴られたように腫れている王子と貴族たちであった。
******
カッカッカッ・・・
お仕置きの後、家へ帰るべく彼女は王宮の通路を歩いていた。
(あの馬鹿王子には堅~く口止めしといたから、大丈夫だろう。)
どうやって口止めしたかは、あえて言わないでおくが。
だが、あいつらとつながっていた真の黒幕の国がまだ倒せてない。だが、レイアはどの国かわかっていた。
おそらく黒幕は・・・・
「ガジルム国・・・・・。」
「まったく悪い子ねぇ・・・。そんな悪い子は・・・・」
レイアの苦々しい声とは裏腹に、その顔は子供が新しいオモチャを見つけたような楽しそうな笑顔をしていた。
もっとも他人からみたら、そこに浮かんでいるのは獰猛な笑みだったが・・・。
「ぶっ潰してあげる」