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いきなりの異世界召喚


 大理石っぽいもので造られた床と柱に、光り輝くシャンデリア。その中央に座り込む私。


 (・・・・ふざけんなっっっ!!。)




 ――――――時は2時間前に遡る――――――


・・・・お母さんお父さんいってきます。


棚の上の写真に挨拶をして家を出る。私の両親は11年前のゴールデンウィークに家族3人で遊園地に出かけたとき、向こうから走ってくる男に刺されて死んだ。私をかばって。

当時私はまだ7歳だった。だけどそのときのことは18歳になった今でもよく覚えている。

  

私の名前は黒瀬くろせ 麗愛れいあ。現在叔母さんの家においてもらっている。仲は……悪い。てかほとんど喋らない。おいてもらってるだけで、料理とかは自分でやっている。幸い頭の方はかなりいい。・・自分で言うのもなんだが。だから大人になったらバリバリ稼いで私を見捨てた奴らを見返してやるっ。

 

そう決意を固めていた時、――――『ソレ』は起こった。

足下に、世に言う「魔方陣」らしきものが現れ麗愛を光で包み込み眼を開けたらそこは全てが白い空間だった。

 


「はっ?!なにここっ。ちょっ、誰かいる?」                               

 

「はぁ~い。いますよぉ。突然ごめんねっ。私の名前はルヴァナ。ルナってよんでね。一応、女神で-す。実は、あなたは異世界に召喚されることになりました!おめでとうございまーす。」    


突然出てきたのはぽわぽわしてそうな・・いや、している20歳くらいの美女だった。         

 

 (ってか登場の仕方こわっっ)

 

 無理もない。いきなり目の前に霧のように出てきて自らを女神と名乗るやつを怖いと思うのは当たり前・・・というか、「何こいつヤベぇ」となるのが普通である。

そして常人ならいろんな情報に耐えきれず頭がパンクしてしまうだろう。


 ・・・常人ならの話だが。麗愛は通う高校が全国でもトップクラスだというのにもかかわらず、テストでは三本の指に入るほどだった。


 「あ~なるほど。んで何してほしいわけ?勇者になれ~とか、そゆこと?」

 

 「はいっ。勇者になってもらいたかったんですケド・・少しというか、なんていうか“ミス”をしちゃって・・・・」


「ミス?なに?言ってみなさいよ。」

 

 麗愛、女神様に対して偉そうである。これが神父とかの前だったら、きっと神父様マジギレだろう。

 

 「あのですね、じ、実は職業を『勇者』にしようとしたんですが、誤って私とおんなじ『女神』にしてしまいました・・・・っっ!」                                      


「あ゛?」


「っ!ひぃぃ~~や、やめてくださぃ。あなたはもう『女神』なんですから、ソレができちゃうんですからぁ」                                              


 おや、どうやら考えていることがわかるようだ。さすがは女神様。あ、私も女神か。でもちょーっと細切れにしてやろうと思っただけなのだが、半泣きになるほど怖かっただろうか。   

 ・・・ん?待てよ        

 

「ねえルナ、それって、私にできないことはほぼ無いってこと?」                         

  

 「ふぇっ?あっはい!なんでもです。まあ世界を滅ぼす~とかじゃなければおおむね平気だと思いますけど・・・」   


 「よし、許す。」


 「やった!・・・なんでですか?」

 

ルナの満面の笑みが一瞬で疑いの顔になる。そんなに信用ないか?私。

 

 「だって好きなようにできるんでしょ?元の世界にいたって私のことを待っていてくれる人なんてどこにもいないし・・」


 「そ、そうなんですか・・・。」


 「そこで要求があるわ!一つ目、召喚されたとき、このビジュアルじゃあいろいろ不便だから望みどおりにつくりかえさせて。二つ目、なにか特別なスキルを選ばせて。三つ目、女神といえど死なないようにある程度は強く。以上よ。」             


 「わかりました。お安いご用です。ですが二つ目と三つ目は心配無用です。同じ女神として、私の方からテキトーに手を加えますので。一つ目は私があなたを送り届けるときに眼を閉じて強く願っていただけたら大丈夫です。ちなみにどういう容姿になりたいのですか?」


「そうねぇ。実は守ってあげたくなるような美少女になりたかったのよね。いろいろと便利そうだし。」


 そう、現在の私の容姿は悪くはないのだがどこぞの悪役令嬢だよと自分で突っ込みたくなるくらいのキツいお嬢様タイプなのだ。こんなんで異世界に行ったらびびられること間違いない。


「そうですよnヒッ なんでもないですなんでもないです。」


私の心を読んだからなのか、殺気を感じたからなのかルナはまた涙目になった。

  

「うぅ。それでは、あなたを送る世界について説明させて頂きます。あっ、そういえば名前はなんですか?」


黒瀬 麗愛(くろせ れいあ)よ。」


「麗愛さんですか。えーと、麗愛さんが召喚される世界の名前は『トレスティア』といいます。この世界は約120の小国が3つの大国に従う形になっています。」


「つまり実質3国しかないのね?」


植民地のようなことかもしれない。


 「はい。北、東、西に分かれています。北の国は『ティリア国』商業が発展した国です。東の国は『聖ミスリア国』女神に祈る・・つまりこの私の宗教国家ですね。そして西は『ガジルム国』・・・軍事に力を入れている国家です。」


さっきまでの明るさが消えた。あのガジルム国とやらが原因だろう。軍を強化しているということを聞けば何かあることは察せる。


「そして、なんで私は召喚されるの?世界を救えとかそんなとこだとは思うけど。」


「確かにそんな感じなんですが、実は・・・・・・・・・『ガジルム国を滅ぼしてほしいんです。』」


 覚悟を決めた顔で、ルナはとんでもないことを依頼してきた。

 うん。何言っているのかなこの子は。

 世界を救うはずの奴に国を滅ぼすのを依頼するとか、頭がおかしくなったのかな?

  

 でも、それより気になるのが・・・・

 

  (世界じゃなければセーフなんだ・・・)


  いまいちアウトとセーフの違いがわからない・・・などと、国を滅ぼす話をしているのにマイペースな麗愛であった。


 どうやらエルの話ではジオラル国は、他の二国を侵略して世界を我が物にしようとしているらしい。


 本来人間の争いは放っておいても平気なのだが、今回は『試練』があるのだという。どの世界も一定の時が来ると、その世界が滅びの危機にさらされるらしい。

 ()()()()が昔決めた法によって。その“試練”があるときに私のように別の世界から人が呼ばれるのだそうだ。

 そして今回、神の手駒の()()に選ばれたのが、ガジルム国だという。

 ・・・そう。1つである。


「1つ?まだあるってこと?」


「・・・・・・・・」


いやな予感がする。


「ねぇ、その“とある神”ってまさか・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・・テへっ♡」


いた。犯人がここに。

ダメだこいつ・・・。


 (張り詰めた空気だったのに何してくれてんだこいつ・・・人が真剣に聴いてるのに。)


 「はいっ説明は以上です。と、いうことで、このまま召喚されちゃってください。あっ、姿のイメージ忘れずにね。そんじゃあとはよろしく!!」


それだけルナは早口でまくし立てると私を送ろうとする。そして純白の光が私を包み込む。


「ちょっ、まっ。逃げるなルナ!」

「まったねー」


そうだ!召喚の時になりたい姿のイメージしなくっちゃ!

だがあいにく、もうそんな時間はない。光が麗愛を包み始める・・・。


(と、とにかく美少女ぉ~~~~っっ!!!)


そしてルナの姿が光に遮られて見えなくなった――――――。



  *  *  *  *



 (まてって言ったのに、あの馬鹿女神めぇぇ・・・自分に都合が悪くなったからって問答無用で送りやがった・・・それはそうと状況を把握しなくちゃ。とりあえず、周りの反応からしてビジュアルのほうは大丈夫みたいね。)


 麗愛は周りを見渡した。自分を囲んで喜ぶ人々。いい服を着ていることから見て、貴族だろう。           

ん?貴族がこんなにいるってことはまさかここ・・・王宮!?


いろいろ考えていると、目の前にイケメンがいた。


「突然お呼びして申し訳ありません。私はこのトゥラリア王国の第一王子のルイス・トゥリアと申します。我々の国の危機をあなた様に救ってもらうべくお呼びしました。」


いきなり王子キターーー!!!ってか美形率高っ。王子の後ろの側近らしき人もレベル高すぎないか?

 王子が話す内容はエルと同じでガジルム国に困っているとの事だった。あと、どうやら私のステータスを確認したいらしい。


「これを握りしめ、心の中で“ステータス”と言ってください。」

王子からルビーのような小さな赤い宝石の欠片を渡された。


 (ステータス・・・・)


 その瞬間、周囲からざわめきが起こった。


「職業が神官・・・・だと・・・・??」


「なんだこのスキルの数と魔力量は・・・今までの勇者とは格が違う・・・。」


「おい!それより石を見ろよっ。魔力測定石がとてつもなく濃い青になってる・・・・・っっ。」


 その声に驚いて自分の手の上の石を見ると、濃い青になっていた。

 

 聞いてみると、赤が青に近づくほどその人物の能力の高さを示しているらしい。だが歴代の勇者でもせいぜい水色くらいが最高だったそうだ。

・・・そして私の持っている石の色は黒に近い青だった。


 (ふふふ・・・うまくいっているようね・・・・)


「神官様!では、こちらへどうぞ。この国についてご説明させていただきます。」   

                     

そして部屋に通され、王子と私の今後の方針のついて話し合った。           


    

   *  *  *  *  *



 「そうですね、神官様はこちらに来て間もないですし世界を救うにあたってこの国をことをよく知っていた方がいいと思いますので、我が国の学園に通うのはいかがでしょうか?」


「そうですね。その方針でお願いします。」


  


 

 なんやかんやあって、やっと部屋に案内された。これで休めるわぁ。


 そしてもう気付いている人もいるだろう。彼らが“女神”であるはずの私を“神官”とよんだことに。


 実はステータスをそのまま見られて個人情報が流出するのを防ぐため。数字や職業を直前にいじって変えたのである。勇者にすることは出来なかったけど、属性が似ている神官にならなんとか変えられたのだ。


 そして、学園に入ることを了承したのはこの国をもっと知るため・・・と、この国の裏を見るため。


 さっき人の良さそう顔をしていた王子だけど、どこか怪しかった。これは、女神としての勘だ。

それに、国の一大事なのにトップである国王が出てこずに、王子が出てきたのもおかしい。病気かもしれないと思ったが、説明もないし、その可能性はないだろう。


 そして、同時に麗愛はこんな恐ろしいことを考えていた。

   

  (悪い子には、お仕置きしなくっちゃね。ふふふ・・・滅びのお時間よっっ)

        

             *   *   *   *   *

 

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