表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハナコさん、暴れすぎッ!  作者: 鷲空 燈
第2章 『狂気の狭間』【馬殿美冬】
13/49

第11話 【狩りの極意】

【6月12日 午後15:55】


 刃那子は、ハンドルに頭を押しつけた。

 目を閉じて、探偵の電話を、一言一句思い返す。



『俺だ……いや、進展はない。樹神幸子(こだまさちこ)は依然消息不明だ。ただ……

 

『……いいか、刃那子。落ち着いて聞け、樹神幸子は、お前が転校してから一ヶ月後に家出をして、それっきり学校には行っていない。……家にも戻ってないんだ。

 

『当時のことを、高畑麻由子――あぁ、彼女は、樹神幸子のクラスメイトだった女性だ――彼女から話を聞いた。お前が転校してからすぐに、樹神幸子の、ある噂が立ったんだ。


『樹神幸子()、千葉山和也という男を誘惑して、身体の関係を持ったって噂だ。


『それを聞いた名城祐子が怒って、樹神幸子をいじめ始めたそうだ


『高畑真由子が言うには……いじめは、相当ひどかったらしい


『毎日弁当に、ドロを入れられ……


『体操着を破かれ……


『トイレに閉じ込めて、水を掛けられ……


『主犯格は……馬殿美冬、群雪菜、三箇典子、それに名城祐子……お前が言っていた、()()()旧友四人だ。……おい、今どこにいる? 早まるなよ? まだ裏は取れて……』


 刃那子は、ハンドルに頭を押しつけたまま、探偵の話を反芻した。


 探偵の話だけで判断するつもりは毛頭ない。

 これは()()()()()()()だ。

 判断を誤れば、()()()()()()()()ことになる。

 しかし、刃那子は実際に会って、感じたのだ。

 馬殿美冬の恐れを……動揺を……そして、罪悪感を。


 それらの情報から、導き出された結論は……”黒”である。

 つまり、馬殿美冬(ばでんみふゆ)樹神幸子(こだまさちこ)を、いじめたのだ。

 それは、刃那子の中で確定事項となった。

 理由など、どうでもよかった。

 “サッちゃんをいじめた”

 その事実がわかれば、それでいい。

 今、この瞬間、ある感情が刃那子の身体を支配しようと、もがいている。

 刃那子は、それを力ずくで押さえつけた。

 

(すーっ、はーっ)

 

 顔を上げて、深呼吸をした。

 ()()ダメだ。()()まだ流されてはダメだ。


(今やるべきことは……)


 刃那子は、車を降りた。



 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 


 ビー!


『…………』

 

 呼び鈴の、応答はない……が、気配はある。


「美冬ちゃん……わたしよ」

 

 刃那子は、小さな声で、インターホンへ話しかけた。

 

『……話すことなんてないわ。帰って』


 聞こえたのは、思った通りの言葉だった。


「もういいの! ()()()()のことは聞かないわ! ごめんなさい……せっかく会えたのに、変なこと聞いちゃって……ねぇ、仲直りしない? あたし本当は、ご主人のことを話しに来たのよ?」


 刃那子の声は落ち着いていた。

 それでいて、絶妙な申し訳なさも含めた。


『うちの……人の?』


 美冬の声に、冷静さが戻って来た。


「そうよ。ご主人は、山本建設にお勤めでしょう? わたしの会社と、なんどか取り引きして、社長と知り合いなのよ。もしよかったら、いろいろと便宜を図れると思って……。ごめんなさい……。もしかしたら、差し出がましい気がして、言い出せなかったの……。()()()()の話なんて、本当はどうでもいいの。ただの、会話のきっかけだったのよ……」


 刃那子は、ゆっくりと、あくまで丁寧に()()()()()


『そう……なの?』


「えぇ、もしよかったら、仲直りしてくれないかしら? ()()()の話は、もうしないわ。約束する」


 刃那子は、カメラに向け、ニコリと微笑んだ。

 まるで、公園で無邪気に遊ぶ子供達を見つめる、品のよい老婦人のように。


『……わかったわ』


 屋内から足音が近づく。

 刃那子は笑顔のまま、はやる気持ちを抑えて……待った。

 今、()()は油断している。

 刃那子の中で爛々と目を光らせている、餓えた猛獣の存在を、ここで悟られてはならない。。


 ガチャ。


 鍵を開ける音で……刃那子の笑みが、完全に消えた。


 あぁ……もういい。

 もう、我慢しなくていいんだ。

 さぁ、獣を解き放とう。

 さぁ、醜い豚を喰いちぎろう。

 さぁ、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く、早く……。


 そして、ドアが……開いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑


少しでも気になった方は、一度作品の評価をお願いします(☆☆☆☆☆をタップするだけ)
『★★★★★』だと作者が飛んで喜びます
気に入らなくなったら、遠慮なく評価を取り消して下さい(※同じ場所をタップすれば簡単に取り消せます)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ