8.俺がモテない理由
俺がモテる為に柳田に吹き込まれ、やったアレコレは結局全部無駄だった。
「そりゃ恋愛なんてナマ物水物だし、そんなもんでしょう」
柳田はあっけらかんと言ってみせる。
「お前がモテる方法はお前がモテる為の方法であって俺がモテる方法ではない」
俺のしみじみとした格言に柳田は笑いながら頷いた。
「でも結構健介の為になることはやった気がするな」
まぁ、そこは否定しない。
柳田は俺のことを好きな子はたくさん連れてこなかったが俺が好きになる子をひとりだけ連れて来た。
それよりなんか今、名前呼びになってなかったか。別にいいけど。
こいつとも短い期間でだいぶ仲良くなったものだ。
モテたいとか、超格好悪いけど、モテようとしなければ絶対関わらなかったタイプだから、それもまた悪いことばかりでは無いかもしれない。
「今度は俺が手伝ってあげるからさ!」
「は?」
「柳田、小暮さんと別れてたんだろ。なんかもっとさ、まじめに付き合おうよ!」
そう言ったのは、彼女の途切れない柳田がさほど楽しそうに見えなくなってしまったからだ。
しかし、柳田はつれない。
「いいよ。お前に出来る事ないし」
「そんなこと言うなよう」
「じゃあ小野田ちゃん譲って」
「なっ」
時々、こいつの方が俺より女の子を人間として見ていない気がする。ベルトコンベアーで廻る寿司かなんかだと思っている気がする。
「それは俺の意思じゃないし……!」
口籠る俺に柳田はニヤニヤしながら言う。
「いいよ。別れてからもらうから」
「まだ付き合ってもねーよ!」
「それは先が長そうだな……」
「だいたい、柳田お前その頃たぶん彼女いるよ……十人以上変わってるよ……」
「どうかな。俺しばらくそういうの無しでいこうと思ってるし」
柳田が、柳田らしからぬことを言っている。熱でもあるんだろうか。
「なんか疲れるし」
それはわかる。気を使うし。女の子は可愛いが、男同士だって気楽な楽しさはある。なんだって、楽しければいい。好きにすれば良い。
「柳田、今度映画行こうよ。オレ観たいのあんの」
「は? 小野田と行けば?」
「小野田をゾンビ映画に誘えるかよ!」
そう言うとなるほどと笑って頷いた。
「ま、いいけど。俺男と映画行くのなんて初めてかも」
そんなことを漏らす柳田はやはり傍目には平凡にしか見えないフツメンだ。
俺がモテない理由は幾つか判明した。
たぶん細かく数えたら10じゃ足りないくらいだろう。しかも、結局ほとんど改善はされなかった。
変わったのは髪型と、制服の着方ほんのちょっと。それだって根がお洒落じゃない俺のことだから、もしかしたら遠くないうちに元に戻ってしまうかもしれない。
だから俺がモテるようになる日は永遠に来ないのかもしれない。
でも、憎からず思ってくれる子がひとりいれば、それでいいし、友達だっている。毎日楽しい。
だからまぁ、いいんじゃないかな。
【周防編】おしまい