誰でも(作:奈月ねこ)
私はアラサーの会社員。友達がどんどん結婚していって、独身の友達も少くなった。
だからどうした!悔しくなんかないさ!
なんて自分に言い聞かせてみる。
む、虚しい……。
結婚か。十代の頃は、白馬の王子様を夢見ていた。二十代になって合コンなどで出逢いはあったが、やっぱり白馬の王子様を夢見てしまっていた。そして三十代。奇跡が起きないかと思う毎日。私って変なのかな。
今日も満員電車に揺られながら、会社へ向かっていた。
キキーッ
電車が急停止した。私は隣の人の下敷きになってしまった。
痛いよ!早く退いて!
すると、私の前にいた男性が、私に手を差し出した。
「大丈夫ですか?捕まってください」
「あ、ありがとうございます」
私はなんとか立ち上がることが出来た。そして改めて私を助けてくれた人を見た。
イ、イケメン!
「あの、ありがとうございました!」
「お互い様だからね」
こ、これが白馬の王子様!?
私がぽわんとしていると、電車が動きだし、次の駅に到着した。すると、その男性は降りていった。
ああ~。やっぱり縁はないのね……。
私は疲れはてたが、会社へ向かった。
会社には二十代の男性がいて、実は話すことも多い。これが恋に発展すればと思わなくもない。でも、白馬の王子様を待つ私。そんな時だった。
「平川さんって本当に可愛いから、俺……」
え?
「あ、えっと……じゃあ、また!」
彼は逃げるように私の前から去っていった。
今何て行ったの? 可愛い?
可愛い? 可愛い? 可愛い?(エコー)
いくつになってもたった一言で魔法にかかってしまう。それが私。それとも女性は皆同じ?
私は朝のイケメンのことを忘れていた。